髪の毛を触ってると、たまにだけど玉結びになってる毛が指に当たる。
もちろん玉結びにした覚えなんてないし、いつなったのかさえ分からない。

「妖精のいたずら」とか「小さいオッサンが結んでる」って言われることもあるけど、彼らと面識がない僕にとっては、不可解な現象でしかない。

どうして玉結びになるんだろう? 髪を切ってもらいながら、鏡越しに美容師(店長)へ聞いてみた。

「玉結びって、偶然なってしまうものなんですよ。例えば髪の毛を乾かしているとき、タオルでバサバサッと拭いてると、自然と絡まっちゃうことがあるんですね。他にも睡眠中に頭が動いて、枕と擦れた拍子になるなんてこともありますよ」

また、冬の時期は特に玉結びができやすいんだとか。
「冬は服を着たときの静電気で、髪の毛がバラバラになりやすいんですね。
なので、静電気が起こりやすい上着を着ると、毛先が絡まって玉結びになりやすいと思いますよ。もしかしたら、妖精の正体は静電気かもしれないですね」
ハサミを止めて、店長はニヤリとした。

ところで、どういった人がなりやすいんだろう?
「髪の長い女性に多く見られますね。あと髪が傷んでると、なりやすいみたいです。とはいっても、偶然にできるものなんで、あまり気にすることはないですよ」
ってことは予防策もない?
「そうですね。強いて挙げるなら、静電気が起こりにくい服を着るとかでしょうかね」

髪の毛は、爪と同じで健康のバロメーターって言われてる。
だから、不健康な生活を送ってると髪の毛は傷みがちになり、傷んだ髪は比較的玉結びになりやすくなるという。さっきもあった通り気にすることはないんだけど、もし急に玉結びが増えたなぁって感じたら、健康に気を遣った方がいいかもしれない。

そして店長は、最後にこんなことを言ってハサミを置いた。
「玉結びは、健康に気を遣いなさいっていう、妖精からのメッセージかもしれませんね」

店長はまた、ニヤリとした。
(イチカワ)