「終活専門」の司法書士、福村雄一さんによる、終活事件簿と解決方法をひも解きます。今回は、双方話し合いが必要と分かっていても、なかなか切り出しづらい「終活話」の切り出し方について…。

親子、どちらからの誘い水が有効?


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お盆で帰省中、老親に遺産の話を切り出したら怒り出してしまい…

「もう帰れ!」お盆に終活話を切り出したら父と絶縁寸前。親に切り出すタイミングはいつが正解?
今回のお悩み:縁起でもない「終活話」どう切り出せばいい?

 お盆に帰省し、兄弟と両親がそろったところで、「今、うちの財産ってどうなってるの?」と切り出したところ、老いて頑固になった父親が「遺産が目当てで帰省したのか、縁起でもないことを言うな! もう帰れ!」と怒り出してしまいました。


 なんとかなだめてその場は収まったのですが、母親も弟もうちの資産がどこにいくらあるのか、全く知らないことが判明し、3人で頭を抱えてしまい…。怒らせず、うまく対話できた方の話を聞きたいです!


「もう帰れ!」お盆に終活話を切り出したら父と絶縁寸前。親に切り出すタイミングはいつが正解?
「終活専門」司法書士のココが重要ポイント!

親から?子から?どちらから話すのがスムーズ?

 自分自身で考えたことはあるけれど、家族や大切な人と一緒に話し合ったことがある人は少ないのが終活の話です。縁起でもない、として避けられがちな終活の話ですが、いざ「こと」が起こってから動いても手遅れとなるのも事実です。今回は、親が元気なうちからアクションを起こすコツをご紹介します。


 終活のことを切り出すのは、子どもからであることが多いと思います。子どもの立場の皆さんにまず知っていただく必要があるのは、「終活には時間がかかる」ということです。なぜなら、終活は、相続、医療・介護、住まい、税金、認知症、葬儀など、非常に多くのテーマがあるからです。


 終活は、1日で決められるものではなく、場合によっては数年かけて決まっていくものだということを意識してください。焦って一気に親子の心の距離を詰めようとするのは悪手です。


 失敗するケースの多くは、気が焦る子どもが、親の考えを引き出そうとして親の機嫌を損ねてしまうケースです。「もうそろそろ免許返納したら?」「今後の生活のことどう考えているの?」などなど…。親の生活を心配してこその問いかけですが、親の意向を一気に引き出そうとしてしまっているので、親が心の扉に鍵をかけてしまうことが多いです。


 そうならないコツは、年単位の時間をかけて終活を進めていくということです。

1回で終わらせようとすると失敗します。助走期間を設け、お盆→年末年始→ゴールデンウイーク→お盆といったタイムスケジュールで進めていきましょう。


 例えば、あるご家庭では、最初のお盆は「最近、終活っていう言葉をよく聞くけど、うちはどうなんだろうね」と世間話程度にとどめ、年末年始には「もしよかったら、エンディングノートを一緒に書いてみない?」と少し踏み込み、翌年のゴールデンウイークになってようやく通帳や保険証券の保管場所を一緒に確認できた、というケースもあります。


 親子の心の調整期間を設けることがコツです。


親子別!今からできること!

[親目線]:実は子どもは「親に頼られたい」。相談する形で話し合おう!

 親の失敗の多くは、「子どもに迷惑をかけたくない」とおっしゃるケースです。親の多くは子どものことをいつまでも気にかけています。子どもの生活や体調を気遣って「迷惑をかけないように、負担が小さいように」と言葉にしますが、行動が伴わないのも事実です。


 迷惑をかけないようにと言っているうちに時間が経過し、認知症になったり、病気で急に亡くなってしまったりして「どこに何があるか分からない」といった困りごとに直面する家族が本当に多いです。


 親の立場の皆さんに知っていただきたいのは、実は「子どもは親に頼られることが嬉しい」ということです。


 終活は自分1人で決めることが難しい側面があります。介護や住まい、相続などは特に家族全体に関わるテーマなので、家族の生活に影響があるからです。親の立場からすると、自分1人だけのことではなくなるので、実は聞きづらくなるということがあります。


 ここでのコツは、子どもを頼るということです。例えば、「手続が難しいから手伝ってほしい」「〇〇を一緒にやってほしい」と切り出すのがよいやり方です。そして、「一緒に」というのがポイントです。


 子どもに丸投げするのではなく、先に手を差し出して、手を握ってほしいと示すことが大切です。全て丸投げだと子どもの負担感は大きいのですが、親子一緒だと負担感は軽くなります。


