不動産大手のヒューリックが東大受験塾「鉄緑会」を傘下に、異業種による教育事業買収が増加中

不動産大手のヒューリックが7月初め、東大受験の専門塾「鉄緑会」の買収を発表した。不動産大手と名門進学塾と取り合わせは意外感があるが、2024年にも個別指導塾「TOMAS」などを展開するリソー教育(現リソー教育グループ)を傘下に収めた。

実は近年、こうした異業種による教育事業の買収が相次いでいる。

ヒューリック、ベネッセから「鉄緑会」買収

鉄緑会は教育大手、ベネッセホールディングスの傘下。ヒューリックは鉄緑会を運営する東京教育研(東京都渋谷区)の全株式をベネッセから取得し、完全子会社とするもので、多角化事業の一つとして注力する教育事業の拡大につなげる。買収額は非公表。

鉄緑会は1983年に誕生。中高6年一貫の独自カリキュラムを特徴とし、東京、大阪、京都、兵庫に校舎を持つ。

毎年、東大や国公立医学部の合格者を多数輩出。2026年度の東大合格者は540人と全合格者の20%を占め、なかでも最難関とされる理科三類では57人、占有率59%という。ベネッセの傘下に入ったのは2009年のこと。

不動産大手のヒューリックが東大受験塾「鉄緑会」を傘下に、異業種による教育事業買収が増加中
東大受験専門塾として知られる「鉄緑会」(東京・代々木)

「こども教育経済圏」づくりに注力

ヒューリックは2020年に教育事業に参入した。事務所ビル賃貸を中心とする不動産をベースとしつつ、観光・ホテル、スポーツ・エンターテイメント、環境・インフラなどと並ぶ新規・成長分野として位置付けたのが教育だった。

2024年には約160億円を投じ、個別指導塾「TOMAS」や幼児教育「伸芽会」を運営するリソー教育グループをTOB(株式公開買い付け)などで子会社化した。

「こども教育経済圏の拡大へ」。こんな掛け声とともに昨年、自社ビルを活用して塾、学童、保育、習い事、小児科などを集めた「こどもでぱーと」を都内と横浜市に初開業。

2029年までに20カ所程度まで拠点を増やす計画だ。

今回の鉄緑会の買収も、こうした流れの中にある。教育市場は少子化による18歳以下人口の減少という逆風下にありながらも、政府の教育支援策の拡充や共働き世帯の増加などに伴い、「高付加価値教育の需要は今後さらに高まる」(ヒューリック)との判断がある。

ヤマノHD、「スクールIE」加盟店を相次ぎ子会社化

異業種による学習塾など教育事業の買収はここ数年、増加傾向をたどっている。今年に入り、上場企業がかかわる案件として少なくとも、ヒューリック以外に2件ある。

その一つが和装宝飾品販売のヤマノホールディングス。3月に、都内で個別指導塾「スクールIE」を7教室運営するアークネット(東京都渋谷区)を子会社化した。「スクールIE」はやる気スイッチグループホールディングス(東京都中央区)が全国展開しており、アークネットはそのFC(フランチャイズ)加盟店。

ヤマノは2018年、「スクールIE」FC加盟店大手のマンツーマンアカデミー(千葉県旭市)を子会社化し、教育事業に参入した。同社はこの前年、繊維卸事業とスポーツ事業の売却を柱とする構造改革を実施し、成長分野として教育事業に活路を求めたのだ。

以降、2022年に東京ガイダンス(東京都大田区)、23年に灯学舎(東京都渋谷区)という「スクールIE」の加盟店を相次いで子会社化。教育支出水準が高い東京を中心とする首都圏でのドミナント(地域集中出店)戦略を推し進めている。

TBS、やる気スイッチグループを約290億円で買収

個別指導塾「スクールIE」の本部であるやる気スイッチグループホールディングスを傘下に収めたのはTBSホールディングスだ。狙いは知育・教育事業への本格参入。

2023年に約290億円を投じて、やる気スイッチグループ株式のおよそ80%を取得した。TBSとして過去最大のM&Aで、同社の“本気度”の表れを示した形だ。

不動産大手のヒューリックが東大受験塾「鉄緑会」を傘下に、異業種による教育事業買収が増加中
やる気スイッチグループホールディングスを買収したTBS

やる気スイッチグループは「スクールIE」を中心に、幼児・小学生向け英会話教室、キッズ向けスポーツ教室などを展開。国内外2400以上の教室を持ち、13万人を超える子どもたちが学ぶ。

TBSは、やる気スイッチグループが持つ教育ノウハウや顧客基盤と、自社の映像アーカイブスや映像技術を組み合わせ、海外展開も視野に入れながら、新たな映像教育コンテンツの提供につなげる。「探求学習」の比重が高まる中、学びを深めるための映像活用の重要性が増していることも見逃せない。

テクノホライゾンはオンライン塾「Meta」を傘下に

昨年を見回すと、映像・IT製品のテクノホライゾンが数学特化のオンライン学習塾を展開するMeta(仙台市)を子会社化した。テクノホライゾンは教育現場向けに書画カメラや電子黒板などのICT(情報通信技術)機器を提供しており、学びの環境支援づくりでの相乗効果を見込む。

オンライン雑誌書店を展開する富士山マガジンサービスは2024年に学習塾事業に参入。今年を含めてこれまで4件の買収を手がけ、現在、横浜、大阪、那覇に校舎を持つ。この5月には東京・市ヶ谷に医学部専門の校舎を開設するなど、業容を拡大中だ。

不動産大手のヒューリックが東大受験塾「鉄緑会」を傘下に、異業種による教育事業買収が増加中
※HDはホールディングスの略

                                  文:M&A Online

不動産大手のヒューリックが東大受験塾「鉄緑会」を傘下に、異業種による教育事業買収が増加中
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