「子どもに媚びる笑いは格別」M-1チャンピオンが意気投合する子育て論【NON STYLE石田明×令和ロマン 松井ケムリ】
「子どもに媚びる笑いは格別」M-1チャンピオンが意気投合する子育て論【NON STYLE石田明×令和ロマン 松井ケムリ】

M-1グランプリ』で2023、2024年連覇という史上初の快挙を果たした令和ロマンの松井ケムリ。昨年第一子が誕生した彼は、複数の子ども向け番組に関わるなど、“パパ芸人”としての道を歩み始めている。

先日、初めて手がけた絵本『ちがうちがう』(集英社)が発売された。今回はM-1チャンピオンとしても、パパ芸人としても先輩であるNON STYLE石田明と対談。笑わせる対象による違い、子ども相手の仕事で大事にしていること、「教える」ことについて、語り合った。(前後編の前編)

子どもはツッコむのもツッコまれるのも好き

──お二人はともにM-1チャンピオンであり、“パパ芸人”でもあります。普段、お子さんの話などはされますか?

松井ケムリ(以下、ケムリ) 石田さんとは『ラヴィット!』(TBS)でよく会っているのに、これまであまり子どもの話をしたことがなかったですよね。

石田明(以下、石田) 子どもの年齢が近い方が話しやすいもんな。僕は『ラヴィット!』だと川島(明、麒麟)さんと「学校どうすんの?」とか話してる。

ケムリ 僕は子どもが同級生のニューヨーク屋敷(裕政)さんとしょっちゅう「今どんな感じ?」という近況報告をしています。僕がこの前描いた絵本を渡したら「ありがとう」とお子さんが読んでいる写真を送ってくれました。

──石田さんは、ケムリさんの絵本『ちがうちがう』を読んで、どんな感想を持たれましたか?

石田 いやぁ、いいとこ突いてんなと思いましたよ。子どもってツッコまれるのも自分でツッコミを入れるのも、むっちゃ好きなんですよ。うちの子たちも「ママといるとやさしい気持ちになれるけど、とーちゃんといると楽しさが勝っちゃう」とか言うんです。

「なんで?」と聞いたら、「だってとーちゃん、仕事ではボケなのに私たちの前ではツッコミじゃんか。

だから楽しくなっちゃうんだよ」って。

ケムリ すげえ! そんなことまでわかってるんですね。

石田 そう。で、この絵本は大枠でツッコミを入れられるポイントが各ページに1つずつあって、さらに細かくツッコミを入れられるところがむっちゃある。余白がいっぱいあるんですよね。だから子どもは何度見ても楽しいやろうなと思います。

ケムリ うわ、めっちゃ嬉しいです。

──それは、石田さんのお子さんだから特別ツッコミへの感度が高いということではなく……?

石田 僕、近所の子どもたちと遊んだりもしますけど、みんな好きですよ。ツッコミって普段の会話から口調が変わるじゃないですか。それが新鮮で楽しいらしくて。「すごいね~」とかより「すごいじゃん!」と力を入れて言ってあげた方が、テンションがアガるみたいなんですよ。

ケムリ 普段の教育の中には、そんなコミュニケーションないですもんね。

石田 子どもってリアクションを見てるから。強いリアクションを面白がるんよな。

「媚びる」笑いを全力でやることの気持ちよさ

──ケムリさん、絵本発売後の反響はいかがですか?

ケムリ SNSで「子どもがめっちゃ笑ってました」という声をいただくのが嬉しいですね。子どもを笑わせるって、大人を笑わせるよりも格別なものがあるじゃないですか。

石田 ああ、わかるよ。格別。

ケムリ 大人を笑わせるのはこっちも好きでやってることだし、自分と相手との勝負でもある。でも、子どもを笑わせるのってサービス精神込みでやってる部分が大きいから、100%いいことをしている気持ちになれる。

石田 子ども相手なら、媚びれるもんな。

ケムリ ああ、まさに!

石田 お笑いをやってると、媚びるのは悪いことと思われがちなんですよ。特に吉本には風紀委員がいて、そういう人から白い目で見られる。

──例えば、どんな方ですか?

石田 それはお察しください(笑)。各世代にいるんです。

ケムリ たくさんいますよ。

石田 でも子ども向けのものなら、いちばん安易なやつを、顔もワードも全力マシマシでやれる。いつもなら思いついてもまず候補から外すようなことを。

ケムリ 普段あまりにやらないことだから、芸人の中にはもう変な癖がついちゃって、できない人もいるかもしれないです。

石田 やっぱり全力でまっすぐ笑わすって、恥ずかしいんですよ。僕も昔はそうやった。でも子どもができてから一皮むけた気がしますね。子どもの力って偉大やなと思います。昔を振り返るとちょっとカッコつけてたし、言葉に頼ってたなと思いますもん。

最近、海外で仕事をすることがあるんですけど、子どもたちを笑かすのに似てるなと思うことありますよ。

ケムリ 言葉以外で伝えるってことですね。

石田 そうそう。

英語がしゃべれないから、表情や音、身振り手振りでまっすぐ全力で笑かそうとする感じが。

「動画を消してほしいかも…」子どもの貴重な経験

──石田さんは『ノンタンのハッピーコンサート』の脚本・演出など、お子さん向けの仕事をたくさんされていますが、そこでいちばん大事にしていることは?

石田 教育にはならないようにしていますね。“正解”を提示するコンテンツを作る人たちは世の中にいっぱいいますけど、僕はお笑い芸人なんで、そうじゃないものを作ろうと。子ども向けミュージカルをやろうとした時に「ノンタン」を選んだのも、ノンタンがどこにでもいる子だから。自分勝手でわがまま。そういう子を説教くさくなく、ただまっすぐ描きたい。

── ケムリさんが絵本を描くときに意識したことは?

