ここ最近、自動車メーカー各社が新車開発の時短化・低コスト化を推し進めると相次いで発表しています。日産やホンダ、そして三菱自動車は、それぞれが発表した中期経営計画において大幅な開発期間の短縮と低コスト化を目標に掲げました。
具体的には、日産は開発期間を従来の半分の37か月に、三菱も36か月での開発完了を目指すとしています。またホンダは「開発費」「開発期間」「開発工数」をそれぞれ半減させる「トリプルハーフ」戦略を打ち出しました。開発期間が短くなれば、人件費などの開発コストも削減できるでしょう。日産と三菱も当然、時短化と連動した低コスト化を実現してくるはずです。
ここで注目すべきは、日産が2023年に中国で発売した新型EVセダン「N7」の存在です。なんと日産N7は2年半、つまり36か月で開発されたといいます。日産が目標とする37か月での新車開発は、すでに実現可能なレベルにあるのです。
これほどの期間短縮は、なぜ可能になったのでしょうか。考えられる要因は大きく分けてふたつあります。
ひとつめの要因は、プラットフォームや主要部品の共通化です。日産は総モデル数を減らしつつ、車両のプラットフォームやパワートレイン、ソフトウェアを共通化する「商品ファミリー戦略」を導入するとしています。また、三菱も2026年秋に投入する新型「パジェロ」をシリーズ化する方針です。
このように部品の共通化を進めれば、その開発にかかる工数が減り、期間とコストが一度に縮減できるというわけです。近年では、マツダが2010年代に「一括開発」と名付けたファミリー戦略を推進し、開発コストを大きく削減。苦境にあった業績を回復させています。
そしてもうひとつ注目すべきなのが、最新のデジタル技術の活用です。いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速化であり、具体的に言えばクラウド技術、そしてAIの活用が該当します。
そもそも、開発期間の短縮とコストの削減は自動車メーカーが長年取り組んできた永遠の課題です。それが最近になって急激に進んだのは、クラウドやAIをはじめとするデジタル技術が格段に進歩した結果と考えるのが妥当でしょう。
AIで「試作」も「試験」も激変?では、これらのデジタル技術は実際の開発現場でどのように活用されているのでしょうか。活用範囲は非常に幅広く、多岐にわたります。
例えば、試作や試験の業務プロセスは大きく変わり始めています。部品を実際に試作して現物で試験するという行程は、これまでもコンピューター上でのシミュレーションへ置き換えられてきました。しかし昨今は試作品の設計データをクラウド上で管理し、AIが解析や改良を行うのが一般化しつつあります。
また、AIは商品企画の業務効率化でも大きく貢献しており、これも開発期間の短縮につながっています。さらに試作段階やマイナーチェンジの際には、デザイン変更にあわせて周辺の細かい部品を再設計する必要がありますが、この作業もAIがあればより簡単になります。
このように、クラウドやAIの最新技術は実際の現場レベルまですでに浸透しています。日産のイヴァン・エスピノーサCEOも、さまざまな場面で「AIを活用する」と説明しています。またホンダや三菱も、デジタル化とAIの活用を進めることを中期経営計画に明記しているほか、自動車メーカーに開発ツールを提供するAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)も、自動車開発用のサービスにAIを活用していると公表しています。
振り返れば私たちの身の回りでも、AIに質問することはここ2~3年でまったく珍しくなくなりました。自動車開発の現場では、さらにその先を行く活用が進んでいると言えるでしょう。つまり、この急激な開発の時短化と低コスト化は自動車の分野に限った特別な進化ではありません。技術革新による世の中全体の変化が、そのまま自動車開発の現場にも波及しているのです。

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