昨年、3人もの日本勢が優勝した米国女子ツアーは、日本よりも一足早く1月から熱戦が始まっている。参戦の仕方はそれぞれだが、過去に類を見ないほどの多くの選手が海を渡り、世界の舞台で戦う。
そんな米ツアーに挑む選手たちについて、WOWOWなどで解説を務める小田美岐に語ってもらった。今回は米4年目を迎えた畑岡奈紗
畑岡奈紗のドライバースイングを動画で詳しく見てみよう!
先週オーストラリアで行われた「ISPSハンダ・オーストラリアン女子オープン」で4試合を消化した今季の米国女子ツアー。そのうち畑岡は開幕戦の「ダイヤモンド・リゾーツ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」、続く「ゲインブリッジLPGAアット・ボカ・リオ」の2試合に出場し、ともに2位の好成績で大会を終えた。初戦は7ホールに及ぶプレーオフのすえに、そして2戦目も1打差で優勝こそ逃したが、本人も「いいスタートが切れた」とさっぱりとした表情で話すなど、順調な滑り出しだ。
昨年の畑岡について、小田はこんな印象を話す。
「3月のキア・クラシックで勝つなど春先はよかったのですが、もともと扁桃腺(へんとうせん)が弱く、その影響もあってシーズン途中に体調を崩してしまいました。畑岡さんは、すごく自分を追い込んで練習するタイプ。思うように動けなかったという不安が夏前の不調につながった気がします」。
キアの翌週に行われた「ANAインスピレーション」(39位)から始まったメジャーロードだったが、5月の「全米女子オープン」は予選落ち。6月の「全米女子プロゴルフ選手権」は14位タイとしたが、7月の「エビアン・チャンピオンシップ」、さらに8月の「全英AIG女子オープン」でも決勝ラウンド進出を逃す結果に。メジャー5戦で3度の予選落ち。
悔しさにまみれた。
「もともとパッティングがうまい選手で、仮にショットが曲がっても、しっかりとパーセーブして、チャンスをものにしていくタイプ。でも苦しんでいた時期は、ショートパットが入らないという姿もよく見ました」
小田が目にしてきた、畑岡が精彩を欠く姿。それがメジャーという大舞台で、結果として出てしまった。しかし、全英後からは3試合連続でトップ5入りを果たすなど、終盤を迎えるにつれ復調。日本ツアーでメジャー2勝を挙げるなど“らしさ”を取り戻し、シーズンを終えることができた。
特に2位に4打差をつけた「日本女子オープン」での優勝は、小田も「圧巻でしたね」と目を見張るものだった。
「3年間アメリカでもまれて、一番成長したと感じるのはアプローチ。寄せの技術が多様化するなかで、畑岡さんはすごくいいプレーを見せています。ツアーで3勝を挙げていますが、その数字以上に成長していると思います」
苦しい時期を乗り越え迎えた今季、序盤から“ロケットスタート”を切ったとあれば、自然とビッグタイトルへの期待も大きなものになる。昨年の渋野日向子の全英制覇も踏まえ、小田も畑岡の奮起に期待を寄せる一人だ。
「昨年の畑岡さんは、メジャーにピークをもっていくのに失敗したという印象。
そして、その間に渋野さんが全英で優勝を果たしました。畑岡さんには『世界で一番活躍している日本人は私』という自負もあったと思う。そのなかで調子も悪くないなか調整に失敗。あの渋野さんの優勝の衝撃は“カウンターパンチ”以上のものだったと思う。だからこそ今年は何勝するかよりも、やはりメジャーを獲ってほしいですね。ただ、岡本綾子さんら、これまでの日本選手のトップでもなかなか勝てなかったように、メジャーには魔物が住んでいる。
それを蹴散らすのは最後は自信で、その自信が表れるのは何かといえばパッティング。最後に決めきるための準備をしっかりとしてくれているはずです」
そして、今年は「東京五輪」という大舞台も待っている。現在畑岡は世界ランク4位(18日現在)で日本勢トップ。12位に渋野、15位に鈴木愛が続いているため、このまま3人が15位以内をキープすれば全員が出場権を手にする。だが畑岡は頭一つ抜け出し、さらに2戦連続の2位と盤石の態勢を築いている状態。これには小田も、「畑岡さんはケガなどのトラブルがなければ、ほぼ確定といっていいので問題はなさそうですね。
ここからの話題は…、他の出場者になりそうですね(笑)」。五輪争いの注目は“畑岡以外の出場者は誰になるのか”という部分に目を向けるほど、畑岡の代表入りは当たり前のものと見ている。
まだ21歳の若き日本のエースは、2020年をどういう形で終えるのか? 小田はその未来を、目を細めながら眺めている。
小田美岐(おだ・みき)/1959年4月5日生まれ、京都府出身。通算6勝。ティーチングプロフェッショナル資格A級も保持している。現在は解説者として国内女子ツアーだけでなく、米国女子ツアーの解説を努めることも多い。

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