9月1日は「防災の日」。足元では地震への警戒に加え、千葉県をはじめ各地で大雨による被害も相次ぐ。

防災は災害発生後の対応だけでなく、国土強靱化(きょうじんか)や老朽インフラの更新、企業のBCP、防災DXへと広がっている。今回は「災害に強い社会」を支える企業から、注目したい5銘柄を取り上げる。


経済規模20兆円!加速する防災DX~9/1「防災の日」に考え...の画像はこちら >>

災害が相次ぐ日本、「防災の日」に改めて考える

 毎年9月1日は「防災の日」です。1923年9月1日に発生した関東大震災の教訓などを踏まえて制定され、8月30日から9月5日までは「防災週間」とされています。


 今年の「防災の日」は、いつも以上に防災を身近な問題として考える機会になりそうです。足元では千葉県を含め、各地で大雨による被害が相次ぎました。日本では地震への警戒が続く一方、集中豪雨や河川の氾濫、土砂災害などへの備えも欠かせなくなっています。


 しかも、災害の影響は住宅の被害だけにとどまりません。道路や鉄道が使えなくなれば、人や物の移動が止まります。停電や通信障害が起きれば企業活動にも影響しますし、工場や物流拠点が被災すれば、サプライチェーンを通じて離れた地域の企業まで影響を受けることがあります。


 つまり、防災は「災害が起きてから対応するもの」ではありません。建物や道路を強くする、崩れやすい斜面を補強する、火災を早く見つける、災害時にも現場同士で連絡できるようにする。そして被災後には、救助や復旧を急ぐ必要があります。

こうして考えると、災害が起きる前から復旧まで、実に多くの企業が防災に関わっていることが分かります。


老朽化進む道路や橋…防災は「20兆円強」の長期テーマへ

 株式市場では、大きな地震や豪雨が発生すると「防災関連株」が注目されることがあります。ただ、防災関連株を「災害が起きたときだけ買われる銘柄」と考えるのは、少し違うように思います。


 注目したいのが、政府の「国土強靱化(きょうじんか)」です。政府は2025年6月、「第1次国土強靱化実施中期計画」を閣議決定しました。対象期間は2026年度から2030年度までの5年間で、「推進が特に必要となる施策」について、おおむね20兆円強を事業規模のめどとしています。


 計画の対象は、地震や津波、風水害への備えだけではありません。道路や上下水道をはじめとするインフラの老朽化対策なども含まれています。


 ここで見逃せないのが「老朽化」です。日本では高度経済成長期に造られた道路や橋、トンネル、上下水道などが次々と更新時期を迎えています。老朽化したインフラを直すことは単なる修繕ではなく、地震や豪雨が発生した際に道路や橋などが使えなくなるリスクを減らし、災害に強い社会をつくることにもつながります。


 つまり、「防災」「国土強靱化」「インフラ更新」は、それぞれ別の投資テーマに見えて、実際にはかなり重なっています。しかも道路や橋が老朽化しても、景気が悪いからといって補修をいつまでも先送りするわけにはいきません。

防災設備についても同じです。


 防災を一時的な材料ではなく、中長期の投資テーマとして見ておきたい理由はここにあります。


加速する「防災DX」。情報が重要なインフラ

 もう一つ、以前とは大きく変わってきたのが、防災のデジタル化です。従来の防災というと、堤防を造る、建物を耐震化する、消防設備を設置するといった「ハード」のイメージが強かったと思います。もちろん、それらは今後も必要です。


 一方、大規模災害が発生したときには、「情報」も重要なインフラになります。どこで被害が起きているのか、誰がどこにいるのか、どの道路が使えるのか、どこに救助が必要なのか。こうした情報をできるだけ早く集め、現場で共有しなければなりません。


 そこで使われ始めているのが、スマートフォンやIP無線、クラウド、ドローン、人工知能(AI)、センサーなどのデジタル技術です。防災関連株といえば、以前は建設・土木や消防設備などが中心でしたが、これからは通信やソフトウエアなども含めて考える必要があります。


 企業側の事情もあります。

企業にとって災害対策は、従業員の安全を守るだけでなく、事業を止めないための経営課題です。工場が止まれば製品を作れず、物流拠点が被災すれば商品を届けられません。通信手段が使えなくなれば、現場で何が起きているのかを把握することさえ難しくなります。


 そのため企業の事業継続計画(BCP)でも、「何を備蓄するか」だけでなく、「災害が起きたときにどう動くか」が重要になっています。防災DXは、こうした企業の課題を解決する手段としても広がる余地がありそうです。


防災株の投資戦略:「災害が起きたら上がる株」ではなく事業を見る

 防災関連株に投資するときには、一つ注意したいことがあります。大きな地震や豪雨が発生すると、「防災関連」とされる銘柄が短期間で買われることがあります。しかし、株価が動くことと、その企業の利益が増えることは同じではありません。


 例えば、防災関連の売上高が会社全体のごく一部であれば、テーマだけで株価が上昇しても、実際の業績への影響は限られます。大切なのは、「防災関連」という言葉だけで企業を選ばず、その会社が防災のどの部分を担い、それが継続的な収益につながるのかを見ることです。


 災害が起きる前には、斜面対策や地盤改良などによって被害を小さくします。災害が起きれば、火災などの異常を知らせ、現場の人たちが連絡を取り合う仕組みが必要です。その後は消火や救助、道路などの復旧が始まります。


