『タッチ』の浅倉南や『銀河鉄道999』のメーテル、『ルパンIII世』の峰不二子、『ドラえもん』のしずかちゃん、『うる星やつら』のラムちゃん、『キャンディキャンディ』などなど……。
オマケとして、女じゃない絶対的ヒロイン? 『ストップ!! ひばりくん!』もそうだろうか。

かつてのマンガやアニメには「絶対的なヒロイン」が存在したものだ。

もちろん『スラムダンク』や『ドラゴンボール』『北斗の拳』『キン肉マン』など、女性の存在感がやや希薄なマンガもあったものの、比較的近年では、絶対的ヒロインは『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイがいるくらいの気がする。
現在は、あれほど売れているマンガ『ワンピース』でも、ヒロインというと「ナミ? それとも?」と言う人が多いのではないか。
なぜ「絶対的ヒロイン」がいなくなったのだろうか。

マンガ好きの男性編集者は言う。
「『うる星やつら』でタイプ違いの女の子がたくさん登場したあたりが、原点ではないでしょうか。
ただ、『うる星~』の場合はどんなにたくさん女の子がいても、ラムが絶対的ヒロインでした。その後、『ラブひな』で、サエない男の主人公が、タイプ違いのいろんな女の子になぜかモテまくるフォーマットが完成した印象です。あとは、恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』がマンガの世界にも大きく影響したのではないかと思います」
また、女性マンガ編集者も言う。
「ゲームの影響は大きいと思います。実は『絶対的ヒロイン』がいなくなっているのと同時に、今は少女マンガや女性向けマンガの世界でも『絶対的ヒーロー』がいないというか、相手役が1人ではなくなっているんですよ。やはりいろんなタイプ別男子を取りそろえて、様々な願望が満たされる設定が主流になっています」

そういえば、主人公VSライバルの関係性でなく、「いろんなタイプ別男子を取り揃えて」いるマンガといえば、『スラムダンク』あたりがルーツの気もする。

女子人気が圧倒的に高かったのは、流川楓で、男子はミッチー派が多かった印象だが、5人というチームのバランス・関係性が絶妙なせいか、読むときの自分の年齢や境遇・心境などによっても好きなキャラが変わってくるという人は多いのではないだろうか。
ただし、いろんなタイプを取り揃えても、「キャラクター頼み」にならない1本しっかりと通ったストーリーがあるからこそ、絶対的ヒーロー(花道)が際立つということはあるのかも。

細分化した脇のキャラたちを輝かせるのも、やっぱり「絶対的ヒーロー・ヒロイン」のはず。彼ら彼女らが不在のマンガやアニメが増えているのは、やっぱり寂しい気もします。
(田幸和歌子)