________________________________
シェフラーは右足を引きながら、ボールを打つ【連続写真】
シェフラーのスイングは変則的に見えますけど、『ザ・基本』ともいえる伝統的な動きをしています。ジャック・ニクラスやトム・ワトソンのような雰囲気もある。グリップはスクエア。風が強いテキサスで育ったからなのでしょうか、アップライトに(手元を高く)クラブを上げていきます。この辺はシェフラーと同じテキサス大の先輩、ジョーダン・スピースに似ていますよね。
絶対左に曲げたくないのか、スイングプレーンに対してフェースはオープンに使っていきます。そこが変則的と言われる要素の1つかもしれません。その証拠に、シェフラーのトップはフェースが正面を向く。フェースをシャットに(閉じて)使うダスティン・ジョンソンなんかはトップでフェースが上を向きます。
切り返しではタイガー・ウッズのように左へのバンプ(腰を左にスライドする動き)が入って、頭を残してインパクトするので、ドローヒッターっぽい動きをしているんですけども、フォロースルーはスピースと似ていて、一気に腕を返さないように抜いていく。
ダウンスイングまでは基本に忠実だし、伝統的な動きなんですけど、抜き方はテキサス出身のベン・ホーガンやスピースの要素が入る。
グレッグ・ノーマンみたいに右足を後ろに引きながらボールを打っていきますが、これは意図的ではなく、ホッケー選手のようにバランスを取るために勝手になるのだと思います。インパクト重視でスイングを作ってきた天才肌といった感じ。
最終日はドローが必要となる13、15、16番で勝負が決まると思って観ていました。シェフラーはフェードヒッターなので無理矢理ドローを打っていたように見えましたけど、スコアを落とさずに切り抜けられた。彼やタイガーのようにフィニッシュで「ボールを曲げてやる」という思いでボールを操る選手は少なくなりました。いまはもっとオートマチックにボールを曲げていくのが主流です。
シェフラーは弾道をデザインする能力が長けていて、そのためにスイングがあるとわかっているんでしょうね。
テキサス大学の名コーチ、ハービー・ペニックが残した『Take dead aim』という名言があります。彼は「死ぬ気で目標を定めよ。
■解説/森守洋
もり・もりひろ 1977年2月27日静岡県生まれ。ゴルフを始めたのは高校から。95年に渡米しミニツアーを転戦しながらゴルフを学んだ。
■マスターズ 最終結果
■スコッティ・シェフラーのプロフィール&成績
■松山英樹から受け取ったグリーンジャケット S・シェフラーが“最強”を証明するメジャー初制覇
■全盛期の帝王、ジャック・ニクラスのスイングを解説【レジェンドのスイング回顧録】
■新帝王、トム・ワトソンのスイングを解説【レジェンドのスイング回顧録】