インフルエンザの流行が、まだまだおさまらないこの頃。

ところで、昔から不思議だったのは、熱が出たときに感じる独特のニオイだ。

何とも言えないニオイがするが、あれはそもそも何なのか。熱が出た本人が感じるだけなのか、それとも周りにもやっぱり匂うのか。

『読むだけで汗が少なくなる本』(講談社)などの著者で、ワキガ体臭多汗専門医院院長の五味常明先生に聞いた。
「熱が出ると汗が出ますが、汗には匂うもの、匂わないものがあります。たとえば、ウォーキングなど、有酸素運動でじっくりゆっくり出てくる汗の場合、汗腺がちゃんと機能し、体に必要なミネラル分が血液に再吸収されるため、濃度が薄くてサラサラの水に近い汗となります。これは匂わないんですよ」

では、熱が出るときの汗は、「匂う汗」ということ? どんな違いがあるのか。

「匂う汗は、急激にドッと出た汗。緊張したときの汗や、無酸素運動などでかく汗がそうで、急に熱があがったときなども一気に汗が出ますよね? これは、汗の中に、ナトリウムやカリウムなどのミネラルの結晶成分が含まれているほか、ニオイ成分も多く含まれて出るんです」

一気に出た汗に含まれる「ニオイ成分」がどんなものかというと……。
「尿素や乳酸、アンモニアなどですね」
つまり、熱のときに出る汗は、サラサラの汗とは別の種類であり、汗が匂う=熱のニオイということが考えられるという。

ということは、「熱のニオイ」は本人だけじゃなく、やっぱり周りにもわかるものということ?
「そればかりではないですよ。熱が出ると、嗅覚が変わって、敏感になるんですよ。気温が高くなると、ニオイを強く感じるもの。
鼻粘膜の温度があがって、敏感になるのが原因です」
つまり、ニオイそのものの強さは変わらなくとも、発熱による嗅覚の変化によって、ニオイを感じやすくなることもあるのだそうだ。

実際、発熱時には本当に苦しく、ニオイなど気にしていられないもの。
でも、この熱のニオイには、ニオイが強くなる汗のほかに、熱で敏感になっていることで生じる「発熱している本人だけが感じるもの」もあるという。

熱のニオイは気持ちの良いものではないけれど、仕方のないこと。そして、「熱がある本人ほど周りには気にならない」らしいです。
(田幸和歌子)