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山中教授がノーベル賞委員会に怒られた理由『ノーベル賞の舞台裏』

2017年12月10日 11時00分 ライター情報:近藤正高
きょう12月10日は、ダイナマイトを発明したスウェーデンの化学者・実業家のアルフレド・ノーベルの命日だ。ノーベルの遺言により、その遺産を基金として設立されたノーベル賞の授賞式は、毎年この日にスウェーデンのストックホルム(物理学・化学・生理学医学・文学・経済学の各賞)とノルウェーのオスロ(平和賞)で行われている。

今年のノーベル賞のうち文学賞には、イギリスの作家カズオ・イシグロが選ばれた。イシグロのノーベル賞授賞をめぐっては、「日本出身の作家としては川端康成、大江健三郎に続く3人目の授賞」とする報道も目につく。こうした扱いに対しては、イシグロはあくまで英語で作品を発表しているイギリス人作家だと否定する意見も少なくない。同様の議論は、南部陽一郎や中村修二らアメリカ国籍を得たあとで物理学賞に選ばれた人々に関しても起こった。

ただ、受賞者の国籍がどこであれ、それについてことさらにこだわることは、ノーベルの「賞を与えるにあたっては、候補の国籍が考慮されてはならない」との遺言に反する。これは、ノーベル財団および授賞者の選考にあたるノーベル賞委員会に現在にいたるまで脈々と受け継がれている精神だ。
共同通信ロンドン支局取材班編『ノーベル賞の舞台裏』(ちくま新書)。谷崎潤一郎や三島由紀夫、あるいは岸信介や吉田茂など過去にノーベル賞候補にあがった日本人も何人かとりあげられている。毎年、授賞が取りざたされている村上春樹についても一部選考委員に評価を訊いていて、これがまた興味深い

山中教授の発言に激怒したノーベル賞委員会


ノーベル賞関係者が、いかにノーベルの遺志を守ることに努めているか。最近刊行された『ノーベル賞の舞台裏』(共同通信ロンドン支局取材班編、ちくま新書)では、ある外交筋の話として、京大教授の山中伸弥が2012年にノーベル生理学医学賞授賞の一報を受けた際の記者会見での発言に、ノーベル賞委員会が激怒したという話が紹介されている。

山中はこの会見の冒頭、「日本、日の丸の支援がなければ、こんなに素晴らしい賞を受賞できなかった。まさに日本が受賞した賞」と発言していた。しかし、委員会はこれに怒り、「あんな発言は絶対にしてはいけない」と異例の警告を発したという。その理由について本書では次のように説明されている。

《委員会側の見方に立てば、山中の日本政府への謝辞は、受賞者の功績と国家を混同したもの。ひいては「ノーベル賞は日本という国を意識して受賞者を選んだ」という批判につながりかねない。特に自然科学系のノーベル賞にそうした政治性が入り込む余地はないはずだが、アルフレド・ノーベルの精神を汚す可能性が生まれること自体を彼らは嫌悪している》

ノーベル賞関係者はこの点に関して徹底しており、ほかにも、受賞者を指す際に勝者や獲得者を意味する者を意味する「WINNER」という言葉が使われることを極端に嫌い、報道関係者がうっかり口にしようものなら、「LAUREATE」(栄誉や栄冠にふさわしい人物の意)と言い直されるという。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

コメント 16

  • 匿名さん 通報

    先行側の思惑はどうあれ、山中教授の発言てフラットな心で聞けば、「自分一人の力だけではない、周り全ての支えがあってこそ」の謙虚な思いだとシンプルに解釈できるよね?よね?

    49
  • 匿名さん 通報

    「ノーベル賞は国家に授与したわけじゃない」と委員会は山中教授を怒ったが笑わせる。スウェーデンがなぜ、ノーベル賞ランキング世界4位なんだ。自国に有利に授与しているじゃないかW

    38
  • 匿名さん 通報

    「賞を与えるにあたっては、候補の国籍が考慮されてはならない」…それなら日本の原爆被爆に関する話では取れないし。第九条も取れない話になる。わかって立候補、他薦を受けてるのか?

    24
  • 匿名さん 通報

    国がメダル数を競うものではないって定めたオリンピック憲章をどの国も守ろうとしないのと一緒

    20
  • 匿名さん 通報

    お花畑脳の特徴をよく表してますね。

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