「ニコニコ超会議」に登場されるクリエーターさんへの突撃インタビュー第3弾をお届けします。最低限の道具だけを持ち、水と食料は現地調達で2泊3日の自給自足生活を送る。
その様子を自ら撮影し、ニコニコ動画にアップしているのがカメ五郎ささんだ。「多摩川編」「西丹沢編」「新島編」と3シリーズ計60本余りの作品にはファンも多く、4月29日には「ニコニコ超会議」の「超クリエイターズサミット」に参加することも決定。それに先立ってインタビューを行い、自給自足の楽しさや動画へのこだわりを聞いた。


「図鑑に載っていないものは、食べてテストします」


ーーなぜ自給自足なんですか?
カメ五郎 単純に、僕がそんな動画を見てみたかったんです。ディスカバリーチャンネルのサバイバル番組が昔から大好きで、それを素人がやってみたらどうなるのか興味もあって。でもニコニコ動画をいくら探してもなかったので、だったら自分でやってみようと思ったのがきっかけですね。

ーーサバイバルの経験はあったんですか?
カメ五郎 多少はありました。母の実家が山形で、山菜がとても豊富な地域なんです。だから食べられる野草について教えられていましたし、小さな頃から山で遊ぶことも多かったですね。物心ついた頃には自然に興味があったので、自分でいろいろ勉強もしました。山に入るたびに「こんなものが食べれるのか」「身近にあるコレがこんな道具になるのか」という新しい発見があって、その楽しさをみなさんに知ってほしいという思いもありましたね。
ーー初めて自給自足で一泊したのは?
カメ五郎 高校生の頃ですね。
駅のベンチで。
ーーなぜ駅で?
カメ五郎 終電がなくなったからです。
ーーそういう理由ですか(笑)。
カメ五郎 でもそれで「意外と大丈夫だな」って思ったんですよ。じゃぁ実際に山に入ってみて、食料や道具を減らしてチャレンジしたら楽しいかなと。
ーーでは多少は自給自足生活の経験があったんですね。

カメ五郎 そうですね、でもキャンプの範疇ですよ。本格的には、動画を撮るようになってからです。
ーー多摩川編でヘビを捕まえた時、「初めて食べるなぁ」って言いながらすごく手際よく捌いてますよね。あれ、練習とかしていたんですか?
カメ五郎 いや、ディスカバリーチャンネルでやっていたのを観ただけですね。「こんなに簡単に皮剥げるの?」と思ってたんですが。
ーー実際、簡単でした?
カメ五郎 靴下を脱ぐ感じで、スルっと。

ーー食べれるもの、食べれないものの判断はどのようにして?
カメ五郎 だいたいは本などで調べますが、すべて載っているわけではないので、分からなかったら実際に食べてテストします。
ーー食べちゃうんですか!? でも多摩川編でスッポンの血を飲んで、中毒を起こしたりもしましたよね。本当に危なかったことはないんですか?
カメ五郎 いろいろあるんですが、いちばん深刻だったのは新島編での水不足です。実は、撮影後におしっこをしたら赤かったんです。東京に戻って調べてみると、水分不足が限界を超えると筋肉の色素が抜けて尿に混ざるそうで、かなり危険な状態だったみたいです。無知は罪だなと思い知りました。



「カエルを捌くシーンも、あえてカットはしない」


ーー今まで食べたものでおいしかったのはなんですか?
カメ五郎 カエルですね。高級食材とされる国もあるそうで、実際かなりおいしかったです。文明社会にもっとも近い味でしたね。
ーー鶏肉みたいって聞いたことあります。
カメ五郎 近いですね。でももっと柔らかくて、臭みもあまりなかったですよ。

ーー逆にマズかったのは?
カメ五郎 クワガタの幼虫ですね。体に残っている排泄物の苦みが強くて。本当はそれを抜く方法もあるんですが、時間がかかるし、味は悪くても栄養は変わらないのでそのまま食べたら、想像以上にマズくてびっくりしました。
ーーバッタをカリカリに焼いていたのはおいしそうでしたね。今度勇気を出して食べてみようかとちょっと思ったんですけど……大丈夫ですかね?
カメ五郎 全然平気ですよ! もし不安だったら、捕まえて3日くらいエサを与えずにいると排泄物がすべて出るので、もっとおいしくなります。
ーーなるほど! ちょっとやってみようかな。ちなみにニコ動は昔からよく見ていたんですか?
カメ五郎 まだβだったころから大好きでした。でも「自然」というタグにあるのが、全然関係ない動画ばかりだったんです。本当に自然に関連したものが埋もれているのが残念で、そのタグを復活させたいという気持ちもありましたね。あとは「愛すべきバカ」のタグも好きです。
ーーあ〜、面白いですよね!
カメ五郎 下らないけどテレビでは観れない面白さで、個人投稿の魅力ですよね。それは僕も意識していることで、カエルやヘビを捌くシーンもあえてカットはしていなんです。テレビだと「グロテスクだから放送できない」となるんだろうけど、スーパーに並んでいる食肉はすべてこの過程を経ているわけですから、ちゃんと知ってほしいと思いますね。


