第4週「私がみつけます!」 第22回 10月25日(木)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」22話。鈴と萬平、どっちが家長か問題勃発
イラストと文/木俣冬

22話のあらすじ


兵庫県上郡の黒竹村に疎開して一ヶ月が経った福子(安藤サクラ)、鈴(松坂慶子)、萬平(長谷川博己)。
萬平は散歩の途中、河で魚を捕っている子どもたちに出会い、魚を一気に大量に捕る方法を思いつく。

家長問題


疎開から一ヶ月経過ということは、昭和20年の4月。あとで、克子(松下奈緒)が菜の花畑で福子からの手紙を読んでいる場面が出てくる(松下奈緒、ヒロインオーラ)。
戦争中だが季節は穏やかな春。
山あいの自然描写が清々しく、子どももたくさん出て来て、ほのぼのする。陽だまりで居眠りしている鈴さんも。

“家長”が萬平か鈴かと揉めるところが面白い。
21話では、ふたりは福子を取り合っているふうだったが、22話では家長争い(萬平はこだわってなさそうだが)。
ふつうなら、男性が家長となるところ(福子はそう思っている)、これまで女ながら今井家を守って来た鈴は譲らない。

もしかして、今のところ萬平に子どもができないことも鈴を頑なにさせる原因かもしれない。なにしろ大事なのは家であり、跡継ぎをつくることが人間の当然の義務と思われていた時代だから。いまの萬平には家長として心許ないと鈴は判断しているのかも。

たいてい跡継ぎができないことは女性に問題があるように描かれるところ、「まんぷく」では男性の問題であることを描いているところが特徴的だ。以前、大河ドラマっぽいところが感じられるとレビューに書いたが、子どもができないけど夫婦うまくやってる大河ドラマ「篤姫」的な印象も受ける。

どうにも相性がよくなさそうな鈴と萬平だが、萬平が獲ってきた川魚を食べながら、塩だ、醤油だ、味噌だと言っているところはとても楽しそう。

美味しい食べ物をはさむと人間、平和になるというメッセージ性も感じ取れる場面である。

萬平さん、大活躍


家ではすることなく、休め休めと言われる萬平が、散歩に出て自然に触れ合っていると、河で子どもたちが魚捕りをしていた。
なかなか捕まらない様子を見て、萬平が一挙に捕る方法を思いつく。
にやりとする眼鏡の目元のアップは、「あさが来た」の宜ちゃん(吉岡里帆)みたいにキラーンと反射はしないが、ちょっと漫画ぽい。

いろんな道具を集めて、電気を河に流して、魚を捕るシステムを作り上げ、みごとに大漁。子どもたちにもすっかり人気者に。この時の劇伴が世良登場でよくかかるジャズ調のやつでこれがまた気分を盛り上げる。

萬平さんがこんなふうにこれからいろんな発明をしていくのだなと思うとワクワクする。
萬平さんの見た目は背の高いのび太だが、やることはドラえもん。ひとりでふたり分のキャラを体現している万能感。
。。。
と思ったら、萬平キテレツ説がツイッターで話題になっていた。そっちのほうがしっくり来る。

「子どもでもあるまいしこんなにいっぺんに捕まえなくても」とぶつくさ言いながら大漁の魚を干物にする
鈴に、「僕はね、食うことへの執着心が強いんですよ」という萬平。憲兵に拷問にあった時のトラウマを感じた福子は「お魚屋さんになった気分で楽しい」とフォローする。

インスタントラーメン発明の布石を噛んで含めるように描き続ける。晴れてインスタントラーメンを発明するのは半年後なのだろうか・・・。
そうだとしたら気が遠くなるが、どんどんいろんなものを発明していくなら飽きないで見られそう。

萬平さん、怒られる


毎朝、Twitterトレンドにランクインしている「萬平さん」。完全にキャラ化、定着した感じだ。それだけモデルの安藤百福がすごく魅力的な人なんだと思う。そしてそれを噛み砕いてキャラ化した福田靖の脚本と、それを明確に演じる長谷川博己の力も。
萬平さんはデキるところだけでなく、河に電気流して魚を捕ったことを役場の人に怒られるが何が悪いのかと開き直る頑固さを発揮する。
やぶへびで、家に電気を無断に引いたこともバレて咎められるという、わかりやすいドタバタの流れに。

河に電気の件は素直に謝る鈴も、家に電気に関しては見逃してほしいと言うちゃっかりさ。
基本、仲良くないが、何かあると結束する、萬平と鈴のコンビは「必殺仕事人」の婿殿・中村主水(藤田まこと)と姑・せん(菅井きん)以来の名コンビになるのではないだろうか。このまま、子どものいない夫婦を描いても面白そうだが、そうではないようだ。モデルにも子どもはいるし、少子化問題対策もあるから(あるのか?)子どもを描かないわけにはいかないだろう。もっともそんなことをレビューで心配してもせんない話。ところで、嫁はりつ(白木万理)という名前だった。せんとりつで旋律。律〜〜(「半分、青い。」より)。

安藤サクラが素敵なのは、家事のシーンでちょっと汗をぬぐうなどして単調にならないようにしていること。
こういうところで生活感出すのが巧いのは亡くなった樹木希林である。
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝ドラ「べっぴんさん」もBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
こちらも安達もじり演出週 「べっぴんさん」第22話レビューはコチラ