口喧嘩の達人になれる!? 「罵詈雑言辞典」
「俺って何歳に見える?[合コン語]」等のベタな言い回しが満載、5月に発売された『困った時のベタ辞典』(大和書房)が話題になっていますね! 私も職業柄、辞書は頼もしい相棒で、用がない時にも何気なく開いてみると新しい発見があったりします。

ところで、ベタ語に限らず辞書にも、いろんな種類があるもので、馬鹿、阿呆などに代表される人を罵る言葉ばかりを集めた『罵詈雑言辞典』(東京堂出版)なんてものまであることをご存知だろうか。

パラパラめくってみたところ、「デブ」「むっつり助平」「いかず後家」「売れ残り」「甲斐性なし」etc……。
心あたりのある身には思わずムッとしてしまう言葉のオンパレード。たとえば、「デブ=太っていること。またそのさまやその人を嘲る言葉」などという用語解説がついており、そのまんまじゃん! というツッコミを入れつつ妙におかしい。
その他にも、「売国奴」や「国賊」などのカビのはえたようなものから、「有閑マダム」などの「これって差別語だったの?」みたいな語句までが計1270語、幅広く網羅されていた。

著者によると、「良い言葉があれば、悪い言葉もある。
その両方で、言葉は完結する」という意図から編纂されたものだそうで……。それにしても、日本語は「敬語が過剰」とはよく言われることだけれども、「罵語の貧困な言葉」だというのはかなり意外でした! なんだかんだいって日本人は伝統的に敬語で相手をうやまい、悪態をついたりしない奥ゆかしい民族なんですかね〜?
著者は、さらに東京を中心とした共通語には「ロクな罵語がない」と指摘し、「その点関西、特に大阪地方は罵語の先進国のようですが……」と続けているのだが、関西人としてはそれって喜ぶべきなのか悲しむべきなのか……。

この本を出している東京堂出版さんの話では、1996年の発行以来順調に版を重ね、辞書というより読み物として楽しんでいる人が多いのだとか。同社では他にも「隠語辞典」や「『死』にまつわる日本語辞典」など、一風変わった辞書をたくさん出しているのだが、読者は特に作家やライターなど言葉にまつわる職業の人に限らないという。世の中には「言葉好きの人」というのがいて、中でも「ことわざ」「格言」関連の辞書はたいへんよく売れるのだとか。
この他にも、変わりダネ辞書としては、官能小説で使われる表現ばかりを集めた『官能小説表現辞典』(マガジンハウス)なんてのもあるらしい。
これ、実は私はまだ未見なのだが購入した知人によると「いけない張本人」「毛のはえた拳銃」「発熱体」「もう一人のあなたさま」(これぜ〜んぶ男性器の表現)等々、独特の言い回しに思わず苦笑を誘われつつ、その表現力の豊かさには学ぶところも多かったという。

職場や家庭では使えないボキャブラリーばかりが増えそうな辞書たちだが、日本語の多様性に改めて気付くいいきっかけにはなるかも!?(野崎 泉)