8月25日、中国・天津。日本はアジア選手権予選ラウンドを3戦全勝で突破し、決勝ラウンドへと勝ち上がった。

香港にセットカウント3-0(25-9、25-15、25-12)、韓国に3-0(33-31、25-19、25-20)、ベトナムに3-0(25-23、25-17、25-21)と、いずれもストレート勝利だった。1セットも4落とさず、予選2位以上を確定させた。

 これから始まるトーナメント戦では、やはり中国が最大のライバルとなるだろう。

<アジア選手権で優勝したチームがロス五輪出場決定>

 これが大会の構図で、日本はその渦中にいる。それだけに、選手たちも大勝にも少しも浮かれていない。

「一日一日、前に進むような試合を」(関菜々巳)

「試合を重ねるごとに強くなれたら、オリンピックを意識して、1試合を全力で」(和田由紀子)

 アジア選手権の予選は、万事が順調というわけではなかった。思ったほど楽に勝ちきれていないし、試合の入り方も懸念材料だ。

 しかし、韓国戦では34歳のミドルブロッカー、島村春世が機動力の高さを見せ、チーム3番目の10得点を記録、ブロード(移動攻撃)は迫力満点だった。ベトナム戦で先発に抜擢されたアウトサイドヒッター、20歳の秋本美空がチーム最多得点を挙げ、台頭を見せた。また、途中から入った鴫原(しぎはら)ひなたが攻守に貢献し、同じく山口真季もSVリーグ屈指のブロック力を披露。戦力の増強は間違いない。

 現在は成功と失敗を繰り返しながら、そのたびに改善し、革新を生むプロセスにあるのだろう。

はたして日本は2019年大会以来の優勝を遂げ、ロス五輪の出場切符を勝ち取ることはできるか?

【女子バレー】佐藤淑乃と日本代表のシンクロする成長 アジア選...の画像はこちら >>
 予選ラウンド、計46点(香港戦が17点、韓国戦が18点、ベトナム戦が11点)でチーム最多得点を記録したのが、新シーズンはイタリア挑戦が決まっている佐藤淑乃(24歳)だった。

「自分はオフェンスなので、アグレッシブに攻めて。相手を吹き飛ばすような勢いでスパイクを打っていかないと」

 佐藤は平素より、アウトサイドヒッターとしての矜持を語るが、アジアのチームを相手にして"差"を見せつけた。よくも悪くも、彼女が現在の日本女子代表の出来を占うバロメーターになっているのは間違いない。

【「どんな状況でも攻める姿勢を」】

 たとえば韓国戦の第1セットは、チーム全体の出足が鈍く、サーブなどを研究されていたこともあって接戦に持ち込まれ、33-31でどうにか競り勝つ内容だった。どちらかというとスロースターターの佐藤が、波に乗りきれていなかった。一方、2セット目からは佐藤のスパイクの精度が上がり、尻上がりに調子を上げると、同時にチームの攻守も安定するようになっていった。3セット目はアタックだけで7点、アタック効果率は70%を誇って、勝利の原動力になっている。

「今は"自分のよさを最大限に出すこと"を大事にやっています。そこを潰さないことが何より大切で、そのなかでいろいろ試しながら、つかみかけてきているなって」

 今年のバレーボールネーションズリーグ(VNL)のファイナル進出を決めたあと、佐藤はそう語っていたが、彼女自身、成長のプロセスにあるのだろう。それはパリ五輪後、フェルハト・アクバシュ監督が新たに就任し、生まれ変わった日本の歩みとシンクロするところがある。彼女の爆発力は日本の頼みの綱でもあるのだ。

「今シーズンは世界一を目指してやっているので、その戦いを基準にしています。でも、このままでは(世界一は)厳しいと思うので、自分だけではなく、みんなで成長していきたいと思っています」

 佐藤は硬骨に語っていた。

 彼女は少しもその人気にあぐらをかいていない。パリ五輪後に代表の主力に定着した彼女はメディアから注目される存在になったが、自らの技を積極的に試し、着実に技量を上げてきた。全身を使ってパワフルに放つサーブや、跳躍力の高さと目のよさを生かしたバックアタックは「世界で武器になる」と確信したが、そこで満足することはなかった。

「どんな状況で入っても、"攻める"って姿勢は出し続けられるように。たとえば前衛での攻め方のバリエーションで、すごく身長が高い相手、2メートルもある選手に対し、どう攻めるのか。そこは空いたコースをしっかりと見つけてコントロールするとか......」

 彼女は"攻めの信念"を貫くことによって、見上げるような身長の相手にも活路を見出そうと、トライ&エラーを重ねてきた。その結果、昨シーズンのSVリーグでは見事にレギュラーシーズンMVPに輝いている。そして成長に対してどん欲だったからこそ、愛着のあるNECレッドロケッツ川崎をあとにして、新シーズンからは海を渡ることも決心したのだ。

 アジア選手権の決勝ラウンドでの戦いは、彼女にとってはロス五輪に向けた試金石となるだろう。タイや中国を相手に、接戦で勝利をもぎ取る1点を決められるか。

パリ五輪後、チームの完成度は高まってきた。粘り強い守りがその強さの土台ではあるが、最後に歓喜を呼ぶのは若きエースのスパイクだ。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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