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「仏は世界2位の漫画市場だが食える人はほとんどいない」パリ在住漫画家に聞く

2018年2月16日 08時00分

ライター情報:加藤亨延


フランスは日本に次ぐ世界2位の漫画市場を持つ国だ。2017年は1500万冊の漫画が流通。日本文化への関心も高く、日本の漫画作品の多くが国内で翻訳されている。そのフランスで漫画を描くということは、どういうことなのか? フランス在住の漫画家・カタヒラヨシミさんにフランスの漫画家事情をうかがった。

フランスで流通するほとんどが日本の作品


――フランスではどのような漫画が主流なのでしょうか? 
フランス国内で流通するほとんどの作品が海外から輸入されたものです。その大部分を占めるのが日本、そして韓国と中国が、日本と比べれば圧倒的に数は少ないですが続きます。フランスのオリジナル作品はごくわずかですね。

――フランスの漫画はなぜ割合が少ないのですか? 
率直にいうと、面白い作品が少ないからです。その理由はフランスの漫画産業の仕組みにあります。

フランスには、日本のような定期的に出される漫画雑誌がないため、「連載」がありません。漫画本を出版するとなるとすぐに単行本という形になる。もし漫画雑誌があれば、そこに読み切りもしくは連載させ、お試しのような形で単行本を出す前に作品が世間で受けるかどうか測れますが、単行本だけでは世間に出して蓋を開けてみるまで、受けるかどうか分かりません。

そうなると意欲的な作品を出すのは出版社にとってはリスクが高いです。したがってドラゴンボールの焼き直しのような、確実に受けると思われる無難な作品しか単行本として発売しない。この状況では新たな挑戦も生まれませんし、無名の新人にとってもデビューの垣根は高くなります。


手間はかかるが実入りは多くない


――漫画雑誌がないとなると出版のリズムも日本と随分変わりますよね。
そうですね。バンド・デシネ(記者注:フランス語圏の漫画のこと。日本の漫画に比べてカラーで細部まで描き込む特徴がある。以下BD)で単行本を出す場合、1冊を書き上げるまでに半年ほど。人によってはもっと時間をかけて仕上げます。

絵にこだわるBDは日本の漫画と比べてアーティスティックな面が強く、一方で日本の漫画は商業的な面が強いと言えますね。

――手間と時間がかかるのということは、単行本1冊を仕上げて受け取る報酬は、それなりに高いのでしょうか? 
漫画家自体が受け取る報酬は、そこまで高くないです。状況によって変わりますが大体1冊2000ユーロ(約27万円)が相場です。日本の漫画雑誌のようにページ単位の原稿料という形ではなく、単行本1冊の著作権の前払いという形でもらいます。もちろん、その単行本が重版となれば報酬も上乗せされます。

しかし、重版されるにせよ半年で仕上げてその額ですから、漫画だけではなかなか食べていけません。フランスで本当に漫画だけで食べいけるのは、漫画に詳しくない人にも知られているような大御所しかいません。多くの場合は、漫画だけではなく他に仕事を持っていたり、漫画の描き方を教えるなどしています。

――アシスタントの仕事もないんでしょうか?  
日本の連載漫画のような、タイトなスケジュールで仕上げることがないため、アシスタントはほぼ使いません。ただ、まったくアシスタントという仕事がないことはなく、まれに募集をすることはあります。その場合の仕事は、髪を黒く塗る程度の仕事。背景をすべて描いたりするような、日本でのアシスタントのイメージとは異なります。

アシスタントは知人の紹介などで探します。その際、アシスタントとは労働条件については契約書を交わすことはなく、口約束がほとんどです。そもそもアシスタントという仕事自体がめったにないことなので、漫画家という職業に興味を持つ人はみんなやりたがります。研修生という形での無給、もしくはほんの気持ち程度の額で、きちんとしたお金が払われる仕事になるとは言えません。

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ライター情報: 加藤亨延

ジャーナリスト。日本メディアに海外事情を寄稿。主な取材テーマは比較文化、および社会、政治。取材等での渡航国数は約60カ国。ロンドンでの生活を経て現在パリ在住。『地球の歩き方』フランス/パリ特派員

URL:フランス/パリ特派員ブログ