ケムリ まだ字が読めない子も手に取る可能性は意識しましたね。それこそ海外の人を笑わせるのに近いかもしれない。言葉に頼りすぎないようにしました。あと、さっき石田さんが言ったように、子どもってツッコミをするのもされるのも好きだけど、人が人にツッコんでいるのではあまり笑わないと思ったんですよ。

ツッコミの面白さそのものというよりは、自分が主体になることを楽しんでいるというか。だから、ツッコミの絵本ではあるけど、書いてあるツッコミを見て笑ってほしいというよりも、一緒にツッコんでほしいという気持ちで作りました。

石田 この絵本はケムリが書く意味があるよね。

──当事者感が大事なんですね。

石田 『ノンタンのハッピーコンサート』でも、子どもたちを舞台上に上げたり、ノンタンと一緒に遊べる空間を作ったりしています。うちの子たちも毎回観に来ているので、舞台に立つことが好きになるんですよ。すると学校の発表会とかの気合いの入り方が変わってくるんです。そういう意味でも、いろんな子に参加させたいなと思いますよ。

ケムリ すげえ。どんな気持ちで発表会に臨むようになるんですか?

石田 舞台に立ってお客さんに見られるって、やっぱ緊張すんねんて。で、その動画を見せてみたら「私だけ足が逆やから、この動画消してほしいかも…」とか言い出す。

ケムリ そういうの、普通に暮らしてたら、ない振り返りですもんね。それは素敵だな。

 石田が我が子のために作るオリジナル絵本

──石田さんは、お子さんにどんな絵本を読んでいますか?

石田 僕は子どもが小さい頃に、絵本を描いてましたよ。紙芝居も。

ケムリ え、出版とかじゃなくてですか?

石田 うちの子どものためだけの、オリジナルの絵本。

その姿を見せると、子どもたちも作るようになるんですよ。今もしょっちゅう作ってる。

ケムリ わー、すごいな。親の背中を見てるんだな。

石田 元々は寝かしつけで普通に絵本を読んでたんですけど、途中から自作の絵本になって、そのうち持つのも億劫になってオリジナルでしゃべり始めて。

ケムリ いいっすね。

石田 で、子どもたちがそれを真似して自分たちで物語を作り始めた。自分を登場人物にできるし、失敗してもいい。失敗した時こそ、そこにツッコミが待ってるので。「なんじゃそれ」とツッコめばみんな笑う。

ケムリ わあ、そうか。うちの子どもはまだ1歳ですけど、僕は読んでほしい本を子どもの前で読むようにしてます。本を身近に感じてほしいから、電子書籍で買っていたものを改めて紙で買い直してますね。親が読んでいる姿を見たら興味を持つと思って。

石田 それは真似すると思う。子どもって大人が何やってるかめっちゃ見てるから。

──親の姿を見て真似をするから、そうあってほしい姿を見せるということですね。石田さんはNSC(吉本総合芸能学院、吉本の養成所)で講師もされていますが、人に教えるときに気をつけていることは何かありますか?

石田 方角ですかね。自分が何をどう教えたいかじゃなく、相手がどうしたいか、その方角。NSCの子たちなら、その子がどう笑かしたいのかを見て、「だったらこうした方がいいんじゃない?」とアドバイスする。上から言っても意味がないから、横に並ぶ努力をする。

ケムリ 一方的に教えるんじゃなくて、コンサルティングみたいな感じですね。それこそ正解がないものですもんね。

石田 子どもたちに対しても同じ。子どもってイライラしたら言葉数が減ったり泣いたりするやん? そしたら何が嫌やったかを聞いて、「これができなかった」と言われたら「じゃあこういうパターンは?」と何個か出してあげる。その中からやりやすいものを一緒に探す。

──ケムリさんも、M-1チャンピオンとして周りからアドバイスを求められることが少なくないと思いますが。

ケムリ 自分がやってよかったことを伝えるくらいですね。あとは、とにかくその人の幸せを考える、ですかね……。一度、後輩から相談を受けて、その人の幸せだけを考えて答えていたら、相手が芸人を辞めたことがあります。話を聞けば聞くほど「やめる選択肢もあるんじゃないか」と思ってしまって。

石田 そのほうが幸せな可能性があるからね。

ケムリ 今そいつ公務員やってます。

石田 それは絶対、ええことしたと思うよ。

後編へつづく

取材・文/青島せとか 撮影/井上たろう

『ちがうちがう』(集英社)

松井ケムリ
「子どもに媚びる笑いは格別」M-1チャンピオンが意気投合する子育て論【NON STYLE石田明×令和ロマン 松井ケムリ】
『ちがうちがう』(集英社)
2026年7月24日発売1980円(税込)34ページ 

◆◆松井ケムリが描き下ろした初絵本◆◆

Mー1グランプリ連覇などでお馴染みの令和ロマンの松井ケムリ。
2025年6月に第一子が誕生したパパ芸人が自ら描き下ろした絵本です。松井ケムリ自ら描いたおもしろおかしいキャラクターやイラストが満載。
神様が間違えて作ったおかしな世界を小さな少年が正していく親子で楽しめるストーリーとなっています。
水中で泳ぐライオン、地上を走るサメ、キバの生えたパンダ、ぐにゃぐにゃの公園、四角いフルーツ……ちょっと不思議でおかしな世界に「ちがうよ!」とやさしくツッコミ!
読み聞かせしながら「どこが間違っているかな?」と楽しく考える1冊です。

 

 

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