プレミアリーグ2026-27シーズン開幕
気になる日本人プレーヤーの現在地(後編)

◆前編>>冨安健洋、前田大然、守田英正......プレミア復帰&初参戦3人はレギュラー?

 2026-27シーズンの開幕を前に、日本人選手たちの立ち位置も大きく揺れ動いている。

 昨季、カンファレンスリーグ制覇に貢献するなど充実した働きを見せた鎌田大地(クリスタル・パレス)に続き、三笘薫(ブライトン)と田中碧(リーズ)もプレミアリーグで確かな存在感を放った。

 その後の北中米ワールドカップでは、三笘が負傷で出場を断念した一方、田中は大舞台で躍動。明暗を分けた夏を経て、三笘は復活への道を歩み、田中はリーズでの序列争いに挑む。ふたりは再び、その実力をプレミアリーグの舞台で証明できるか。

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三笘薫のプレミアリーグ復帰はいつ? オーウェンも苦しんだハム...の画像はこちら >>
 2026年5月9日のウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦で左ハムストリングを痛めて以降、三笘薫はピッチに立っていない。

 彼の欠場は所属するブライトンだけではなく、日本代表にも大きなダメージをもたらした。勝負に「たられば」は禁句だとしても、ワールドカップで彼を起用できていれば、森保一監督の選手起用の幅も広がり、ブラジル戦も異なるゲームプランを用いていた、と考えられなくはない。

 さて、新シーズンのプレミアリーグ開幕が間近に迫った現在も、ブライトンは三笘の復帰時期を明らかにしていない。ただ、無理は禁物だ。年齢にかかわらず、ハムストリングの負傷が慢性化するケースは少なくない。手術ではなく保存療法を選択すると、再発率は30%とも言われている。

 代表例はマイケル・オーウェンだろうか。2001年、リバプールでバロンドールを獲得するほどまばゆい輝きを放っていたワンダーボーイは、加速・減速の繰り返しが災いし、最盛期はあまりにも短かった。

その後に移籍したレアル・マドリード、ニューカッスル、マンチェスター・ユナイテッドでは、周囲の期待に応えられていない。

 昨シーズンもエデル・ミリトン(レアル・マドリード)、エステヴァン(チェルシー)、ラミン・ヤマル、ペドリ(ともにバルセロナ)などが大腿部に痛みを訴え、長期欠場もしくは数週間の安静・加療を余儀なくされている。

【三笘復帰の「Xデー」は......】

 一説によると、ハムストリングを痛める選手は20年前に比べると倍増しているという。現代フットボールはアスリート色が強くなり、過度の負担が下半身にかかるのも要因のひとつだろう。急激な緩急の変化、左右のステップに耐えられなくなった肉体が、最後に悲鳴を上げる。

 三笘の負傷も、現代フットボールの高強度化と無縁ではないだろう。冒頭に挙げたウルヴァーハンプトン戦では左サイドから仕掛けた際、ハムストリングに違和感を覚えていた。そして5月25日、負傷箇所にメスを入れたことをブライトンが明らかにしている。

 以降、三笘はリハビリに努めている。重度の負傷だったため、早期復帰は難しい。繰り返すが、ハムストリング痛は慢性化すると厄介だ。メディカルスタッフとともに急がず焦らず、とにかく完治を目指してほしい。

 8月2日、三笘はブライトンに再合流したものの、トップフォームに戻るまではまだまだ時間が必要だろう。

痛みが和らぎ、「もう治ったんじゃないか」という根拠のない自信は、復帰を遅らせるどころか、選手生命を危機にさらすだけだ。

 もちろん、開幕戦には間に合わない。保存療法ではなく手術に至った事実、過去にハムストリングを痛めた選手たちの経緯から推測すると、ジョギングを開始するまで3カ月。全体練習を経て実戦復帰するまで、さらに3カ月程度を要するのではないだろうか。

