いやあ、『キルラキル』第6話のセリフ。しびれるねぇ……。

ぼくはかつてあんなにかっこいい「猫舌」の表現を聞いたことがありません。
今度ぼくも使おう。

今回は四天王の一人、猿投山との闘いでした。
「おいおいどう考えても二つ星クラスじゃ流子に勝てねえだろ」というところまでインフレした、流子の強さ(まだ6話なのに!)。3話で皐月様と斬り合って互角だった時点で、てっぺんまで行っちゃってますし。
正直アホみたいに展開はやい。
はやすぎる。これ宇宙くらい行くんじゃないの。

しかし、流子はボコられます。やっぱまだ宇宙は遠いかー。
男女とも平等に、痛めつけられる時は徹底的にがモットーのキルラキル(ニコニコのスタッフコメントより)。
「殴られた回数ベスト1ヒロイン」を流子が手にするのは時間の問題のようです。

もう一位かも。

●戦いは、水面下でもがく白鳥のように
5話では、極制服を着ていない黄長瀬紬に負けたことで、「強さ」とは生命戦維だけではないことがはっきりしました。
これは願ったり叶ったり。
もちろん「神衣を着たら最強になるんだぜ!」っていう無双でもいいんです。ですが、それでは皐月様の支配下で浮かれている生徒達と何も変わらんわけですよ。一話で極制服盗んだ奴とか、四話のトラップ開発部部長とか。

そうじゃないでしょと。強くなるっていうのはもっと中身の問題だろうと。

それを体現するのが今回の猿投山渦(実家はコンニャク製造業)。
まずその前に「強さ」の権化として現時点で描かれている皐月様についてチェックしてみます。

流子と鮮血は、友人のように会話をし、喧嘩をし、仲良くなって共闘しています。
これは血を吸ったからだけではなく、鮮血がきちんと意志を持った知的生命体だから。
ただし流子にしか聞こえないし見えないというのは6話でも強調されています。
その割に神衣の強烈な意志がある場合は第三者にも感覚的に感じられたり(5話)、神衣のさぶいぼっぽいものがマコに見えたり(3話)と、完全に切り離された存在でもない。

それを踏まえた上での、神衣・純潔。
皐月様、三話で純潔を着て以来、日常でも流子同様に着ています。
部屋でくつろいでいる時は額縁に入れて保管しています。
一番気になるのは、放置していると純潔は暴れるということ。

これ変です。鮮血は少なくとも動いても他の人には見えないし、そもそも暴れることもない。
逃げようとしているのかどうかも、わからない。

また、あれだけ余裕で着こなしているように見えて、シャワーシーンで「流石に堪えるか……」と皐月様は体力を奪われている。
これ、三話の戦闘での変身のせいかと思ったのですが、四話・五話と話を挟んでいることを考えるといくらなんでも、体力を奪われすぎている。
考えられるのは、平常時でも純潔を着こなすのに体力がいるという可能性。

流子は鮮血を「着ている」けど、皐月様は純潔を「無理やり力で着こなしている」のかもしれません。

四話のトラップ開発部を考えると、生命戦維100%の服を着るだけなら誰でもできる。
ただしそれを自分のものにするため、流子の場合は服との信頼関係と覚悟が必要でした。
皐月様はそれすらもねじ伏せている。流子と違って「馴染んで」はいない。
見えていない部分の皐月様の努力家ぶりが、かいま見えます。

神衣や極制服の本来の用途は、着用者の能力を増幅させること。
着用者自体がなんらかの技術を持っていない場合、効力はありません。これがこの作品のキモ。
結局どんな服が出てこようとも、本人が強くならなければ意味は無いし、それを着こなすには強靭な意志や鍛錬が必要。
しかし鍛錬を積みまくった場合、服なんていらないじゃん、となる。
どうしようもなく矛盾した代物です。
これを知っている皐月様が、あえて極制服を量産し、部長(二つ星)を増やしているのはなぜか?

