お盆の帰省などで、東京駅を利用する人が増える時季。

ところで、いま、JR東京駅のエスカレーターの手すりに、等間隔で、大きな黄色い円が無数に描かれているのをご存じだろうか。


ブルー地に、目立つ黄色で大きく描かれた円には、「抗菌」の文字があり、視線の横を流れゆく手すりが「抗菌」「抗菌」「抗菌」と激しく謳うのは、ちょっとギョッとしてしまうほど。
また、円と円の間には、これまた大きな文字で
「手すりにおつかまりください」
とあるけれど……。

これっていつ、何のために始めたもの?
JR東日本・東京支社に聞いた。

「この抗菌マークは、全社的な施策で、今年1月24日に東京駅から始まったものです。現在は都内8駅で実施しています」

なぜ「抗菌」をこれほど謳うようになったかというと……。
「お客様のエスカレーターの転倒で、巻き込まれたときに、いちばん有効なのは、手すりにつかまっていただくことです。
でも、実際には『手すりが汚い』とか『手すりにはつかまりたくない』という声が多くありました。そこで、安心してつかまっていただくために、『抗菌』ということを表示するようになったのです」
ブルー地に大きな黄色い円というのも、「目立つように」という思惑から。

ところで、駅によって当然、差はあるだろうが、掃除担当者がエスカレーターの手すりの掃除をしている場面は、もともとよく見られたもの。
何か特別な「抗菌」をするようになったということ?
「いえ。お掃除自体はもともと各駅でやっているものですが、『汚い』という声があるので、抗菌したということをわかりやすく“表示”しようということになったんです」
つまり、手すりの清潔度が変わったわけではなく、「清潔であることを表示した」のが、この印というわけだ。

潔癖症の人はよく「電車の吊革につかまれない」と言うけれど、「抗菌」の文字が、事故防止対策だったとは。

見た目的にはもう少しなんとかならないものか……などと思ってしまうところもあるけれど、実際、エスカレーターの手すりにつかまっている人はごくわずか。「乗り物」という意識が低いこともあるだろうけど、エスカレーター事故も増えているし、安全面を考えたら、必要な手段ということなのでしょうか。
(田幸和歌子)