「ブラックバイトで若者を潰すのはもったいない」学生に相席カフェ運営を任せるファインドザワン
学生バイトに囲まれるファインドザワン社長の船橋新氏

「ブラックバイト」「貧困学生」など、学生アルバイトを取り巻く状況が社会問題になるなか、若者へ健全な出会いを提供しているファインドザワンでは、学生バイトが活躍している。同社は「相席イタリアンレストラン」を銀座や池袋で展開。
相席カフェの運営や、婚活・恋活イベントの企画の他、シフト作成や金銭管理もすべて学生バイトが行っている。同社の船橋新社長と、学生アルバイト3人に話を聞いた。


ブラックバイトで学生を潰してしまうのはもったいない


――あらためて企業概要の説明をお願いします。
船原新(以下、船橋) いま独身者が増えていて、若者も「恋愛離れ」でなかなか出会いがない。それを解決しようと言うことで、業態としては婚活パーティーを開催し、独身男女の出会いをセッティングするカジュアルな飲食店を行っています。現在、「相席cafe -ロハス銀座-」と「相席イタリアンレストラン・ロハス池袋店」を運営しています。
「ブラックバイトで若者を潰すのはもったいない」学生に相席カフェ運営を任せるファインドザワン
学生バイトが企画した。第1回『レディファーストパーティー』


――若者が結婚しなくなっていますね。

船原 昔は経済的な面で結婚することが多かったです。しかし、価値観の変化で男女のどちらがお金を稼ぐべきかという問いに対して、若者は「男女両方」と答えます。そこで愛した人と結婚したいという気持ちと恋愛の自由度が高くなったため、選択肢のパラドックスに陥っています。今はマッチングアプリを見れば、100人の異性のプロフィールを見ることができる時代です。それにより、逆に誰と結婚したらいいか分からなくなっているのです。
また、SNSの発展のせいで、自分が所属するコミュニティー内で異性に告白すると、翌日にはみんなに知られてしまいます。
そのため、コミュニティーを破壊することを恐れている傾向があります。ですからコミュニティー外での出会いを求めています。

――若者の恋愛をサポートしようとした理由は何だったのでしょうか?
船原 最初は婚活をサポートしようとしたのですが、よく考えると、若者は恋愛をしなくなってきているのです。そこで恋愛事業を真面目に取組むことにチャレンジすることにしました。

――若者に働いてもらっているなかで心がけていることはなんですか?
船原 弊社では現在28名のアルバイトが働いていますが、そのうち8割が学生です。他の方は正社員として別の企業で働きながら副業としてバイトをしています。

企業として、バイトでもイキイキと働ける職場環境づくりが必要で、若者が多いので、新しい感覚に敏感でいいところを引き出すように努めています。逆に、社会経験が少ないので、給料はお客様からいただているものだということや、お客様との接し方を指導するようにしています。たまたま業態は若者が対象ですが、いいアイディアを出してもらい、やりがいを感じていただける環境を作っていきたいと心がけています。

――今、いろいろな詐欺的な商売があり、若者は気をつけた方がいいというものがありますか。
船原 学生ローンが組めるようになる20歳を超えるとマルチ商法が流行っています。FXや日経225の攻略法ソフトを紹介するマルチです。
60万円で買って学生ローンで支払うことになりますが、FXや株はそんなに甘い世界ではありません。洗脳して友達を紹介させて、大多数は損して借金だけ残ってしまう。私の会社でも1人アルバイトがひっかかりました。その借金を返すためにバイトしている子もいます。こういう投資にひっかかるとTwitterとかで別のグループからの投資勧誘が来るようになっています。
私にも、アルバイトが「船原さん、寝ていて毎日4万円、5万入金されるのです。
FXってすごくないですか」と言うのですが、「そんなわけないだろう。私の時代からそういうネズミ講はいくらでもあった」と説得します。
ところが学生も友達がからんでいるので訴えたくないというのです。
あと、歌舞伎町で飲んでいたらぼったくりに会って困ったという電話がかかってきたこともありました。学生は素直なのが良いところでもあり、悪いところでもあります。私は東京のお父さんみたいな存在でありたいですね。


