しかし、この破綻のタイミングには不可解な点が多い。大和生命の中園武雄社長は会見で「世界的な金融市場の混乱で、資産運用のために保有していた有価証券で、想定外の急速かつ深刻な価格下落が進んだ」と、破綻の理由を今般の世界的な金融危機によるものと強調。だが、大手生保関係者は「最近の市場混乱がきっかけだなんて嘘っぱち。大和生命の経営は、3~4年前から取り返しのつかないくらい悪くなっていた」と明かす。
「大和生命は、02年に破綻した旧大正生命を買収するなど、事業の拡大を推進。
その大和生命がこの時期を自らの命日に選んだのには、中園社長をはじめとする経営陣の"責任逃れ"のためとの見方が強い。高リスクな"バクチ経営"が失敗した末の経営破綻では、マスコミや株主から経営責任を追及されるのは間違いない。しかし、リーマン破綻後に世界的な株安が進行する中で「市場環境のせい」と主張し、経営責任を薄めることを狙ったのではないかというのだ。
それが奏功したからか、実際マスコミの論調も「リーマン禍の破綻」などと、中園社長など経営陣の責任を追及する声は小さく、彼らのもくろみは当たった。だが、その代償として金融業界は混乱し、ある金融業界関係者は「大和生命は世間的には無名の存在であり、リーマン破綻以前なら大きなニュースになっていなかったはず。
だが、この破綻には、監督官庁である金融庁の意向が働いたとも見られている。それというのも、当然ながら金融庁は大和生命の経営悪化を把握していたはずだが、早期の改善措置など十分な対応を行っていないのだ。対応らしい対応といえば、経営破綻のわずか1カ月前、"アリバイ作り"のために同社へ検査に入ったことぐらいである。「金融庁は、生保業界全体での保険金不払い問題にこだわりすぎるあまり、大和生命への対応を半ば放置していた」(前出の金融業界関係者)といい、監督責任を問われて当然なのだが、こちらも金融危機に責任を転嫁することで、マスコミの追及なども行われずに済んでいる、というわけだ。
さらには、行政の責任をチェックすべき政府も、大和生命の破綻を都合よく使ったのではないかと見る向きもある。
市場や保険会社の犠牲の上に、大和生命、金融庁、政治の三者にとって都合が良い破綻が"作られた"というのが、真相のようだ。
(隅田哲太/「サイゾー」12月号より)
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