夏休みの終わりに溜め込んだ宿題をあわてて片付けた記憶は誰しもあるのではないか。誰か代わりにやってくれないだろうか、そんな夢のような企画を実現したテレビ番組が90年代に存在した。

『ウゴウゴルーが:なつデラックス』がそれである。

子供向け番組『ウゴウゴルーガ』


『ウゴウゴルーガ』は90年代初頭、平日朝に放送されていた子供向け番組として知られる。CGキャラクターが登場し、短いコーナーが連続する斬新な構成は幅広い世代の人気を獲得した。
『なつデラックス』は特別編として1993年8月28日、まさに夏休み最後の土曜日の夜に行われた1時間の生放送である。

「おしえてえらい人」藤子・F・不二雄も登場!


番組では「おしえてえらい人:宿題やります編」として、およそ50台のファックスを用い視聴者から「夏休みの宿題のわからないところ」を募り、各教科の専門家が回答する企画が行われた。
「おしえてえらい人」は『ウゴウゴルーガ』のコーナーのひとつ。研究者や文化人の話を一週間にわたって紹介するものである。学校の勉強ばかりでなく藤子・F・不二雄による「漫画の描き方」や、細野晴臣の「音楽と楽器の話」など豪華ゲストも登場した。


生放送に集ったスペシャリストは国語は作家の高橋源一郎、算数は数学者の難波完爾、理科は物理学者の江口徹、生物学者の石川統である。算数と理科を担当した3名の研究者はいずれも東京大学教授(肩書は当時)のインテリだ。さらに英語はアメリカ育ちの女優である喜多嶋舞、自由研究はコラムニストの泉麻人が担当した。
もうひとつ、「宿題が最後までできなかった子のために最高の言い訳を考える」担当としてコピーライターの糸井重里も登場した。

すべてがネタでナンセンスだった


番組では夏休みの宿題を片付けるために、さまざまなコーナーが用意された。CGキャラクターのプラネットちゃんによって、夏休み中の全国の各都市の天気予報を一気に紹介するコーナーがあったかと思えば、読書感想文用に世界の名作をCGアニメによって一週間にわたって紹介する「あさのぶんがく」が早送りで流された。
取り上げられた作品は、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」(フランス文学)、トルストイの「戦争と平和」(ロシア文学)といったもの。子どもがまず手に取る作品ではないだろう。

さらに語学のコーナーもあり、外国人タレントが登場し役立つ言葉を紹介した。ガーナ(アカン語)は「政治改革は年内に実現します」(当時、政権交代で誕生した細川首相の言葉。案の定実現できず)、スペイン語は「円が百円台に突入しました」(その後も円高傾向は止まらず95年には1ドル80円台に)、ミャンマー(ビルマ語)は「巨人の優勝は絶望的です」(この年、巨人の成績は首位ヤクルトに16ゲーム差をつけられ3位どまり)という時流を反映したものだ。これも覚えてどうなる、という言葉ばかりだ。


このようにすべてがネタでナンセンス。番組ではこれらのコーナーが数秒〜数分単位で連続して続いていく。何かに役立ちそうで実は何にもならない。ジャンクな情報が集積していくさまは、その後のネット社会を象徴するかのようだ。

『ウゴウゴルーガ』は1992年の10月にはじまり、1994年の3月に終了している。実際の放送期間はわずか1年半しかない。
それでもスタッフにとっては「すべてをやりつくした」状態であったという。『ウゴウゴルーガ』は90年代初頭を光速で駆け抜けた番組であった。
(下地直輝)

参考資料:『ウゴウゴルガおきらくごくらく15年!不完全復刻DVD BOX』(メディアファクトリー)(夏休み特番はディスク7に収録)

※イメージ画像はamazonよりカプセル ウゴウゴルーガ おきらくごくらくマスコット 全5種セット