「保険会社から書類が届いたから一緒に見てほしい」「証券会社の手続が分かりにくいから一緒にやってほしい」


 実際に、あるお父さまは「証券会社から届いた書類の意味がよく分からないから、一緒に見てほしい」と娘さんに声をかけたことがきっかけとなり、そこから財産全体の話し合いへと自然に発展したケースもあります。


 こういった形で子どもを頼ることから始めましょう。


[子ども目線]:時間をかけて親の気持ちに寄り添うのが〇

 いつかは聞かないといけないと思っていても、なかなか親に切り出すことは難しいのが事実だと思います。子どもの立場のコツは


[1]少し遠いテーマを話題にする
[2]一歩、遠回りをする
[3]親の心の状況や経験を聞く


ということです。


[1]少し遠いテーマを話題にする

 いきなり自分の家の話を切り出すのではなく、芸能人や友人・知人の家のことを話題にしてみましょう。少し遠いテーマのほうが話題にしやすいというのは、皆さんも実感しておられると思います。例えば、芸能人の相続トラブルや空き家問題のニュースを見た際に、「このニュース見た?うちは大丈夫かな」と話しかけてみるのも一つの方法です。


[2]一歩、遠回りをする

 聞きたい事柄を直接聞くのではなく、関連する事柄から近づけていくということです。

例えば、相続に関する親の考えを聞きたいときに、「相続の税金の話」をしてみるとか、免許証の返納に関して親の考えを聞きたいときに、「車検の話」をしてみるといったことです。


 税金の負担が軽くなるのは親子共通の関心事です。「うちって相続の時にどれくらい税金がかかるんだろ?一緒に確認しない?」といって切り出してみるのはどうでしょうか。


 くれぐれも「税金を払うのは子どもの私なんだから、ちゃんと考えておいてくれないと困る」といった言い方をしないように注意しましょう。何も準備がないと子どもが困るのは事実ですが、「困るからやっておいてほしい」という伝え方は、親にとってはかなり圧力の強い聞かれ方になります。一呼吸置いて、聞き方に注意を払いましょう。


「そろそろ車検だっけ?どこに頼むの?」といった切り出し方でスタートし、車検にかかる費用の話をして話題を展開していくといった方法もあります。


[3]親の心の状況や経験を聞く

 親の考えをいきなり引き出そうとするのは悪手です。考えた経験や進捗(しんちょく)状況を確認するのが鉄則です。「どう考えているのか教えてよ」と聞かれるより、「〇〇について今考えていることはあるの?」と聞かれるほうが親は答えやすいです。


 結果を求められるのはハードルが高いですが、自身の経験の有無や進捗状況であればハードルが低くなります。子どもの立場からしても親の現状を確認できるメリットがあります。

親とのコミュニケーションが一番取りやすい兄弟姉妹から問いかけをするというのも有効な作戦です。


 聞きやすい関係性ができているのは誰かを見極めて、親が「はい/いいえ」で回答できるよう、「〇〇はある?」と問いかけることを意識しましょう。


まとめ

 親子双方が大事だと思っているのが終活です。お互い大事だと思っているからこそ、最短距離で進めようとしないこと、そして、1度で決めようとしないことがポイントです。お互いの気持ちの調整期間が必要になりますから、1年計画、2年計画くらいで徐々に進めていきましょう。


 例えば、1年目のお盆はエンディングノートを渡すだけにとどめ、お正月には相続税の試算を一緒にしてみる、そして翌年のお盆で本格的に話し合いを始める、というように、季節ごとに少しずつ段階を踏んで進めるとよいでしょう。


 親子それぞれの理解力、受容力、忍耐力を調整していくことが大切です。時間はかかりますが、その分、親子の関係性をつなぎ直す時間になります。終活を進めることは、大切な人と共に時間を過ごすことになります。お盆やお正月、地域のお祭りなど、季節の節目となる生活のイベントに会話と対話の機会を設けていきましょう。


「終活専門」司法書士・福村雄一さんプロフィール

「もう帰れ!」お盆に終活話を切り出したら父と絶縁寸前。親に切り出すタイミングはいつが正解?
2006年神戸大法学部卒、2011年司法書士登録、2023年司法書士法人福村事務所を設立。一般社団法人民事信託監督人協会理事、一般社団法人おひとりさまリーガルサポート理事。司法書士として、遺言作成支援、死後事務委任契約、任意後見契約、家族信託などに取り組むだけでなく、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)にも詳しく、医師会や自治体などとも連携。「東大阪プロジェクト」と銘打った地域活動の代表者も務める「終活のプロ」。著書に『 相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全 』『 終活の落とし穴 』(共著)『 終活クエスト もしもの不安を解消「人生後半戦」攻略ガイド 』などがある。 「終活専門」司法書士法人 福村事務所

(福村 雄一)

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