焼肉の「1人前」は何の基準か?
取材に協力してくれた牛角。食べる量は一人あたり平均2.5人前程度というが、大人数になると増えるのだとか。確かに大勢だと、自然にけっこう食べられちゃいますよね。
 おすもうさんなどが「焼肉30人前食べる」とかいう表現をよく耳にするが、この「1人前」は果たしてどんな基準なのか。いくらなんでも、普通の人の30倍食べるわけではあるまい。
かといって、焼肉屋で「1人前」と頼むと、定食の1人前などと違い、肉が一種出てくるのみで、「これだけで腹が満たされるはずはない」と、なんとも心細い気分になる。何種類かの肉とサラダなどを頼み、締めにビビンバか冷麺あたりが欲しいところだ。

 そういえば、昔、ある会社の取材経費で「夕食は一人800円まで」と決まっており、深夜であいている店が焼肉屋しかなかったため、カメラマンと二人、鉄板を囲みながら各々でビビンバだけ食べるという排他的な食事をしたことがある。二人で二種の肉を頼んでシェアすればよかったのかもしれないが、「1人前」にこだわるあまり、ひとと分かち合う心の余裕を失っていた。「1人前」は、言ってみれば自分の陣地だ。本来、「1人前」で十分満たされるはずではないのか。ひょっとして、一般的に焼肉の「1人前」は、コースのように何種か食べることを前提とした量なのか。『月刊焼肉文化』(焼肉文化社)編集部に聞いてみた。

「焼肉の『1人前』は、もともとは肉の種類などによらず、みんな100gと決まっていたんですよ。でも、90年代はじめ頃にチェーンなどの安売り店が増えてからは、どんどん量が減っていき、今では、70、80、90、100gの4種くらいに分かれています。大手の安売り店などは、70、80gが一般的ですね」

 これは回転寿司と同じで、「○人前=皿の枚数」が基本。大皿であっても、同じ1人前になるのだとか。


では、大手チェーンの焼肉店・牛角では、どんな基準なのか。牛角の広報を担当するレインズインターナショナル・渡辺さんは言う。「牛角の『1人前』も、基本的にお皿に盛る量で決まっています。商品によって量は違いますが、たとえばカルビ、ロース、ハラミ、タンなどは80gで1人前。ブタ肉などは100gで1人前としています」

 ちなみに、牛角はカップルのお客さんが多いため、二名で五枚(五人前)弱というのが標準的な量なのだとか。つまり、一人あたり平均2.5人前くらい食べていることになる。

 となると、やはりおすもうさんの食べる「焼肉30人前」は異常事態である。すもうとり、やはり侮りがたし。(田幸和歌子)
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