●これからはハードボイルドだ
猿投山の話に戻ります。
彼は登場時から、ザ・慢心みたいなキャラでした。
そりゃーまー三つ星極制服を着て、他に戦える相手は皐月様しかいない、という状態なら、慢心もしようというもの。
二話などの横暴な発言、図々しい態度、他キャラと比べて偉そうな見下した視線。うーんなんともはや「奴は四天王の中でも最弱……(byギャグマンガ日和)」というフラグ。
特に六話予告のネタっぷりでも、公式でそんな扱いなのが見て取れます。漂う噛ませ犬臭。

実際、慢心しまくった猿投山は、「剣の装」を着てもあっさり負けます。
沢山の大衆を集めているあたりの、慢心っぷりたるやですよ。
皐月様曰く「この戦いは見るまでもない」
修羅の道をくぐってきたであろう皐月様は、「強さ」についてはしっかりした目線をお持ちでございます。
むしろ、現時点では流子の戦い方よりも共感できると思う。
どう覚悟するか分かっている。慢心がない。

そこで、負けた猿投山は目を縫い付けるという暴挙に出ました。
目隠しでいいじゃん!とも思ったんですが、それじゃ覚悟じゃない。
潰しちゃわないのか、とも思ったんですが、「縫う」というのが、この作品の「衣装」へのオマージュのです。

もともと「天眼通」という、人間の予備動作を全て読み取って先手を取るのが、猿投山の特異能力でした。
それに頼った戦いをしていた彼は、負けた後で慢心だと悟り、目を縫った。全てを投げ捨てたに等しい。
能力増幅型の極制服は、それではどうなるのか?

視力を失い心眼を得る、というのは少年漫画王道のパワーアップの流れ。前例はたくさんある。あれとかあれとか。
でも「心眼」って結局何よって話です。
具体的に言えば「他の感覚が異常に優れて、目なんて見えなくても察知できる」ということ。とはいえ、目を縫っただけでそんなすぐに変わるもんじゃないです。何より極制服への影響が大きく変わる。

この作品では心眼→心眼通を、迫力で表現しました。
ギミック的には、何も描かれないんです。その代わり、圧倒的威圧感を描きました。
序盤の「剣の装」もまあ強かったのですが、あっさり負けることで、でくのぼう感が半端なし。
後半の「剣の装 改」は、変なギミック一切なし。どシンプルです。
ところが「こいつ勝てない……」感がすごい。やってることも「面胴小手!」の繰り返しだけです。なのに勝てる気がしない。

極制服に能力増幅させることが「強さ」ではない。
極制服を自分の一部として、自らを研鑽し、覚悟を決めることこそが「強さ」だ。

慢心多めな流子、見えない部分の努力を感じる皐月様と違う、なんか弱そうだった猿投山が「強さ」の表現に抜擢された。
今後物語は、紬のセリフなどから考えても「強さとはなにか」に大きくスポットが当たると思います。
噛ませ犬ポジションから、覚悟を決めた男へと進化した猿投山を倒せるのかどうか。
まだ覚悟の弱い流子の成長に、大きく関わりそうです。

最後のシーンの、「後ろを取ったつもりか」からの会話は、しびれますね。後ろじゃないの、最初笑ったけど、目の見えない猿投山とのやりとりとしては最高だよ。
こういうケレン味と見栄きりが、面白いんだキルラキルは。
「男らしさ」の権化のような猿投山を入り口に、流子と皐月様が突入する「ハードボイルド物」へと向かう、スタートラインの回でした。

●生命戦維の謎
今回またしても一気に謎が増えてきたので、整理します。
なんといっても、生命戦維。出てくるごとにわけわからなくなります。

・生命戦維は30%でも変身する
三つ星変身できるのかよ! しかも完全に質量とか無視した巨大フォルム。轟天号か。
流子や皐月様が露出の高い衣装でオーラをまとっていたのに対し、猿投山とかロボだよロボ。
もう生命戦維が何に変身しても、お、驚かないぞ……。少なくとも四天王全員変身できそうですね。
考えてみたら、第一話のボクシング部も、グローブ相当変形してますし、あれも変身といえないこともない。

・生命戦維は人間の力が超越すると耐え切れなくなる
これは新事実。30%の生命繊維の三つ星極制服は、着ている人物の力が超越すると、オーバーヒートして変身解除されてしまいます。
流子も変身解除したことがありましたが、それは血が足りなくなった場合や、針によって人間とのつながりが弱められた時なので、今回のケースとは別。
猿投山は生命戦維入れ替えの再縫製で、少々グレードアップしたに留まっていますが、裁縫部は50%極制服を作って研究中。
ただし50%極制服は普通の人間だったら飲み込まれます。100%生命戦維の神衣なんて、着られるのは流子と皐月様だけ。
果たして人間を越えられるのか、猿投山。

・生命戦維極制服、量産の謎
裁縫部、ちょいちょい出てきてその危険さを見せています。裁縫部部長の伊織糸郎はかなり重要人物になりつつあります。
こいつ、いつか重要な秘密知っちゃって消されやしないか?
生命戦維は、やはり外部から輸入(?)しているものなのが明らかになりました。どこから?どういうルートで?

