海部俊樹「中国とのつきあいで、原則は貫きました」
海部俊樹元首相と中国の出会いは、「対立」で始まった。ちょっとしたボタンの掛け違いだったのかもしれないが、政治家としての原則は譲れなかったという。「天安門事件」後に、日本の首相として初めて訪中した際には、犠牲者のために献花した。<br><br>【関連写真】<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0524&f=column_0524_002.shtml&pt=large" target="_blank">海部俊樹「日中は、互いに素直、正直になることが大切」</a>(2010/05/24)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0521&f=column_0521_004.shtml&pt=large" target="_blank">海部俊樹「環境問題で、中国に協力すると同時に努力求める」</a>(2010/05/21)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0520&f=column_0520_004.shtml&pt=large" target="_blank">海部俊樹「日中には双方が共感できる歴史がある。もっと語ろう」</a>(2010/05/20)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0422&f=column_0422_001.shtml&pt=large" target="_blank">海江田万里「70年代に訪中し、帰国後に夜学で中国語学んだ」</a>(2010/04/22)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0421&f=column_0421_001.shtml&pt=large" target="_blank">海江田万里「日中には違いが存在。けんかすることもある」</a>(2010/04/21)<br>"(サーチナ&CNSPHOTO) 画像(1枚)
 海部俊樹元首相と中国の出会いは、「対立」で始まった。ちょっとしたボタンの掛け違いだったのかもしれないが、政治家としての原則は譲れなかったという。
「天安門事件」後に、日本の首相として初めて訪中した際には、犠牲者のために献花した。これも、信念による行動だったという。


海部:中国については、いろいろと思い出がありますが、まず最初は「対立」でした。

――総理在任時代に、なにか問題が出たのですか。

海部:いや、それよりずっと前。1970年代のことです。
日中関係のために尽力されていた川崎秀二さんに、中国に行こうと、誘っていただいた。入国の手続きも仕事ぶりも、今とはずいぶん違いましてね。中国側は、ビザ発給にあたって、「原則」を認める署名をしてほしいと要求した。

 「原則」と言われても分からないと返事したら、内容は川崎さんに聞けと言うんですよ。でも、直接言ってくれなければ困る。こちらも無責任に署名はできない。
私にとっての原則ですからね。とうとう、中国には行けずじまいでした。

 後で聞いたら、平和や内政不干渉などで、そう問題ある内容ではない。言ってくれればよかったんだが、なぜか、教えてくれなかった。まあ、こちらもなまいきな若者だったんですな。まあ、僕だって、言うときには言うんですよ。


――その後は何度も訪中しているとのことですが、特に思い出に残っているのは?

 1991年の訪中です。1989年の天安門事件、中国で言う「六・四政治風波」ですね。あの事件で、日本の公務員は、中国に渡航できないことになっていた。もちろん、首相も含めてです。それが解除になり、中国に出かけた。つまり、事件後に日本の首相として初めて訪中したわけです。


 中国側とは、楊尚昆国家主席や李鵬首相とお話ししました。1989年の事件で、中国をいつまでも孤立させるのは、よくないとの考えだったのです。1990年に、テキサスのヒューストンで開催されたサミットでも、各国首脳に、そうお話ししました。

 訪中した際には、天安門広場に足を運び、犠牲者のために花を捧げました。まあ、自民党内から「余計なことをするな」とのお叱りもありましたが、私としての考えを示す必要はあると思いました。

――中国側は、認めたのですか。


 認めるもなにも、とにかく「行きたい」と言ったら、連れて行ってくれた。だから、まあ容認したんでしょうね。

 中国とは、うまくつきあわねばならない。ただし、日本の外交の基軸は日米関係です。体制や考え方が近いこともあり、対米関係、対EUでは比較的にスムーズに解決できることでも、日中では、それほど楽にいかないことがあります。この点が、中国にとって、ややおもしろくないかも知れませんね。
それでも、日中間に問題がでれば、解決せねばならない。そのためにも、互いに相手の立場にも配慮しつつ、素直になる必要があるのです。(編集担当:如月隼人 聞き手:有田直矢 サーチナ常務取締役)

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