4月から放送中のテレビアニメ「戦国コレクション」。戦国世界からやってきた戦国武将(全員が女の子)たちを中心に、基本、1話完結のオムニバス形式で物語は進むのですが……。

主人公の織田信長は、戦国世界に戻るため、他の武将が持つ秘宝を奪う旅に出るものの、徳川家康は人気アイドルになり、上杉謙信もモデルとして活躍。伊達政宗はヤクザに騙され刑務所暮らし。農村で居候中の豊臣秀吉は不思議なお米の国に迷い込み。武田信玄にいたっては、日本どころか地球でもなく、某国の宇宙ステーション内で、人工知能相手にバトル!
そんな自由過ぎる展開や、劇中に詰め込まれたマニアックな歴史ネタなどでも話題を集めてきた「戦コレ」。「エキレビ!」アニメ班(仮称)のたまごまごさんと僕も、猛プッシュしてきた作品です。
そして、最終回(26話)まで、あと2話となった今、後藤圭二監督と、脚本家チームでの対談が実現。
5人のシナリオライターの中から、雑破業さん、新井輝さん、金澤慎太郎さんに集まっていただけました。全世界の「戦コレ」ファンを(勝手に)代表して、作品の成り立ちから、気になる最終回の話題まで、いろいろと質問しまくってきましたよ。
「戦国コレクション」、どうして、こうなった!

――後藤監督が「戦国コレクション」の監督としてのオファーを受けた時点では、作品の内容やスタッフなどは、まったく決まってなかったのですか?
後藤 はい。普通に(制作会社の)ブレインズベースさんから、「この企画で、監督をお願いできませんか?」というお話が来たのですが。スタッフィングも、作品の内容も全然決まってはいなくて。原作はソーシャルゲームなんですが。
(ゲームに出てくる)カードの絵がいっぱい付いてる資料を頂いて、「これで……」と言われた感じです。
――原作ゲームは、たくさんのキャラクターがいるものの、ストーリーはほぼありません。
後藤 そうなんですよね。今までにやったことのない毛色の作品なので。そういう意味での不安はありつつも、やってみようと思いました。
――では、戦国武将が、現代の世界にやってきて、現代人の中で生活しているという基本設定は、どのような形で生まれたのですか?
雑破 このアイデアは、監督から出た感じですよね。

後藤 そうですね。他の「戦国●×」っていう作品は、比較的、戦国時代を舞台にしてるものが多かったので。その形にすると、同じような作品になってしまうと思って。戦国武将がこっちの世界に来たら、差別化というか、オリジナリティが出ると思ったんです。
雑破 僕ら3人は同じタイミングで(スタッフに)加わったんですけど。その時には、この設定はすでにありました。
あと、1本のストーリーがあるというよりは、主役は信長だけど、毎回、違う武将でテイストの違う方向のものを作っていこう、というのも決まってましたね。
――オムニバス形式にしたのは、どのような理由ですか?
後藤 オムニバスという形は、クライアントさんから提案があったような記憶があります。自分としては戦国武将が現代に来るとして、じゃあ、どうしようかって思ってたところに、その話が来て。あ、その方が作りやすいなと思ったので、それでいきましょうと。
――織田信長が主役なのも、早い段階で決まっていたのですか?
後藤 KONAMIさんから、ゲームの中で人気のあるカードがどれかという資料ももらったんですね。その資料によると、[小悪魔王]織田信長が一番人気のあるカードだったので、主役にしました。

