辞任を表明した中川元大臣関連のニュースで、たびたび耳にした、「ゴックンはしていません」というフレーズ。

この場合、「お酒は飲んでいない」という意味だったけど、もともとこの「ゴックン」という表現、赤ちゃんや子どもに飲み込むことを促すときにも「ゴックンしなさい」などと使うことが多い。


では、そもそも「ゴックン」ってどういう音なのだろう? 

声楽発声学を専門とし、『「裏声」のエロス』(集英社新書)著者で、「音痴矯正ドットコム」を運営するBCA教育研究所代表の高牧康さんは言う。
「実は『ゴックン』の『ゴッ』とは喉に流し込む直前の音で、『クン』は流し込んだ直後の音なのです。もっと正確に言えば、『ゴッ』とは食道に流し込む時に、間違って気道に流れ込まないように、喉頭(こうとう)、つまり喉仏が上がったときの音で、『クン』は飲み物が食道へ流れ落ちた後の喉頭が下がっている状態を指します」
気道などに間違って流れこまないよう、食道に正しく流すために「ゴッ」「クン」とやる、自然な音として生まれたもののよう。
「ついでに、咳払いなどの『ゴッホッ』の『ゴッ』の音の出るときは、喉頭は上がっています。匂いを嗅ぐときの『クン、クン』は音は出ませんが、喉頭は下がっています。食物が正しく食道に入ったときの香りを鼻腔(びこう)で確認しているのでしょう」
つまり、「ゴッ・クン」は、喉頭が上がり下がりする嚥下(えんげ)運動を音で説明しているものなのだとか。


とはいえ、普段、大人が「ゴックン」という表現を使うことはない。これはなぜなのだろう?
「子供などに言う、『よくカミカミして、ゴックンするのよ』とは嚥下運動のオノマトペだったのです」
オノマトペは、語彙のない赤ちゃん言葉から、普通の言葉に移行する過程で使用されるもので、オノマトペによる語りかけは、発語教育に欠かせないものとなっている。

また、嚥下運動がうまくいかないと、嚥下障害といわれ、摂食障害、肺炎などを引き起こす原因にもなるという。
「理解力が乏しいことを『飲み込みが悪い』などと言ったりもしますよね。オノマトペを使用するような発語教育の途上の人や、理解力が乏しい人が政治に関わるので、わが国は病気になっているのかもしれませんね」と高牧さん。

余談だが、ネットでこの「ゴックン」を検索すると、出てくるのは今回の中川氏関連のニュースと、離乳食、エロばかり……。
ああ……。
(田幸和歌子)