女子バスケットボール・田中こころインタビュー前編

 9月4日にドイツ・ベルリンで開幕する「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026」に出場する20歳の田中こころ。高校時代からトップで活躍していたものの、彼女の名を一躍広めたのが、大会のベスト5を獲得した昨年の「FIBA女子アジアカップ2025」だ。

女子日本代表がコーリー・ゲインズヘッドコーチ体制となって始動した1年目、当時19歳の彼女は司令塔のポイントガード(PG)を担い、大きな存在感を示した。

 その後も、日本人として2人目となるWNBAドラフト指名など話題に事欠かない。自身初の世界大会となるワールドカップでも、活躍が期待される新星に、まずは激動の1年を振り返ってもらった。

【女子バスケ日本代表】20歳のPG田中こころ、WNBA指名か...の画像はこちら >>

【緊張、涙を乗り越えた2025年】

――日本代表に初参加となった昨年(2025年)は、セレクションキャンプ(若手を中心に候補選手を選考するためのキャンプ)からの参加でした。

「同じタイミングでU19日本代表の合宿もあったので、最初は日本代表の練習の次の日にU19代表の練習といったように、どちらにも参加していました。最終的にどっちでやるのかわからなかったのですが、やれるのなら高いレベルでやりたいとは思っていたので、日本代表チームに選んでもらい、うれしい気持ちとともにU19のメンバーからもトップに行ってよかったと思ってもらえるように頑張りたいと思いました」

――チームには大先輩たちが多くいましたよね。

「緊張しないタイプの私でも、最初はやっぱり緊張しました(笑)。本当にこのなかでやるの? と思いました。誰もが知っている選手ばかりで、わけがわからない状態でしたね」

――とはいえ、アジアカップ前の強化試合からスターターに起用されます。

「『自由にやっていいよ』というコーリー・ゲインズヘッドコーチのスタイルと、それにプラスして『思いきりやっていいよ』と言ってくれる先輩たち。否定をされることなく、ポジティブな声かけをしてくれる周りのおかげで、やりやすい環境でした。それは今も変わらないですね。正直、日本代表はピリピリしているのかなと思っていたのですが、そんなことはなく、やる時はやるけれど、いい意味でみんなが楽しんでいると感じました」

――その後、夏には「アジアカップ」に出場。

トップの日本代表としては自身初のFIBAの国際公式戦参加となりました。

「あの大会で人生が変わったと言ってもいいほど、すごく大きな大会でした。人生で一番キツかったし、人生で一番いい経験もさせてもらった。そんなに甘くはないという世界を見たし、逆にみんなで頑張れば結果はついてくる、ということも感じました」

――キツいと感じたのは?

「予選(グループフェーズ)です。周りは私のせいだとは誰ひとり言わないけれど、自分としてはガードなのに出来が悪くて。変に気負っていて、私が何でもやらなくてはいけないと責任も感じすぎていました。もっと周りに頼ってよかったところを勝手に自分でやろうとしていたので、自分で自分の首を絞めていたと思います。私はあまりそういうタイプではないんですけどね。その時はいろいろなプレッシャーや声もあって苦しかったし、うまくいかなかったですね。チームとして勝てていたことだけがよかったです」

――それでも決勝トーナメントでは、特に準決勝の中国戦で27得点と勝利に大きく貢献しました。

「私、めっちゃ泣いたんですよ、予選の最終戦前にコーリーに呼ばれて。『ココ』(田中のコートネーム)と声をかけられた瞬間から泣いてしまいましたね。

コーリーはそれに驚いて、『泣かせるつもりはなかったんだよ』と言っていましたが、その時に『らしくないよ』『シュートをどんどん打つココを世界に見せるために連れてきたのだから、思いきりやってほしい』といった言葉をかけてもらい、それで吹っきれたところはありました。それに先輩たちからも『大丈夫』と声をかけてもらいました」

――だからこそ、コーリーHCの言葉が響いたわけですね。

「実は、それまでの試合ではずっとコーリーに怒られていたんです。それは私がよくなかったので、『ココ、何でやらないの』と。私自身も分かっているけどできなくて、そんな自分に苛立っていたので、今は無理かな......というタイミングでしたね」

――アジアカップでは壁に当たり、大会中にそれを乗り越えることができましたか。

「そうですね。U19日本代表の選手たちが頑張っているなか、私も『(自分が日本代表ではなく)U19のワールドカップに行っていたら(もっと)活躍できたんじゃないか』と思われるのは嫌でした。最終的には決勝で負けて準優勝でしたが、自分のキャリアとしてはすごくよかったのではないかと思います」

【ワールドカップに向けて成長中】

――その後、2026年3月にはワールドカップ予選に出場。3連敗からの2連勝で最後は日本を含む3チームが勝敗で並ぶなど、僅差での出場権獲得でした。

「今までアンダーカテゴリーで国際試合には出場しましたが、私自身はアジアまでで、(アジア以外の大陸の国と対戦する)ワールドカップなどには出たことがありませんでした。予選ではヨーロッパなどのチームが相手にいて、不安よりはすごくワクワクした気持ちで挑みました。でも、そう簡単にはいかない現実をこの大会ですごく感じましたね」

――かねてから試合では緊張しないと言っていますが、この大会でも緊張はなかったのでしょうか?

「世界にはどんな相手がいるのだろうと思いながら、いざ相手を目の前にしたら少し受け身になったところがありました。

これを緊張というのかはわからないですが、『今、ビビってるわ』と思った瞬間は結構ありましたね。でも、それがよくないプレーにつながっていたわけではないと思っています」

――それは今までにはなかった感覚ですか?

「あまりないですね。もちろん、大会ではどこが相手でも『自分が絶対に最初のシュートを打つ』といったように強い気持ちで入っていたけれど、やっぱりどこかで圧倒された感じがあったのだと思います」

――こうして振り返ると日本代表1年目はいろいろな経験をしましたね。

「コーリーとも濃い時間を過ごしていて、まだ(代表活動)2年目ですが、もう7、8年一緒にやっているぐらい内容が濃いですね。昨年は19歳であれだけの経験をさせてもらいました。もう、この先ないだろうなと感じるぐらい、いい経験も悪い経験もさせてもらったので、考え方も含めてすごく変わりました」

【後編】原点は「ポートボール」WNBA指名を受けた20歳のPG・田中こころ>>

Profile
田中こころ(たなか・こころ)
2006年1月10日生まれ、大阪府出身。KAGO CLUB(大阪府)-桜花学園高校(愛知県)-ENEOSサンフラワーズ。身長173㎝。ポジションはポイントガード(PG)。桜花学園時代は、2年時から主力となり、3年時にダブルキャプテンを務めた。世代別の代表も経験。2024年にENEOSに加入すると、2025年には19歳で初めて日本代表に選出された。

2026年4月にはWNBAドラフトで全体38位指名を受けたが、今シーズンはENEOSと日本代表に専念することを表明。女子バスケ界の新エースとしての活躍に期待がかかる。

田島早苗●取材・文 text by Sanae Tajima

編集部おすすめ