 したがって三笘復帰の「Xデー」は、11月中旬~下旬との仮説が成り立つ。

 8月13日時点で、ブライトンは三笘の具体的な復帰時期を公表していない。彼に代わる左ウイングを探す気配もなく、ヤンクバ・ミンテ(プレシーズンマッチのローマ戦で負傷)とマクシム・デ・カイペルでやり繰りするしかない。

 昨シーズンの三笘は、度重なる負傷に苦しみながら、ピッチに立ちさえすれば決定的な違いを見せつけてきた。第33節のトッテナム・ホットスパー戦で決めた一撃は、2026年4月のプレミアリーグ月間最優秀ゴールに選ばれるほど秀逸だった。

 三笘は唯一無二の存在だ。今はゆっくり治療してほしい。ファビアン・ヒュルツェラー監督も「自分の肉体に自信を取り戻すこと」と語っていた。

彼の代役は存在しない。

【田中の実力なら失地回復は可能】

 昨シーズンの田中碧は、まさに「右肩上がり」だった。一時はベンチを温める日々が続いたものの、終盤戦を迎えるあたりから実力で定位置を奪回。リーズのプレミアリーグ残留に貢献し、試合内容の向上は田中の献身に負うところが大きかった。

 だが、今シーズンは風向きが怪しい。昨シーズン終盤、リーズの中盤はイーサン・アンパドゥ、アントン・シュタッハ、田中が主力を構成していた。この3人に続くのが、ショーン・ロングスタッフとイリア・グルエフだった。

 リーダーシップにあふれ、ロングスローでアシストも期待できるアンパドゥ。すぐれた戦術眼を持ち、高いプレー強度で攻守に貢献するシュタッハ。このふたりは、ダニエル・ファルケ監督の信頼が非常に厚い。

 そして昨シーズンのパフォーマンスをふまえるなら、田中も同格のはずだった。しかし、今夏の移籍市場でフラムからハリー・ウィルソンを獲得した。本来は右ウイングの選手だが、ゲームコントロールとシュートの精度を高く評価するファルケ監督は、アンパドゥ、シュタッハとともに中盤の一角をウィルソンに委ねるようだ。

田中にすれば心穏やかではない。

 8月2日に行なわれたリバプールとのプレシーズンマッチ、田中のプレーはミスが目立ち、失いかけている信頼を回復するに至らなかった。ボールを持ちすぎた結果、何度もロストしていたし、1対1でも圧倒された。ファルケ監督が納得できるプレーではなかっただろう。

 ただ、シーズンはまだ始まっていない。昨シーズンと同様に田中の実力をもってすれば、失地回復はまだまだ可能だ。フタを開けてみるとシーズン前のプランが一変したケースは、世界中のどのクラブでも頻発する。まして市場は終盤を迎えており、移籍する時期として適切ではない。

 しかし、それでも序列が落ちているのなら、新たな挑戦に野心が燃えているのなら、思いきった決断も悪くはない。

【リーズにこだわる必要はまったくない】

 北中米ワールドカップのスウェーデン戦における田中は、まさに出色の出来だった。重要局面には必ずといっていいほど姿を現し、即座に最善のプレーで貢献する。なぜプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれなかったのか、選考者の見識を心の底から疑ったほどだ。

 スウェーデン戦のプレーに感銘を受けたクラブ関係者が、田中に興味を示すかもしれない。いや、すでに色よいオファーが届いているかもしれない。信頼してくれる監督のもとでプレーするのは、なによりの幸せだ。一定のプレータイムを望むのなら、リーズにこだわる必要はまったくないとも思う。

 三笘は負傷、田中は序列の低下。現状は好ましくない。だが、人生は山あり谷あり、常に試練との戦いだ。平坦な毎日より、ドラマティックな人生のほうがスリル満載で楽しいじゃないか。

 2026-27シーズンが終了した時、「そういえば、あの時はケガに苦しんだなぁ」「一旦は干されたけど、ピッチで答えを出してやったぜ」。そんな会話で笑っていられれば、それでいい。

粕谷秀樹●取材・文 text by Hideki Kasuya

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