五つの役割で注目する防災関連株5選

 今回は、こうした流れから、「崩落を防ぐ」「救助・消火する」「つなぐ」「知らせる・避難する」「備える・復旧する」という五つの役割に注目しました。同じ防災関連株でも、それぞれの会社が担う役割はかなり違います。


銘柄名 証券コード 株価(円)
(8月25日終値) 特色 ライト工業 1926 3,770 「崩落を防ぐ」斜面防災のスペシャリスト 帝国繊維 3302 3,365 「救助・消火する」災害現場を支える企業 サイエンスアーツ 4412 1,234 「つなぐ」防災DX関連株 能美防災 6744 4,310 「知らせる・避難する」防災大手 コンドーテック 7438 1,664 「備える・復旧する」全国の供給網が強み

ライト工業(1926)

 斜面・のり面対策や地盤改良などの特殊土木に強みを持つ会社です。防災という観点で注目したいのが、斜面崩壊や落石などを防ぐ技術です。


 集中豪雨が発生した際、警戒しなければならないのが土砂災害です。短時間に大量の雨が降れば、これまで問題がなかった場所でも斜面が崩れる可能性があります。同社の強みは、災害が発生した後の復旧だけでなく、「崩れる前に対策する」技術を持っていることです。


 また、地震対策では地盤改良も重要になります。軟弱な地盤を強くしたり、液状化対策を行ったりすることは、建物や社会インフラへの被害を減らすことにつながります。豪雨と地震という日本を代表する二つの災害リスクに関われることから、国土強靱化を考える上でも分かりやすい銘柄です。


帝国繊維(3302)

 消防ホースをはじめ、防災資機材や防災車両などを幅広く販売しています。防災関連企業の中でも、災害が実際に起きた現場を支える会社という位置付けが分かりやすいでしょう。


 同社が扱う製品は消防ホースだけではありません。小型の排水ポンプ車では毎分4,000リットルを排水できる機種を扱うほか、救助工作車なども展開しています。豪雨や火災、地震など、さまざまな災害現場で必要になる設備です。


 どれだけ事前に備えても、自然災害そのものを完全に防ぐことはできません。だからこそ、発生した災害の被害を広げず、救助や復旧をどれだけ早く進められるかも重要になります。国土強靱化というと道路や橋などを造る企業に目が向きがちですが、実際の災害現場で人命を守る企業も欠かせない存在です。


サイエンスアーツ(4412)

 同社が提供する「Buddycom(バディコム)」は、スマートフォンなどを使ったライブコミュニケーションプラットフォームです。音声通話だけでなく、音声のテキスト化や翻訳、映像、位置情報の共有などの機能を備えています。


 防災との関係で注目したいのが、「現場をつなぐ」という役割です。大規模災害では、混乱する現場の状況を素早く把握し、必要な場所へ指示を出さなければなりません。鉄道や空港、物流、工場など、多くの人が同時に動く現場ほど情報共有が重要になります。


 Buddycomは北海道の原子力防災訓練で活用されたほか、能登半島地震では総務省の要請と協力に基づき、災害対策関係機関に無償提供されました。公式発表では自治体、消防、自衛隊などに680IDを無償提供しています。


 従来の防災関連株とは少し毛色が違いますが、防災が「ハード中心」から「ハード+情報」へ広がる中、防災DXという切り口で見ておきたい企業です。


能美防災(6744)

 同社は、自動火災報知設備や消火設備などを手掛ける防災大手です。火災をいち早く検知し、建物にいる人へ知らせ、消火につなげる。今回取り上げる5社の中でも、本業と「防災」が最も分かりやすく結び付いている企業の一つです。


 足元で注目したいのは、従来型の防災設備だけでなく、デジタル技術を使ったサービスにも事業を広げていることです。2026年5月には、東京都渋谷区で避難所の開設・運営を支援するWebアプリ「N-HOPS」の運用が始まりました。渋谷区への導入は全国初となります。


 消防設備の会社が、災害発生後の避難所運営まで支援するようになっているのは興味深い変化です。防災設備という既存事業にデジタルを組み合わせることで、新しい需要を取り込もうとしていることが分かります。


 今後は従来型の防災設備という安定した事業を持ちながら、デジタル分野をどこまで育てられるかがポイントになりそうです。


コンドーテック(7438)

 同社は建設・土木向け資材を幅広く扱う会社です。防災という観点では、大型土のうやブルーシートなど、災害発生時に必要になる復旧資材に注目です。


 商品そのものに加えて「供給網」を持っていることが同社の面白い特徴です。グループで国内に約100の拠点を展開。自然災害関連の商材についても各拠点がストックヤードとして機能し、緊急時にもいち早く商品を届けられる体制を整えています。


 災害時には「商品を作れるか」だけでなく、「必要な場所へすぐ届けられるか」が重要です。大型土のうやブルーシートなどは、豪雨や地震が発生すれば短期間に大量の需要が発生する可能性があります。全国に供給拠点を持つことは、こうした場面で強みになります。


 同社は自治体との災害対策物資供給協定なども進めています。建設資材、国土強靱化、インフラ更新、そして災害復旧など、一つの会社の中で複数のテーマが重なっている点が、同社を見る上で面白いポイントです。


(田代 昌之)

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