BiSH、BiS、豆柴の大群など7つの女性グループを擁する音楽事務所WACK。そのWACKが年に一度開催している合宿オーディションを追った映画『らいか ろりん すとん -IDOL AUDiTiON-』が1月15日に公開された。
「絶対にアイドルになりたい」その夢を叶えるため、もがき、苦しみ、肉体と精神の限界を超えた少女たちの壮絶な一週間に肉薄したドキュメンタリー……自らも自らも指導役として合宿に参加したBiSHのセントチヒロ・チッチにオーディションの裏側を聞いた。(3回連載の2回目)

【写真】セントチヒロ・チッチの撮り下ろしカットと映画場面カット【14点】

※インタビュー(1)「嫌われようが、言いたいことは全部言って帰ろうと決めていた」はこちらから。

     *     *     *

――映画『らいか ろりん すとん』で、候補生のトト・パーティン・トトさんを指導している際に、「殻を破る」というお話がありましたが、チッチさん自身どのように「殻を破れた」のでしょうか?

チッチ BiSHに入ったときは、猫100匹以上かぶっていて、人に好かれたい、頼ってほしい、人気者になりたい、そういう気持ちが強かったんです。でもBiSHの活動の中で、いろんなことがあって、どうでもよくなった時期があって、メンバー、お客さん、スタッフさんも含めて、みんなのことを嫌いになった瞬間がありました。誰しも生きていたら、学校でも職場でも、そういう瞬間ってあると思うんですよ。

――よく分かります。


チッチ そのときに、私のことが好きじゃなかったら無理して好きになってもらう必要もないし、自分の好きなように生きて、それで嫌いになられても別にいいし、みたいなことを考えたんです。やりたいことをやっている私を好きになってくれて、応援してくれる人がいるなら、その人のためにやりたいって気持ちの切り替えがあって、自分の殻を破れたんですよね。いろんなものを脱ぎ捨てた瞬間でした。そこから、あんまり物事を怖がらなくなりましたね。

――周囲との関係性も変化しましたか?

チッチ かなり変わりました。ゴマをすらなくなりましたし、私が言いたいことを言えるようになったことで、BiSHチームを始めとした大人の人たちも気持ち良かったみたいです。
その切り替えがなければ今の私というものがなかったでしょうし、きっと今のBiSHもなかったと思っていて、世の中との関わり方が変わったのは良かったです。もともとのBiSの方たちも、かなりさらけ出していたと思うんです。ただ、BiSHは「もう一回BiSを始める」って言われて始まったけど、全くBiSとは別物で。活動を続けていく中で自然とメンバーそれぞれが自分をさらけ出すことでしか生きる道がなかったんです。個性がバラバラで、理解し合うことが難しい中で、無理に干渉しようとせずに受け入れていくことを全員が学んだからこそ、ステージでもありのままをさらけ出せるようになって。さらけ出した先に、BiSHを応援したいとか、好きだって言ってくれる人たちがいたんです。


――何度かメンバーの卒業・加入があって、現在の6人体制になるまで紆余曲折もありました。

チッチ 今の6人は奇跡的なバランスだと思いますし、運命的なものも感じます。でも、あの時期に、あのメンバーがいたからこそ、生まれた曲や思い出もたくさんありますし、それで今のBiSHがあるんです。

――メンバー変更などがありつつも、着実に成長して、ファン層も拡大して、はたから見ると順調に思えます。

チッチ 私たちからしたら全く順調じゃなかったですし、大きな苦しみも経験して、何度も挫折を味わって、一歩ずつ進んできて今があります。とんとん拍子にいったわけではなくて、山道を登ってきて、ちょっとずつ光が見えてきて。
今もまだ登っている最中です。

――ゴールはあるんですか?

チッチ BiSHには憧れとか、ライバルとか、目指すものがないんですよ。それはBiSHの性格もあるし、BiSHという存在もかなり特殊なので、そこがすごく良かったなと思っていて。戦うべき敵は自分たちしかいないし、いつでも未知の世界を目指すだけで、それがエネルギーになっています。ゴールが分からないからこそ、何でもできるのがBiSHの良いマインドになっています。BiSHはどんなときも開拓者でいないといけないんですよね。


※インタビュー(3)「私の言葉でその子の人生も変わってしまうかも」はこちらから。
セントチヒロ・チッチが振り返るBiSHの活動「みんなのことを嫌いになった時、自分の殻を破れた」

▽『らいか ろりん すとん-IDOL AUDiTiON-』
1月15日(金)よりテアトル新宿ほかにて全国順次公開
監督:岩淵弘樹 バクシーシ山下 エリザベス宮地
プロデューサー:渡辺淳之介
撮影:岩淵弘樹 バクシーシ山下 エリザベス宮地 白鳥勇輝
出演:BiSH BiS EMPiRE CARRY LOOSE 豆柴の大群 GO TO THE BEDS PARADISES WAgg オーディション候補生
配給:松竹 映画営業部ODS事業室/開発企画部映像企画開発室
2020年/82分/ヴィスタサイズ/2.0ch ステレオ/(C)WACK.INC

『らいか ろりん すとん-IDOL AUDiTiON-』公式サイト
http://rolin-ston-movie.com/