「どんどんマネして頂いて構いません」


ーーいろいろ危険な経験もされてますけど、恐怖心はないんですか?
カメ五郎 いや、怖いですよ。でも好奇心のほうが勝ってしまうんです。この考え方は危険なので本当はいけないんですが、でもやっぱり、限界を感じるたびに「もっと頑張ったらどうなるんだろう」と興味が湧いてしまって。
ーーご家族やお友達はなんて言ってますか?
カメ五郎 無理はしないようにと。家族は「やりたいようにやってくれ」とは言ってますが、やっぱり本心では辞めてほしいんだと思います。
ーー2010年に「もっと評価されるべき動画」に取り上げられたことがきっかけで注目を浴びますよね。その時はどんな心境でした?
カメ五郎 すごくうれしかったですけど、急に人が増えてプレッシャーも感じるようになりました。だからもっと面白い動画にしたいと思ったんですが、相手は自然なので、行ってみないとどうなるか分からない。それが難しいところですね。
ーー危険を冒したりプレッシャーを感じても、ニコ動にアップし続けているモチベーションは?
カメ五郎 興味をもってくれる人がひとりでも増えてほしいというだけですね。
ーーそれは、もっとみんなに自然を好きになってほしいという?
カメ五郎 そうでうすね。ただ、いきなり自給自足はハードルが高いと感じる方が多いと思うんです。だから最初は「なんでこんなバカなことやってるの?」って感想でもいいです。僕の動画を観てもらったことで、ちょっと近所の野原に行ってみようかな、と思ってもらえればそれでいい。エンターテインメントとして楽しんでもらえて、少しでもアウトドアライフに役立つ知識があって、外に出るきっかけになればうれしいです。僕自身もユーザーさんにアドバイスを頂くことがたくさんありますし、そうやってみなさんと知識を共有していきたいですね。
ーー過去にカメ五郎さんの動画を見て、マネされた方もいるんですか?
カメ五郎 結構いらっしゃるみたいですね。「僕も同じことやっていいですか?」って連絡を頂くこともあります。ニコ動の他のジャンルで同じことをやると「パクりだ!」って叩かれることもありますけど、僕はみなさんにも実践してほしくて動画をあげてるので、どんどんマネして頂いて構いません。それに僕の動画は自然相手なので、同じフィールドで同じ装備で望んでも、日によって環境がまったく違いますから。
ーーこれからチャレンジしようと思っている人に、アドバイスはありますか?
カメ五郎 さっきも言いましたが、水だけは確保できる環境がないと危ないです。逆に言えば、水があれば最悪の結果は免れます。みなさんに実践してほしいとは思うのですが、ケガや病気に繋がってしまっては大変なので、それだけは気をつけて下さい。危険を感じたらすぐに下山することも大切です。


「カメ五郎」の名前の由来は?


ーー今後はもっと環境の厳しい場所で自給自足生活をする予定なんですか?
カメ五郎 まだ悩んでますね。厳しいところに行く選択もあるし、また多摩川のような近場で装備を減らして望むのもレベルが上がりますし。
ーー「今夜野宿になりまして」というテレビ番組も始まるんですよね。
カメ五郎 はい、僕は演者さんに指南しながら、付き添う役ですね。
ーー教える立場に立つのはいかがですか?
カメ五郎 昨日最初の収録をしてきたんですが、やっぱり自分ひとりでやるのとは訳が違いますよね。気を使うし、責任も持たないといけない。僕は会話もあまり得意ではないので、ひとりの時がどれだけ気楽だったかと思い知りました。
ーー「超クリエイターズサミット」では300人ほどのお客さんが入るらしいですよ。
カメ五郎 そんな舞台に立つのは、小学生の作品コンクール以来ですよ。当日は撮影機材やサバイバルの道具を持っていきますので、僕が普段どのような自給自足をしているかをお話する予定です。緊張するんでしょうけど、最低限、伝えたいことはちゃんと言えればいいなと思っています。
ーーちなみに最後になりましたが、カメ五郎という名前の由来は?
カメ五郎 中学生の頃に飼っていたカメの名前なんです。僕が19歳の時に死んでしまったんですが、楽しい時間を一緒に過ごしたので、感謝の気持ちを込めて襲名しました。
ーー「五郎」という名前だったんですか?
カメ五郎 いや、「カメ五郎」です。正式名称は「あっと驚くカメ五郎」なんですが。
ーーなぜその名前に!?
カメ五郎 「アッと驚く為五郎」を拝借しまして、なんとなくです。……なぜだったんでしょうね(笑)。
(田島太陽)