元旦を目前にして、家族で年末のテレビの歌謡番組を流しながら新年を迎える準備をする……そんな年末年始の光景はもはや少なくなったかもしれないが、今でも続く年末恒例の2大歌謡番組といえば、ひとつはもちろん「NHK紅白歌合戦」。そして、TBS系で放送される「輝く!日本レコード大賞」(通称「レコ大」)もそのひとつだ。


大晦日に行われていた「レコード大賞」


今年秋には、そのレコード大賞の受賞選考について週刊誌が「大賞を1億円で三代目J Soul Brothersが買った」と報道し、出来レースでの選考ではないかとの疑惑が浮上した。この手の噂は以前からあったものの、主な審査委員が新聞社やテレビ局社員でもあったために、なかなか表向きに報じられないままになっていたのだった。

それでも80年代頃までは、音楽業界や歌番組の盛り上がりを背景に、この番組は黄金期を誇っており、アーティストにとってもレコード大賞受賞は栄誉だというイメージがあった。
特に2005年までの「レコ大」は紅白と同日の12月31日、大晦日の夜に放送されており、一時期は50%近い最高視聴率を記録するほど。紅白にとっても大晦日のライバル番組といえた。
また、この時期の人気アーティストは、レコード大と紅白歌合戦を掛け持ちして出演するケースも多く、両番組を慌ただしく移動する様子が実況されていたことなどもあった。

権威が衰退したレコ大、視聴率も右肩下がりに


その盛り上がりが変化し始めたのは、1994年のことだと思われる。ヒット曲「innocent world」で第36回レコード大賞を受賞したMr.chirdrenが、授賞式を欠席するという異例の事態が起こったのだ。

この頃より、会社や事務所の権力関係で決まる賞の仕組みに異論を唱えるアーティストが多くなり、レコード大賞そのものの権威も衰退してくこととなる。

番組の視聴率もその後は右肩下がりとなっていった。そのためか番組規模や編成も変化していき、2006年からは毎年の恒例だった大晦日の放送を、時間変更によりバッティングし始めていたNHK紅白歌合戦の放送前日である12月30日に変更している。

「レコード大賞」の現状


2016年の今年もすでにノミネート作品が発表されているが、買収疑惑のあった三代目J Soul Brothersの作品はクレームも多かったせいか選考に入っておらず、紅白にも出演する宇多田ヒカルやピコ太郎、AKB48など、全体的には今年話題のあったアーティストも選ばれている様子。しかし、癒着体質というイメージはまだまだ拭えないようだ。

もはや今は音楽曲もデータ配信が主流となり、若い世代はCDさえ買わなくなってきている時代。
「レコード大賞」という名称もすでに過去の遺物のような違和感のある響きでもある。
この番組がいつまで続くかはわからないが、趣向の多様化する中でヒット曲を選考していくのはなかなか難しい時代だというなら、いっそ本当にアナログレコードでリリースされた曲だけを選考対象にするのもおもしろいかもしれない。
(空町餡子)

※イメージ画像はamazonより安達祐実写真集「続・私生活」 Kindle版