
7月13日から3日間、ロンドン市内の展示会場オリンピアにてイギリス最大の日本文化イベント「ハイパージャパン」が開催された。そこでお盆に先駆けて行われたのが、イギリス人来場者を巻き込んだ「ハイパー盆踊り」。
踊り方はイギリス人が親しみやすいようシンプルに
イギリスでは日本人を除いた参加者のほとんどが盆踊りを知らない。そのため、まずは振り付けから教える。日本での盆踊りは中央にやぐらを設け、参加者がその周囲を回りながら輪になって踊る形式が主流だが、ハイパージャパンではステージをやぐら代わりに、まずステージ上で盆踊りナビゲーターが来場者に踊り方を教えた。
参加者がある程度踊れるようになったところで、皆でホール内で輪になる。そしてステージ上の盆踊りナビゲーターの音頭に合わせて回りながら踊るという流れだ。伴奏音楽には砂守岳央さんによる「東京音頭」のハイパー盆踊りリミックスが用意され、その上に津軽三味線の生演奏が重ねられた。

ハイパー盆踊りでは、振り付けもイギリス人が親しみやすいように工夫されている。本来、盆踊りは前進と後進を繰り返しながら踊るが、ハイパー盆踊りでは、初心者であるイギリス人が踊りやすいように、後方への足運びを省いた。囃子詞(はやしことば)も、従来の「ちょちょんがちょん」に加え、「ヨイヨイヨイ」の代わりに「ハイパー」の頭文字の「ハ」を掛け声にした「ハッ、ハッ、ハッ」を入れた。同時に入る両手を使った「ハ」の字をかたどった手ぶりが「ハ」の掛け声との一体感を演出する。
参加者の反応はどうだったのか。

イギリスで盆踊りを教えるコツは「月を見て!」
取材した最終日に盆踊りナビゲーターを務めたのが、ロンドン在住でイギリスでは「モッチー」の愛称で親しまれている演歌歌手・望月あかりさんだ。演歌は歌のみでなく語りが入るため、シンガーかつMCとして、今回のイベントでの盆踊りナビゲーターに指名された。
「皆、エネルギーに満ちあふれていて、オープンに恥ずかしがらずにトライしてくれた。国によっては自国の文化にプライドを強く持っていたり、シャイな国民性があったりなど、公の場での全体演技に前向きに取り組んでもらえない場合もある。イギリス人は異文化理解に対する意識が高く、イギリス、特に多文化都市ロンドンは、文化の違いによる障壁が低く、日本文化の受け入れ態勢が整っている」と、望月さんは今回のハイパー盆踊りの手応えを明かしてくれた。

一方で苦労もあった。「日本だと皆盆踊りを知っていてベテランを真似て踊るが、イギリスではほぼ全員初心者。たまに飛び跳ねたり、とんでもない動きをする人もいる。
細かいことは抜きにまずは楽しく踊ることが大切
とにかくハイパー盆踊りでは、盆踊りの深い意味は抜きにして、「楽曲に合わせてただ単に楽しく踊ってもらう」という点に主眼を置いた。受け身なライブパフォーマンスとは趣を異にして、「一緒にやりましょう」とお客さんを巻き込むということも、大切なポイントだそうだ。

「例えば、ジャズダンスやパラパラなどのように、盆踊りがイギリスで一つのカテゴリーになればと思っている。伝統を守りつつもシンプルにして、初めて盆踊りに触れる人でも簡単に歩み寄れるようにしたい。そのため今回は、細かいことはなるべく省いた」と望月さんは語る。
盆踊りはとにかく参加して楽しんだ者勝ち。 イギリスにおいても、そのうち日本の夏の風物詩である盆踊りの「和の輪」が広がる日が来るかもしれない。
(ケンディアナ・ジョーンズ)