――いま問題となっているブラックバイトについてはどう思われますか?
船原 理解できません。賃金の未払いや、大学での試験期間中でもあるにもかかわらず、シフトを入れようとすることは本当にひどいことです。聞くところによるとまだまだ厳しい状況が続いているようです。

――昔はブラックバイトがそこまで多くなかったと思うのです。
船原 言われたことを真に受ける学生が増えたのだと思います。私は本事業をスタートして3年目ですが、学生の能力は高く、それを引き出すことによって企業経営は上手くいくと感じています。ブラックバイトで若い学生の能力を潰すことはもったいないです。学生バイトは塾、飲食、コンビニで多いのですが、雇用する企業側が主体となって、みんなが自発的に働きたくなるような仕組みを作るべきです。それが企業にとっても収益につながるのではないでしょうか。


将来の就活のためコミュニケーション力を磨く場に


続いて、実際に同社でアルバイトを行っている3名の学生にも話を聞いた。
――AさんとBさんは今、アルバイトは楽しいですか?
A 楽しいです。以前は、塾講師のアルバイトをしたいましたが、バイト同士の人間関係は希薄で、基本的にはずっと1人で仕事していました。このバイトは、業務間での人間関係が親密で、勤務時間外で飲みに行くこともあります。

B 前はアパレルの店員や飲食店でバイトしていました。今は学生同士で年代が近いこともあり、みんなで情報共有する業務が多いのでコミュニケーションが必要です。ですから楽しいですね。

――コミュニケーションスキルは社会人では必須ですが、将来役に立つのでは?
A 学生OBに話を聞くと、1人で仕事をすることはほとんどなく、5人くらいのグループ単位で仕事をすることが多いとのことでした。このバイトはスタッフ間でも情報共有やコミュニケーションが活発なので、将来のスキルアップにつながりますね。

B スタッフだけではなくお客様とお話する機会が多いので、コミュニケーション力は培われます。私は将来観光業に携わりたいので、社会に出ても役に立つと思っています。

――おふたりは具体的にはどのようなことを立案しましたか?
A 学生主体の紳士淑女が集うパーティーを開催しました。当時、有名大学で不祥事があり、大学生だからこのような目で見られるのは嫌ですねと船原社長と話していたら、「企画出してみてよ」と言われ、「レディーファースト」をテーマにした企画を提案しました。男性側と女性側にやって欲しいことを明記して、イベントを行いました。

B 今はご飯でもフォトジェニックが流行しており、インスタ映えをテーマにした企画を立案し、かわいいコップを揃え、店内に可愛い天使の羽のペイントすることを池袋店で実現できました。
「ブラックバイトで若者を潰すのはもったいない」学生に相席カフェ運営を任せるファインドザワン
インスタ映えをテーマにした企画が池袋店で実現

A 学生の意見や企画なので、穴はあると思っています。でも、若者の声を拾ってもらっていることに共感しています。自由に企画案を出せるというのは、将来の就活に向けてアピールポイントになりますので。

B 観光や旅行業界に行くと企画力や集客力が求められますので、今回の企画で良かったところと悪かったところが理解でき、良い経験になりました。内装を変えることまでアルバイトにやらせてくれる会社はなかなかないと思います。

――ところでCさんは歌舞伎町でぼったくりに遭ったそうで、大変でしたね。
C 実はぼったくりって漫画やドラマの中だけの話で、現実にはそんなことはないだろうと思っていました。友人2人と歌舞伎町に飲みに行ったとき、泥酔していたんですよ。そんな時、女性が近づいてきて「一緒に飲みに行かない?」と誘ってきたんです。女性は、「店長と知り合いだから安いよ」と言ってきて、友達が乗り気だったので店に入りました。
メニューは普通の金額でしたが、会計を見たら2人で8万円! 怖い人がウラから出できて本当に困りました……。学生証もコピーを取られ、明日にでも学生ローンから借りてこいと言われ、途方に暮れていたときに、船原社長に深夜に相談したところ、顧問弁護士を通じて無事解決してもらいました。

――ありがとうございました。
(長井雄一朗)