「働くこと」をテーマにしたテレ東のドラマ枠「ドラマBiz」第3弾『ハラスメントゲーム』(テレビ東京・月曜22:00〜)第6話「被害者が加害者になる時」。

今回の案件は「リストラハラスメント」。


リストラ対象者に対して嫌がらせをしたり、不当な配置転換をしたりして、自主退職に追い詰める行為。

そもそも、嫌がられないリストラなんてあり得るのかという話なのだが……。
「ハラスメントゲーム」元上司にリストラを言い渡す気持ち…リストラは辞めさせる方も傷付ける6話
イラストと文/北村ヂン

恨まれずにリストラなんてできるか!


社長に大規模なリストラを命じられた人事部長の小泉光一(石井正則)から、リストラに応じない社員を「リスハラ」にならずに退職させられるよう協力して欲しいと頼まれたコンプライアンス室。

特にモメそうなのが営業戦略部課長・浅村裕也(杉本哲太)。

経費ばかり使っているわりに仕事に結びついていないことからリストラ候補となっているのだが、かつて上司だったという関係性もあり、辞めろとは言いづらいのだという。

職員の大半が外国人で、英語がしゃべれないと仕事にならない関連会社「マルオー物流」に出向させることによって自主退職をうながしたい考えだが、浅村からは「正当な理由なく出向させたらリスハラだよ」と返されてしまう。

個人の問題というよりは、会社の都合に振り回されて「ハラスメント」認定されてしまう社員の姿がたびたび描かれてきた本作だが、今回のリストラ問題はその最たるものだろう。


辞めさせる方も、辞めさせられる方も傷つくリストラには反対というスタンスのコンプライアンス室室長・秋津渉(唐沢寿明)は、丸尾社長(滝藤賢一)にリストラの再考を進言するが受け入れられず。

仕方なくリストラに協力することにし、自らが地方に飛ばされた時の体験談を語った。

「どんなに気をつけたってリストラは相手を傷付ける、どうがんばったところで尊厳なんて守れないよ。だってクビにするんだから」
「リストラも恨む相手がいないと耐えられるもんじゃないよな」

リスハラで訴えられたり、無用な恨みを買ったりするのでは……と心配していた小泉に「恨まれずにリストラなんてできるか!」と覚悟を迫るとともに、リストラを経営戦略の一環としてしか考えていない社長や役員たちへの批判的な気持ちも込められた発言だ。

これを受けた小泉は、浅村をリストラ候補として推したのは自分だと告白。

「ひと昔もふた昔も前のやり方にこだわって成果の出せない社員はいらない。
人事部長として冷静にそう判断しました」
「浅村先輩、私を恨んで下さい」

対する浅村は、実は留学経験があり英語がペラペラだと明かす。

世話になった先輩をリストラしなくてはならないという辛い立場にある小泉と、自分のやり方がもう通用しないと薄々感じつつも素直に受け入れられず、小泉に当たってしまう浅村。

そんなふたりが、腹を割って話し合うことで問題を解決。浅村は語学力を活かし「マルオー物流」に出向してがんばっていくというキレイなオチがついた。

丸尾社長と脇田常務、どっちが味方なのか?


社員たちがお互いに傷付けあいながらもキレイに解決した「リスハラ」問題。

しかし役員たちからすると「それじゃリストラにならないじゃないか」ということになる。

「マルオー物流」でがんばっているという浅村からのメールを見て微笑んだ小泉だが、まだまだ残っているリストラ候補のリストに目を落とすと真顔に。
リストラ問題自体はぜーんぜん解決していないのだ。

「50代以上の管理職50名のリストラは、年間6億円の債権回収に値する」と言う社長たちに対し秋津は、年間4億円という役員の報酬を50%返納すれば、5年で10億円になると主張。

「身をきる覚悟はございませんか?」

当然、役員たちは激怒。

時期的に、意図してのものではないだろうが、数万人単位のリストラを断行しつつ、自分は巨額の報酬をもらっていたゴーン(元)社長の件も頭に浮かんでしまう。

「才能ある人材は豊富にいます。役員の方々以上に真摯に働いています」

ちょいと挑発するような発言をして、パワハラ問題でもめている取締役・水谷(佐野史郎)をブチギレさせて再び暴言をゲット(隠し録音でもしているのかも知れない)。


丸尾社長からの「水谷をパワハラで訴えろ」という命令を相変わらず忠実に守っているのかと思いきや、その丸尾社長に対しても反旗をひるがえす。

よっぽどリストラの件が腹に据えかねたのか、それとも別の思惑があるのか、いきなりみんなに噛みつきまくる狂犬状態となった秋津。

かと思えば、復讐するべきラスボスであるはずの脇田常務(高嶋政宏)とはリストラ反対という立場で共感する面もあったりして、丸尾社長と脇田常務、どちらも敵か味方か分からなくなってきた。

当初から、なにかとハラスメントの原因を作っていた丸尾社長。秋津が素直に従い続けているとは思っていなかったが、まさかの秋津と脇田常務が手を組んで丸尾社長を撃退……なんてパターンもあり得るのだろうか。

分かりやすくセクハラの罠にハマる秋津


会社の上層部全体に対し宣戦布告したような形となった秋津だったが、秋津自身にも危機が迫る。


エロい・アヤシイでお馴染みの役員秘書・小松美那子(市川由衣)から、水谷のパワハラについて相談があると呼び出される。

待ち合わせ場所が暗くて雰囲気のいいバーということで、イヤーな予感しかなかったが、予想通り罠にハメられ、秋津がセクハラで訴えられることに。これは美那子が自主的にやっているのか、誰かからの指示なのか?

「ドラマBiz」枠はこれまで、すべて第8話で最終回となっていたので、そろそろドラマも終盤に突入かと思うが、ここに来てケンカを売ったり訴えたり、訴えられたりと大混戦模様に。

ここのところ、秋津が「社員の気持ちを第一に考えるハートフルな人」的ないい人になりすぎているのが気になるが……。もっと初期・山岡さんっぽいクズ感あふれる人じゃなかったっけ?

とりあえず、上がこんなにゴタゴタしている会社で働く社員たちが気の毒!(日産も!)
(イラストと文/北村ヂン)

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『ハラスメントゲーム』(テレビ東京)
原作:井上由美子『ハラスメントゲーム』(河出書房新社刊)
脚本:井上由美子
演出:西浦正記、関野宗紀、楢木野礼
主題歌:コブクロ「風をみつめて」(ワーナーミュージック・ジャパン)
音楽:エバン・コール
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:田淵俊彦(テレビ東京)、山鹿達也(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作協力:フジクリエイティブコーポレーション
製作著作:テレビ東京