「3日待ち」の人気ぶり 空飛ぶ実験室の内部とは

 かつてJAL(日本航空)で活躍した「ジャンボジェット」ことボーイング747-400。そのうちの1機(元JA8910)は現在、アメリカの航空機エンジンメーカーGEエアロスペースの所有となり、新しいエンジンを開発するためのテスト機として第二の人生を送っています。

2026年7月開催されたファンボロー航空ショーで、その貴重な機内が公開されました。“空飛ぶ実験室”へと変貌した元JALジャンボの内部は、どうなっているのでしょうか。

異色の転生を遂げた元JAL「ジャンボ」、その衝撃の機内へ潜入...の画像はこちら >>

 JALはかつて、国際線や国内線で44機の747-400を使用していました。今回公開された「JA8910」は1994年から2010年までJALで運航された後、GEエアロスペースへ渡り、現在は「N747GF」という機体記号で登録されています。

 このように、新しいエンジンの飛行試験に用いられる航空機は「フライングテストベッド機」と呼ばれます。旅客を乗せないため、機内はJAL時代から大きく様変わりしていると想像できますが、その内部を見る機会は滅多にありません。そのため、今回の機内公開は非常に人気を博し、会場での予約を取るのに3日もかかったほどでした。

 ようやく入ることができた機内は、座席がずらりと並んでいた、かつての面影はほとんどなく、客席がない分、広々とした空間が広がっていました。外観の変化は、主翼の端にあった「ウィングレット」と呼ばれる小さな翼が取り外され、国内線仕様機のような見た目になっている程度ですが、内部はまさに“別物”です。

 機内には、試験のデータを計測するためのコンピューターを置く長机と椅子が12列ほど並んでいます。訪れた際は新しいエンジンを搭載していなかったためか、多くのラックにコンピューターはありませんでしたが、そのラックの数は、エンジン試験がいかに多くの項目を記録する必要があるかを物語っていました。また、新しいエンジンは主に左主翼の内側に取り付けられるため、機体前方の左側には、主翼前方に向けて2台の記録用カメラも備えられていました。

 がらりと姿を変えた機内でしたが、探してみるとJAL時代の痕跡もところどころに残っていました。

 最初に目についたのは、乗降ドアにある非常用脱出装置の注意書きです。英語の表記と共に「ハンドセットは滑走中および離着陸中は格納し固定してください」と、おなじみの日本語が見て取れます。機体後部にある乗員休憩室の入口にも「Crew Only」の表示と並んで「乗務員専用」という日本語が記されており、赤枠で囲まれた「非常口座席」の案内も残っていました。

なぜ今あえての「4発機」? メーカーが語る納得の理由

 また、試験クルーが使用する座席の一部には、かつてのファーストクラスやビジネスクラスで使われていたものが再利用されていました。横幅が広く、現在の主流であるパーテーション付きの個室タイプが登場する前、1990年代後半から2000年代初頭に流行した懐かしいスタイルの座席です。

 現代の旅客機は、燃費効率に優れたボーイング777やエアバスA350のようなエンジンが2基の「双発機」が主流です。航空会社では運航コストの観点から、747のようなエンジンを4基搭載した「4発機」は姿を消しつつあります。ではなぜ、エンジンメーカーはあえて4発機をテストに使い続けるのでしょうか。

 機内を案内してくれたGEエアロスペースの社員は、「エンジンは4基ある方が、試験を安全に行うことができるからです」と説明します。

 新しいエンジンの試験では、飛行中にエンジンをいったん停止させ、再び始動させるプログラムが含まれます。もし双発機でこの試験を行った場合、テスト中の新エンジンを止めた際に、もう一方の既存エンジンにもトラブルが発生して停止してしまったら、機体はすべての推進力を失ってしまいます。

エンジンの再始動までに許される時間的な猶予はほとんどないでしょう。

 その点、747のような4発機であれば、仮に2基のエンジンが停止しても、残りの2基で飛行を続けることができます。これにより、エンジンを安全に再始動させるための時間的余裕が生まれます。こうした安全性の高さから、この747はエンジンメーカーで今も重宝されているというわけです。

 元JA8910のフライングテストベッド機は今後、ファンブレードがカバーに覆われていない「オープンファン構造」と呼ばれる次世代エンジンなどのテストを行う予定だといいます。JALの翼から世界の空の未来を支える“空飛ぶ実験室”へ――。この機体がこれからどのような姿に変わっていくのか、楽しみです。

【写真】えっ…これが「魔改造された元JAL機」衝撃の機内です

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