ボルボは日本国内のマーケットで1990年代にエステート(ステーションワゴン)を武器に認知度を上げたブランド。そのころから、エステートはVで表し上級ワゴンを「V70」などと称してラインアップを構成した。

一方でセダンは「S70」という表記だった。その後の2000年代半ばに“70”シリーズは北米市場を意識して大型化、加えて日本における「ステーションワゴン・ブーム」の沈静化で、ボルボはシェアを落とす。


 しかし、2013年2月に日本に上陸した新型V40が、ボルボの起爆剤となった。ルボの車種を表す“V”とは、従来ならステーションワゴン。が、新型V40は5ドアHB車。欧州でもっとも競争が苛烈なCセグメントに投入したボルボの意欲作なのだ。

まさに、ヨーロッパのコンパクトプレミアムと呼ばれるゾーン目掛けて投入し、新しい「ボルボ・デザイン」が大成功を収めている。


 そのボルボが、43回東京モーターショーで公開した「ボルボ・コンセプト・クーペ」がエレガントで大人な好印象、静かな話題になっている。このクーペは、同社のデザイン担当副社長トーマス・インゲンラート氏による最初の作品で、このあとに発表されるクーペとはまったく異なるセグメントのSUVである「新型ボルボXC90」に繋がるデザインだという。


 ボルボ・コンセプト・クーペのスタイリングの特徴は、「フロントタイヤはAピラーから遠くに位置し、グリーンハウスは小さく後方に置き、極端にリアオーバーハングが短い」ことだ。同じようなフレーズで表現したモデルがいくつかTMSに出品されている。たとえば、「ジャガーFタイプ・クーペ」、そして「メルセデスSクラスクーペ」などだ。

もう少し広義で捉えると「レクサスRC」も同じ傾向でデザインされている。


 つまり、非常に古典的なスポーツカーのフォルムである「ロングノーズ・ショートデッキ」だ。長いボンネットフードに小さなガラスエリアのキャビンに大きめの2ドア。そして非常に短いリアオーバーハング。長いボンネットは、大きくて(V型8気筒や12気筒)長く強力なエンジンが搭載されていることの象徴で、小さなキャビンと短いリアオーバーハングはクルマ全体のフォルムに“肉食獣が獲物に襲いかかる瞬間の姿勢”をイメージさせるというもの。


 この「ロングノーズ・ショートデッキ」は、大型でエレガントなスポーツカーの最近の傾向だ。

クラシック回帰である。


 この流麗なクーペ、詳細な諸元は公表されていないが、2リッター4気筒ガソリンターボエンジンに電気モーターを加えたプラグインハイブリッド。およそ400hpの出力と600Nmのトルクを発生するパワーユニットを搭載する。


 こうしてみると、大型スポーツクーペは「ロングノーズ・ショートデッキ」で、ハイパワー「プラグインハイブリッド」もしくは「ハイブリッド」が世界的なトレンドであるようだ。(編集担当:吉田恒)