2026年の私立・国立中学校の首都圏での受験者総数は5万2,050名と、過去40年で4番目に多い受験者数でした(首都圏模試センター推定)。わが子のために中学受験を検討したい…そう考えたとき、避けて通れないのが「費用」の問題です。

2人の子どもを私立中学に通わせた石川亜希子CFPが、実体験を交えて解説します。


中学受験なんて必要か?…川崎市在住・年収800万円の40代サ...の画像はこちら >>

中学受験、うちもやるべき…?

 今春2026年、首都圏(1都3県)の私立・国立中学受験者数は5万2,050名にのぼります(※1)。今春卒業見込みの首都圏の小学校6年生は約28万8,000人ですので(※2)、受験率は約18%となる計算です。
(※ 1 、 2 )ONETES(旧首都圏模試センター)


 平均は18%ですが、地域によっては、小学校のクラスの7割以上が中学受験生というところもあります。周りがそのような状況だと、「うちも考えたほうがいいのでは」と焦りのような思いを感じることもあるかもしれません。


 転勤の都合で神奈川県川崎市に越してきたとある家族も、例外ではありませんでした。


 40代夫婦の世帯年収は約900万円(夫800万円、妻100万円)、小学校4年生と1年生、2人の子どもがいます。毎月の手取りは、夫婦合わせて約49万円、ボーナスの手取りは約90万円です(以下、A家)。


A家の家計内訳 月々の金額 食費 10万円 日用品、通信、保険 10万円 住宅ローン 8万円 教育費 3万円 夫婦のお小遣い、その他 8万円 投資、貯金 10万円

 妻が神奈川県出身ということでこの地にマイホームを購入したA家。いざ生活が始まると、想定外のことがありました。それは、住んでいるエリアに教育熱心な人が多いということです。


 親同士が集まると、「塾はココがいい」「今ならまだ間に合う」「やっぱり環境が大事」などと、中学受験にまつわる話題ばかり。


 A家は、夫婦ともに高校まで公立で、中学受験についてはまったく考えていませんでした。

しかし、妻は周りの話を聞く中で、だんだん中学受験したほうがいいのではないかと焦り始めます。


 一方、夫は「急になんでそんなこと言うんだよ」「中学から私立なんて必要か?」と、あまり気乗りしない様子です。


 そこで夫婦は、ひとまず中学受験の費用がどれくらいかかるのか調べてみることにしました。


中学受験にかかる費用

 一般的に、中学受験のため4年生からの3年間塾に通う場合、300万~350万円ほどかかるといわれています。


大手中学受験塾四谷大塚のサイトを見ると、費用は下記のとおりです。


4年生 4万1,800円/月 5年生 5万2,250円/月 6年生前半 6万7,650円/月 6年生後半 9万750円/月 教材費 4万~8万円/年 模試受験料 約5万円(3年間で) 出典: 四谷大塚 受講料

上記表を見ると、4年時に50万1,600円、5年時に62万7,000円、6年時に95万400円(前半40万5,900円+後半54万4,500円)となります。ここまでで、すでに200万円超えです。


 さらに、「春期・夏期・冬期の講習受講料別途」となっているため、総額300~350万円は妥当な数字でしょう。


 実は筆者も、2人の子どもを中学受験させています。子どもたちの小学6年時の夏期講習代は、約30万円でした。


 つまり、3年間の費用をならすと、毎月約8万~10万円が必要ということになります。加えて、苦手科目の対策のため、集団塾とは別に個別指導塾に通う、家庭教師を依頼するといったケースも珍しくありません。こうなると、さらに費用がかかります。


見事合格!しかし…私立中学の現実

 そして、教育費という意味では、晴れて志望の中学に合格したとしても、むしろそこからがスタートです。


 文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査(※)」によると、私立中学校に進学した場合の学習費総額は、年間で156万359円となっています。
(※) 令和5年度 子供の学習費調査(文部科学省)


〔学校種別の学習費総額〕     学校教育費 学校給食費 学校外活動費 学習費総額 中学校 公立 15万761 3万5,671 35万6,018 54万2,450 私立 112万8,061 9,317 42万2,981 156万359 高等学校
(全日制) 公立 35万1,523 - 24万5,431 59万6,954 私立 83万2,650 - 34万6,611 117万9,261

 学校教育費は、学校内でかかる費用です。入学金や授業料、施設費、制服やバッグなど指定品、修学旅行費などを指します。


 学校外活動費は、学習塾や習い事など、学校教育費以外の活動に支出する費用です。


 2026年からは高校の授業料無償化制度が始まっているため、私立高校の学習費総額についてはもっと抑えられるでしょう。


 とはいえ、筆者の場合は子どもの修学旅行先が海外であったため、それだけで70万円以上かかりました。また部活で遠征が続くと、交通費や食費は実費で、夏休みだけで2~3万円かかります。そのほか、お友だちの別荘にお呼ばれしたり、旅行に誘われたり……交際費も5~6万円と、大人顔負けです。


 これはあくまで筆者の体験ではありますが、実際にはもっとかかる場合もあるでしょう。


年収いくらであれば「無理なく」中学受験できる?

総務省「家計調査」(※)によると、未成年の子どもが2人いる4人家族(世帯主40~44歳)の1カ月の平均支出は、約48万3,000円です(消費支出が約33万7,000円、非消費支出が約14万6,000円)。
※ 2025年家計調査/家計収支編(総務省)


 ここに、住宅ローン7万円、中学受験の塾代として10万円、さらに将来を見据えた貯蓄や投資10万円を加えると、月の支出は約75万3,000円となり、年間にすると約900万円に達します。


 よって、子ども2人とも中学受験をする可能性まで考えると、世帯年収1,000万円前後がひとつの目安となるでしょう。


 実際、文部科学省「子供の学習費調査」(※)によると、子どもを私立中学に通わせている家庭の世帯年収は、1,000万円以上が約60%、600万~1,000万円未満が約27%となっています。


※ 令和5年度 子供の学習費調査(文部科学省)


 ただ、必ずしも世帯年収だけで中学受験するかどうかが決められるわけではありません。たとえ世帯年収が1,000万円以上であっても、その分生活水準が高い、つまり固定費が多いと、教育費の負担は重くなるでしょう。


 A家の世帯年収は約900万円、今のままでは、子どもを2人とも中学受験させるとなると、少し厳しい状況です。それでも、生活費の見直し、妻が就業を増やす、祖父母からの援助など、工夫次第では、子ども2人を中学受験させることも可能でしょう。


中学受験には「お金以外の負担」も

 ただし、見落としてはいけないのは、中学受験にはお金以外の負担も大きいという点です。


 通塾の送迎や勉強管理、家族全体の生活リズムの変化など、家計の数字からは見えてこない負担も確実に増えていきます。


 A家も、妻が就業を増やすことで、2人とも中学受験させることが可能だということは夫婦で確認できました。


 しかし夫は、「確かに、中学受験は将来の選択肢を広げるかもしれない。でも、そのために親と接する時間が減ったり、家族でのレジャーや旅行にお金や時間をかけられなくなったりするのはどうなんだ? 子どもはそれで幸せなのか?」と、まだ納得がいかない様子。結局、夫婦でもう少し考えてみることにしたそうです。


 何を優先するかは家庭ごと、もっというと価値観によって違います。夫婦で話し合い、子どもの進路や老後の生活についても、可視化して共有することが大切です。


(石川 亜希子)

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