「西武ホールディングス」M&A戦略が実行段階に 業績上方修正も追い風

西武鉄道を運営する西武ホールディングス<9024>が、不動産とホテルを中心に、M&A戦略を実行に移している。

2026年5月に公表した中期経営計画の進捗状況をまとめた資料で、中古住宅再生事業を手がけるイーグランドへのTOB(株式公開買い付け)が同月に成立し、これを不動産事業におけるM&Aの第一号案件と位置付けた。



さらに、ホテル・レジャー事業でも、2025年3月期から2026年3月期までの2年間に実施したホテルの契約・開業案件の半数以上をM&Aが占め、今後の出店加速の手段としてもM&Aを掲げた。

中古住宅市場への本格参入や、ホテル数を現在の2倍以上に広げる計画の実現に向け、2024年5月に示したM&A関連投資計画の具体化が進んでいるのだ。

同社は中期経営計画の進捗の公表と合わせて、2027年3月期の業績予想の上方修正も発表した。

収益力の改善は、中長期的にM&A戦略を支える好材料となりそうだ。

M&Aを成長投資の手段に

西武ホールディングスは2024年5月に、西武グループ長期戦略2035と、2025年3月期から2027年3月期までの3年間の中期経営計画を策定した。

2025年8月には、同計画の2027年3月期の業績計画数値を上方修正したが、M&A戦略についての新たな言及はなかった。

2026年5月に公表した同計画の進捗では、不動産事業とホテル・レジャー事業でM&Aの実績を示し、今後もM&Aを成長投資の手段として活用する姿勢を明確にした。

不動産事業では、M&Aの重点領域として個人向け中古住宅市場への本格参入を掲げていた。

西武不動産によるイーグランドへのTOBはその第一号案件で、イーグランドと西武グループの経営資源を相互に活用し、中古住宅の取得から販売までを一気通貫で担うモデルの構築を目指す。

ホテル・レジャー事業では、長期戦略で2036年3月期に250ホテル体制を掲げており、2026年3月期の96ホテルから拡大するため、ホテルの契約・開業案件の獲得にM&Aを組み込む。

すでに2025年3月期から2026年3月期までの2年間で、ホテルの契約・開業17件のうちM&Aが10件を占めており、Ace Hotelの事業取得を実績として示した。

2027年3月期以降も、グループ入りしたAce Hotelとの連携をはじめ、ホテル開業の候補を増やすため、海外の商談イベントへの参加やリース契約などの出店手法を検討するとともに、M&Aも加えて出店を加速する考えだ。

同社は2024年5月に策定した長期戦略・中期経営計画で、新規物件の取得・出資やM&Aに約2400億円、ホテル改装・海外ホテルのM&Aに約3000億円を投じる方針を示していた。

これまで投資枠の提示にとどまっていたM&A戦略は、イーグランドへのTOBとAce Hotelの事業取得によって実行段階に移った形だ。

業績予想を2度上方修正

西武ホールディングスの2026年3月期は、ホテル・レジャー事業が営業収益の48.1%を占める最大の部門となり、次いで鉄道、バス、沿線生活サービスなどの都市交通・沿線事業が29.3%を占めた。

不動産事業は13.0%、伊豆箱根事業、近江事業、新規事業などのその他は9.7%だった。

「西武ホールディングス」M&A戦略が実行段階に 業績上方修正も追い風
西武ホールディングスの営業収益構成比

近年の業績については、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化が、大きな変動要因となった。

2025年3月期は同物件の流動化に伴う収益計上が寄与し、営業収益は前年度比88.7%増、営業利益は同6.13倍と大幅な増収営業増益となった。

一方、2026年3月期は、前年度に計上した東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化による一時的な収益がなくなった反動で、営業収益は同43.0%減の5132億8600万円、営業利益は同84.4%減の455億2200万円となった。

2027年3月期については、営業収益を前回予想比440億円増の5590億円(前年度比8.9%増)、営業利益を40億円増の530億円(同16.4%増)に引き上げた。

2025年8月にも、2027年3月期の営業収益を5020億円から5150億円、営業利益を410億円から490億円に引き上げており、同じ2027年3月期業績予想としては2度目の上方修正となる。

今回の上方修正の要因は、既存事業の収益改善だ。

不動産事業では、保有物件の流動化、ホテル・レジャー事業では1室当たり売上高の伸びやマウナケアビーチホテルの改装効果を見込む。

さらに、都市交通・沿線事業では2026年3月に実施した鉄道旅客運賃改定による運輸収入の増加を見込む。

業績の上方修正はM&A効果を直接の主因とするものではないが、既存事業の収益力改善は、不動産とホテルを中心とする中長期のM&A戦略を支える材料になる。

既存事業の収益改善などを背景に、M&Aを含む成長投資は、実行案件を積み上げる段階に入った。

「西武ホールディングス」M&A戦略が実行段階に 業績上方修正も追い風
西武ホールディングスの業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
M&A速報、コラムを日々配信!
X(旧Twitter)で情報を受け取るにはここをクリック

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック

編集部おすすめ