週刊少年ジャンプで連載が再開された『HUNTER×HUNTER (ハンター×ハンター)』。実に1年8ヶ月ぶりの掲載だ。
1998年の連載開始以来、この18年の間に何度も休載を重ねてきた同作。連載期間の実に6割は休載してきたことになる。
今回の休載の主な理由は、作者である冨樫義博の重度の腰痛のためとされているが、そもそもこの冨樫先生、週刊連載のシステムにはとことん向いていないタイプ。最初の大ヒット作『幽遊白書』の連載終了後に、自ら告白していることからも明らかである。

人気絶頂の中、唐突な終了を迎えた『幽遊白書』


『幽遊白書』は'90年に連載開始。格闘マンガ路線にシフトして人気が爆発。一躍ジャンプの看板作となり、'92年にはテレビアニメ化もされている。
しかし、作品の盛り上がりとは裏腹に'94年に突如終了を迎えてしまう。
ジャンプの掲載順位も上位のままで安定した人気を誇り、アニメの視聴率も絶好調の中でのまさかの事態。トーナメントバトルの盛り上がってきた展開をぶった切っての唐突なラストであった。
もっとも、当時は明らかに絵柄が荒れていることが多く、不安な要素はいくつか露呈していたのだが……。
『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博が同人誌で暴露した内容とは

最終回が掲載されたジャンプ巻末の作者コメントには、「しばらく放電します」と意味深なメッセージが。そして、この「放電」が大きな波紋を呼ぶことになる。


連載終了直後にコミケ降臨! 同人誌を無料で配布


連載終了から1ヶ月足らずの'94年8月のコミケに冨樫先生はまさかの参戦。ゲリラ的に作品を発表したのだ。
タイトルは『ヨシりんでポン!』。製本されていないコピーを綴じただけの簡素なスタイルながら、『幽遊白書』の裏話や、ジャンプ連載マンガのパロディなど、盛りだくさんの内容だ。しかも、500部限定で無料配布! 会場大パニックである。目玉は何といっても『幽遊白書』連載終了に至る経緯の独白だ。

『幽遊白書』突然終了の理由とは…?


2ページに渡って書き殴った最後に「今までの文章を要約します。わがままでやめました。
すいません。」とオチを付けてはいるが、追い詰められた冨樫先生のリアルな心情が綴られている。筆者が読み解くには、終了に至った主な要因は3つ。

まずは体調面の不安。徹夜で仕事をすると心臓に痛みが走る状態で、過労死も頭をよぎったそうだ。これは現在患っている腰痛の因子だろうか?
さらに、締め切りがタイトな週刊連載なのに「原稿を全部一人で仕上げたい」という欲求が生まれたこと。これは絵にこだわるマンガ家ならではの悩みか?
そして、「自己満足のためのマンガ」を追求したくなってしまったこと。
本来はキャラクターを“壊したかった”と語るように、読者の反響に左右される少年マンガのあり方に限界を感じていたようだ。

こうして、自ら連載終了を申し出たのである。
体調面はさておき、残り2つの要因は今後の週刊少年ジャンプでの活動に黄信号が灯る内容だ。しかし裏を返せば、これこそが冨樫先生の創作意欲の「要」ではないだろうか?

「原稿を全部一人で仕上げたい」 理想を実現した『レベルE』


『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博が同人誌で暴露した内容とは

翌95年にはSFマンガ『レベルE』で、まさかのジャンプ復帰。ジャンプでは異例の月イチ連載枠により、理想通りにアシスタントなし、「原稿を全部一人で仕上げる」形での執筆を実現している。

繊細で緻密な絵、巧みなストーリー展開の先に待つ予想外のオチ、ギャグとシリアスの絶妙な交差などなど、まさに狂気さえ感じる完成度に、“真の力を解放した”冨樫先生の凄さを垣間見ることができる傑作だ。

「自己満足のためのマンガ」だから面白い!?『HUNTER×HUNTER』


では、『HUNTER×HUNTER』はどうだろうか? 先がまったく読めないストーリー展開に、異常なまでの休載率。
筆者としては、創造主たる冨樫先生の気の向くままに描いている「自己満足のためのマンガ」としか思えないのである。だからこそ、面白さも格別なのだが……。
『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博が同人誌で暴露した内容とは

ちなみに、1巻の作者コメントにはこうある。
「もう弱音吐きません。逃げません。切れません。
と思います。多分。」
冨樫先生! 腰痛も大変でしょうが、なるべく連載が長く続くようホントお願いいたします……。
(バーグマン田形)