伊織「部長の粗製濫造は質の低下を招く可能性があるのは事実だからな。皐月様はそれを憂慮されていた」
犬牟田「だがそれを踏まえても部長を増やす必要があると考えられた纏流子の出現で、局面が大きく動きだしたということだな」

部長の粗製濫造、って表現はちょっと予想の範疇外。二つ星極制服じゃなくて、部長なんだ。
問題は「局面が大きく動き出した」というセリフ。
流子はお父さんの秘密を知ればそれでいいので、皐月様の野望に興味がありません。
ところが皐月様はえらく流子の動きに興味を示しています。
なんの局面かわかりませんが、とりあえず一手進めようとしているのは事実。皐月様は基本的に理論で動く人間なので、意味は絶対あるはず。
考えられるのは、流子と戦わせる相手を増やして、流子を強制的に叩き上げて強くしようとしている、という流れ。わざと二つ星を負けさせている。
もう一つは、さらなる強化極制服の生産。支配への道としてはこちらのほうが考えやすいのですが、粗製濫造とも言っているので、ちょっと怪しいところです。
「命拾いしたな」という台詞や、四天王に「しばらく流子に対しては様子を見ていろ」と命令を出していたのも合わせて、ここは謎です。

・鬼龍院の母
ついに出ました、鬼龍院皐月様のお母さん。
神衣・純潔=花嫁衣裳に袖を通したと聞いて電話をしてきました。お母さん生きてたかー。
もともと純潔を着ることを固く禁じていた母親ですが、電話の様子だけみると「予定通り」と言わんばかりです。
母親はかなりゴージャスな服装に身を包み、大きな変な建物にいます。まあ本能字学園も変だけど。
純潔を持ちだした理由を説明しに直接会いに行き、許諾はもらった様子。
ってことは会いにいける距離には一応いるんですね。
建物の壁に書かれた文字はREVOCS。うーん、何語でしょう……。
とにかくラスボスは皐月様ではないというのは間違いなさそうです。
そもそも「ラスボス」なんているのか? 流子と皐月様はどこに向かっているのか、すこーしずつ、すこーしずつ見えてきました。
お父様はどうしたのかは、まだ不明です。

●今週の昭和
パロディっぽさも大分減って、『キルラキル』らしさが随所に出てきたため、昭和臭だなーというのは大分減りました。
けれども、やはり軸には昭和演出が眠っています。

・4:3の回想シーン
このアニメでの回想シーンは16:9ではなく4:3。よく使われるのが、映画的に上下に黒を入れる演出なのを考えると、あえて昔のテレビ比率にしているのが時代をよく表しています。
地デジになってハイビジョンが当たり前になって……あっという間ですね。
にしても3年間で、いかにもな不良番長中学生から、スタイリッシュ高校生に変わりすぎです何もかも。
3年前に四天王を集めていた皐月様。順番は蛇崩、蟇郡、犬牟田、猿投山の順です。
ロンゲの蟇郡……。

・「気分次第で責めないで」
サブタイは、1978年サザンオールスターズのシングル「気分しだいで責めないで」。
その前が「勝手にシンドバッド」、次が「いとしのエリー」なので、まあ渋いとこついてきたなー。
色々な事情でサザンの曲でも、あまり演奏されない曲です。

・「憎みきれないろくでなし」
第七話のサブタイ「憎みきれないろくでなし」は沢田研二1977年のシングル。
作詞は阿久悠……あれ!? また阿久悠チョイスに戻った!?
なんで阿久悠の曲多いんだろう?
マコが重要な回になりそうですが、瞬間に出てくる部長たちのひどさには目を見張るものがあります。

というか、今回流子が負けたのはマコが出てこなかったからだとぼくは思っております。
やっぱマコいないとねー。
今回出番少ないので、次回に大いに期待したい!

(たまごまご)