――そういった基本設定が決まり、どのキャラを出して、どんなエピソードを描くか。という段階に来たところで、雑破さん、新井さん、金澤さんが合流されたのですね。
後藤 そこからは(3人に向かって)、書きたいのをどうぞ、みたいな(笑)。
雑破 まず最初は、ゲームの中で人気のあるキャラクターや、戦国武将といえば、この人だよねっていう著名なキャラをリストアップしていきました。僕が一応、信長係だったので。全26話の頭と真ん中とお尻で、ゆる~くですが(中心の)ストーリーを作る感じでは考えていて。
あとは監督の方から、この回はこういう雰囲気で、というモチーフを投げて頂いて。これに当てはまるのは、このキャラかなって、みんなで考えていった感じですね。
――では、作品全体の構成も、作業を進めながら、固めた形ですか?
後藤 そうですね。どちらかというと、1本書き上がったら、次を書いてもらうみたいな。行き当たりばったりと言ったら言葉は悪いんですけど。シリーズ構成的なものも、そんなには固めて無くて。信長が主役なので、節目節目のエピソードは雑破さんに書いて頂いたんですけど。それ以外は、最初に選んだキャラのリストを見ながら、「これ、まだ出てないから、そろそろ、出さなきゃいけないんじゃないですか」という感じで。そういう形だったから、武田信玄の登場が遅くなったんですよね。
――超メジャーな武将なのに、登場は21話と、遅かったですよね。
新井 雑破さんが3話で謙信の話を書いてたので、その絡みで信玄も出すのかなって思ってたら、そういうこともなくて(笑)。
雑破 あ~。
新井 20話も越えちゃったし、出さなきゃって感じだった気がします。
雑破 信玄は、後半の目玉だったってことで(笑)。誰が、どのキャラを書くかは、手を上げていった感じだったかな?
金澤 僕は塚原卜伝(5話のメインキャラ)を書きたいって言いましたが。自分の意思で選んだのは、たぶん僕だけじゃないですかね。
新井 家康(2話のメインキャラ)をアイドルにしたいというのは、(クライアントさんからの)注文であったような……。
金澤 あれは、ゲームのカードの説明文に「アイドル」って書かれていたからじゃないですか?
雑破 あ、そうそう。一応、ルールとしては、カードに書いてあるキャラクターの説明には則る方向で、というのはありました。家康の場合、ゲームのカードに「戦国アイドル」と書かれてるので、そこを膨らませて、現代のアイドルにするみたいな。
――そういったゲームの設定も生かされているんですね。僕は、ゲームを知らず、何の情報もないまま『戦国コレクション』を見はじめたのですが。1話が織田信長と現代の青年のボーイミーツガールもので、2話では徳川家康がアイドルデビュー。3話では上杉謙信と直江兼続が「ゆりゆり」していて、4話は伊達政宗が主役の女囚もの。5話は、怪しい男が塚原卜伝をやり玉に挙げ、戦国武将と刀の危険性を訴えかけるドキュメント風。1話1話の面白さだけでなく、そのバラエティ感にも惹きつけられました。
雑破 他のライターがやったことはやらないってのが、ルールみたいな感じでしたよね。
新井 そうですね。
――皆さんが集まってのシナリオ会議は、定期的に?
後藤 はい。プロデューサーたちも来て、週1回、集まってました。
――その度に、「あ~、あのネタ取られちゃった!」みたいなことが?
新井 でも、「そのジャンルやっちゃうんだ!」みたいなことは。なかったです。
金澤 ですかね。
雑破 う~ん。
――皆さん自由に、自分の書きたいネタを書けたわけですね。
新井 みんな趣味が違うので、あまり被らなかったんでしょう。
雑破 いやいや。君らは、好き勝手にやってるけどね(笑)。
――雑破さんは、まとめる係として配慮していたと。
金澤 僕らも、ちゃんと抑え気味でやりましたよ(笑)。
新井 そうそう。空気を読んでやってますよ(笑)。
雑破 え~そうかなあ(笑)。
新井 好きなようにやったのは、4話(伊達政宗の回)の女囚ものだけで。その後は、みんなもはっちゃけ始めたので、僕は守りに走りました。
――でも、4話が、皆さんのはっちゃけるきっかけには、なったのでは?
金澤 こんなことやって良いんだ、って空気にはなりましたよね。
――では、ここからは脚本家の皆さんに、ご自身の担当された回についてのお話を伺いたいのですが。特に苦労した回や、完成した映像を見て驚いた回など、印象的なエピソードを教えて下さい。
雑破 自分の色が一番出たのは、たぶん13話(杉谷善住坊の回)かなって思います。特に何かすごいことが起きる話ではないんですけどね。普通に作っちゃうと、何となく楽しい話だったよね、で終わるところを、キャラクターの描写とか、いろんなところでもう一押ししてもらって。良い出来上がりになったのかなと。あとは、やっぱり19話ですね。
――明智光秀がメインキャラの回ですね。20話とも連続した話で、クライマックスに向けても重要なエピソードでした。
雑破 あまり一本の筋を作らないという(「戦コレ」の)枠組みの中で、いかに筋を作るかっていう、けっこう無茶ぶりな制約のある中、なんとかひねり出したみたいな。脚本自体はけっこう面倒くさい話なんですけど、できあがったものは、だれることなく見られて。説明が分からないということもない。しかも、脚本の段階でも、すでにかなり詰め込んであるのに、映像でさらに盛ってあるという。
――ストーリー的にも、映像的にもすごく濃い回なのに、本筋とはまったく関係無いところで、黒猫が屋根の上を滑り落ちていったり……。
雑破 そうそう。そんなことまでしなくってもって。
後藤 色々と盛ってくれたのは、全部、コンテと演出の金子(伸吾)さんです。自分は何もしてなくて。尺の関係で、ちょっと引いたくらい。
――先ほど挙げて頂いた13話では、この回のメインキャラ杉谷善住坊や信長と親しくなる、アゲハという女の子が印象的でした。こういった現代側のオリジナルキャラを作る時、意識した事などはありますか?
雑破 まあ、アゲハの設定に関しては、僕の趣味なんですけど(笑)。構成的な意味合いで言えば、善住坊とアゲハとの関係が、信長と光秀の関係につながっていくというところもあります。あとは、ずっと「私が一番!」みたいな感じだった信長が、押される側に回るのも面白いだろうなと。
――信長が、ご飯を奢らされてますしね。
雑破 それに、「戦コレ」も原作のあるキャラものですから。自由にやっているように見えても、お預かりしてるキャラを、あまり好き放題にいじるわけにもいかないので。逆に、アニメオリジナルのキャラはいろいろとできるので。個性的なキャラをぶつける事で、メインの戦国武将が引き立つかなというのもありますね。
――新井さんと金澤さんも、戦国武将の扱いに関しては、気にしていましたか?
雑破 この人たちは、全然そんなことないです(笑)。
新井 たしかに、僕はいろいろと無茶をやろうとしました。
金澤 僕は、最初に加減が分からなくて怒られたので。後半は、わりと引いてますね。
雑破 引いてないよ!(笑)。
(丸本大輔)

(Part.2に続く)