イマドキ書店の風変わり平積み事情
きょうび、「普通の書店」を探すことは難しい。
ちっちゃな駅前のふつーの書店を見かけると、「おお!」と思ってしまうほど、各書店、特色ある品揃えや陳列方法を実践している。


先日、三省堂書店神田神保町本店を訪れたとき、一階エレベーター前ワゴンに変わった平積みがされていた。
おお!
これは…「平積み」と呼ぶにはあまりに立体的である。
バーバラはこのような積み方を見たのは初めてなのであるが、エキサイトbit担当さんと話したところ、「時々見かけますね」とのこと。
それで、さっそく、神田三省堂1F担当さんに、「昨今の平積み事情」についてお伺いした。
 
まずは、この積み方の目的は、というと、やはり「目立つため」だそうだ。
「この写真の書籍は村上春樹『海辺のカフカ』文庫版なのですが、この書籍の単行本が出たのが2年前の9月です。
そのときにこの写真のような積み方をしまして、それをお客様に懐かしんでいただくために、文庫版のときもこのように積んだわけです。この写真の文庫本の塔では200冊使っていますが、単行本の時は、上下650冊ずつ使いまして、人の背丈くらいの大きな塔になりました。そのときは、通りかかるお客様が『すごいね〜』と言ってくださいました。この積み方は、もともと売れ筋の書籍をさらに目立たせて、当店でお買いあげいただくのが最大の目的です。書籍はどこの書店さんでも同じものが買えますので」

また、「この積み方は最近の平積みのトレンドなのでしょうか?」との質問には、
「トレンドというわけではありませんが、この積み方は、遊べて、目立たせられるという利点があります。一つの平台で冊数を多く並べることもできますし。
平台でただ漫然と積み上げるだけではつまりませんよね。高く積めば目立つし、たくさんの冊数を出すことができますし」とのこと。

積み方のコツについては、「まっすぐ積むこと」が唯一絶対のコツだそうだ。
「積み方のバリエーションとしては、ねじって塔を作ってみたりとか。ただ、あそこから売れていくわけではなくて、あれはあくまで目立つだけで、実際には塔の横の平積みから購入なさるお客様がほとんどです。たまに、塔からお買いあげになる強者のお客様もいらっしゃいますが…(笑)。」
やはり、ピサの斜塔のようなわけにはいかないようだ。
もしかして「崩れそう!」と注目度倍増で売り上げ倍増……そんなわけにはいかないか(笑)。

あれだけ積むのにどのくらいの時間がかかるのだろう?
「写真の場合ですと、30分くらいですが、単行本の時は1時間ほどかかりましたね」とのこと。うーむ、その間に地震がきたら…(笑)。

最後に、「売り上げへの影響」をお伺いしたところ、
「売り上げへの影響はわかりませんが、注目度は確実に上がりますね。もともと売れ筋の書籍を目立たせるのが目的ですので」とのことだ。
「基本的に、目立たせるためには平積みを高く積むということになります。
そのためにはこのように塔を作ったり、壁を作ってみたり、いろいろ工夫しています」とも。

各書店が工夫をこらす昨今の書店事情。
神田三省堂のような老舗ですら例外ではない。
書店大好きのバーバラとしては、あっちもこっちもそっちもいろいろと工夫していただけたほうが、書店巡りの楽しみも増えて、大変嬉しいのである。(バーバラ・アスカ)