日米協調介入後、ドル円相場は155円近辺まで円高が進行したものの、再び円安に戻しました。日本の財政懸念や中東情勢による原油高などがドル高・円安を後押しする構図です。
日米協調介入でも円安止まらず。円安・ドル高を後押しする背景
日米協調介入があっても、米国7月雇用統計の非農業部門雇用者数が弱くても、米国7月消費者物価指数(CPI)や7月生産者物価指数(PPI)などの物価指標が予想より弱くても、ドル円は円安に動いています。介入直前の164円近辺から、介入後の8月3日には155.20円近辺まで円高に行きました。その値幅は約8.80円となり、半値は159.60円近辺になります。ちょうど今の水準辺りです。
相場格言にあるように「半値戻しは全値戻し」になるのかどうか注目ですが、全値戻しへの道のりは一筋縄ではいかないかもしれません。
8月3日、片山さつき財務相は日米協調介入を実施したことを表明した時に、「今後、さらなる協調介入を実施することも躊躇(ちゅうちょ)しない」と明言しました。
市場の警戒心は高まりましたが、155円台から円安に戻してくる局面で追撃の介入のそぶりをみせなかったことから、市場の警戒心はいったん緩んだかもしれません。しかし、当局の姿勢は変わらないことが予想されます。
さらに、日米長期金利が上昇していることもあり、160円近辺からは介入警戒感が再び強まることが予想されます。
円安に戻していった背景には、8月3日以降、介入がみられなかったということに加えて、やはり、日本の積極財政による財政悪化懸念が根強い要因となっているようです。
「骨太の方針」で「財政健全化」という文言が削除され、消費税減税の財源が明確でないまま決定されたことから、高市政権の財政規律への懸念から日本の新発10年物利回りは一時2.945%と30年ぶりの水準まで上昇し(債券が売られ)、円売りとなっています。
もう一つドルサイドの要因としてイラン情勢があります。米国とイランによる和平協議が難航する中、米イラン停戦期限が切れ、トランプ米大統領は17日、イランとの覚書延長の意向はないと表明しました。中東情勢混迷による原油価格の上昇によってインフレ進行への警戒心が強まってきています。
米国7月CPIや7月PPIなどの物価指標を受けて9月利上げ期待がやや後退しても、年内利上げ観測は変わらないようです。
この利上げ観測に加え、イラン情勢の長期化に伴う原油高によってインフレが加速するとの警戒感や、イラン紛争長期化で軍事費が膨らむことによる米財政悪化懸念、米大手IT企業の社債発行増による国債需給悪化への警戒から米長期金利が上昇し、ドル高を後押ししています。米国30年債は一時5.3%台と19年ぶりの水準を付けました。
日米とも長期金利が上昇し、高い水準となってきていることから、ベッセント米財務長官が何らかの行動を起こすかもしれません。4月の介入や7月の協調介入の背景には、米国の長期金利上昇を抑えたいという狙いがあったのではないかと推測されるため、160円に迫る水準や日米長期金利の高水準の環境では、円買い介入の動きに対して身構えておいた方がよさそうです。
また、ベッセント財務長官は、高市政権の「積極財政+金融緩和」はセットでは認めておらず、協調介入は「日銀利上げ」をセットとして要請しているようです。ただ、市場は日本銀行の9月利上げは織り込みつつあるため、焦点は利上げペースへの注目度の方が高そうです。
日米の長期金利の動向に注目。利上げ慎重姿勢やトリプル安など円安は危うい局面に?
一つ留意したいのは、17日に発表された日本の4-6月期国内総生産(GDP)が日銀の政策判断に与える影響です。
4-6月期GDPの実質年率は+1.1%と予想(2.0%)を下回りました。内需がマイナスとなり、外需のプラスによって3四半期連続のプラス成長となりましたが、個人消費(前期比マイナス0.02%)は物価高の影響で8四半期ぶりのマイナスとなりました。
外需のプラスも中東情勢の影響で原油輸入量が減少したことによって成長にプラス寄与となりました。輸入の減少(マイナス1.5%)はGDPの押し上げ要因になるからです。3四半期連続のプラス成長になったとはいえ、力強い成長ではありません。さらに7-9月期GDP予測はゼロ%成長との見方があります。
この結果を受けて、日銀が9月利上げに慎重になるシナリオにも留意しておいた方がよさそうです。もし、9月利上げを見送った場合、年内利上げ姿勢を強調すればよいのですが、利上げ慎重姿勢の印象が勝れば円安に弾みがつくかもしれません。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は15~16日、日銀会合は17~18日に開催されます。
初参加となるウォーシュFRB議長の講演で、ウォーシュ議長がタカ派姿勢を維持するのか、利上げに慎重姿勢を示すかどうか注目したいのですが、ウォーシュ議長は先行きの金融政策を示さないことを主張しているため、この講演では期待はできないかもしれません。
それでも市場は注目しますが、全く先行きを示唆する内容がなかった場合には、失望感と同議長への信頼感が揺らぎ、ややドル安になる可能性があります。
8月18日の米長期金利は、米7月住宅着工件数(年換算123.9万件、前月比マイナス12.4%)が予想を下回ったため低下しましたが、当面は日米の長期金利の動向に注目です。日本の長期金利が財政悪化懸念から上昇し、円安に動くのであれば、米長期金利上昇もドル高を後押しする局面から、トリプル安が意識されドル安に動くことも想定されます。
日本もトリプル安に動き、円安に弾みがつくのか、米国のトリプル安でドル安が勝り、円高に動くのか。日米長期金利上昇による円安は危うい局面に来ているのかもしれません。
(ハッサク)

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