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「消失」の恐怖を体感できる美術展に行ってみた

「消失」の恐怖を体感できる美術展に行ってみた
上/顔が「消失」。こんな「証明写真」が会場で撮れます。下/あちこちが「消失」している会場。見ているうちに恐怖がこみあげてきます。
「ふつうにあるべきものがないこと」、「ある日、突然なくなること」―それはえもいわれぬ恐怖と、どこかしら滑稽さもある。安部公房の『箱男』しかり。フィリップ・K・ディックの『地図にない町』しかり。

六本木で行なわれている現代美術家・飴屋法水氏の「ア ヤ   ズ エキシビジョン〜バ  ング  ント展」は、まさにそんな「消失」の恐怖を体感できる美術展だ。ところどころ、文字が欠けているようなのも、その内容の一環。欠けている文字を頭の中で補ってください。

テーマは「消失」、会場内のあちこちが様々な形で欠落している。まず壁一面に書かれた文章はあちこち文字が抜け、実に読みづらく不気味な印象だが、不思議なことに、読んでいくうちにいつの間にかスラスラと読めるようになる。まるでもともとなかったかのように……。

ヘッドフォンをつけて、ところどころにある「ヘッドフォンジャック」なる穴に指を触れると、笙の音、ノイズ、人の声などが突然、頭に降り注ぐような感覚で鳴り響く。さらに、ヘッドフォンジャックに触れた人同士、他の人の体に触れると、別の音に変わるという不思議な現象も起こる。
一角には「証明写真機」が置かれており、そこで写真を撮ってみると……「消失」しているのは、自分自身の顔である。のっぺらぼうに写った顔は、通常より何割増しかでキレイに見える気がするのだが、だからこそ怖い。

実はこの会場そのものも、93年に建設されたまま今年1月まで使用されていなかった土地と建物だったのだとか。また、「死亡した人間が法律上 所有し続ける車」など、存在することとしないことの境界線がわからなくなってくるものもある。

極めつけは、空間に静かに置かれた180センチ角の真っ白な箱。「暗箱」と名付けられたそれは、上に空気穴が開いているだけ。箱の中身は、「ア ヤ   ズ」、つまり飴屋法水氏自身が「消失」してしまっているのだ。
ミネラルウォーターや食塩、栄養剤、タオルケット、Tシャツとパンツ各6枚、ポリバケツ、ジプロックなどが箱に持ち込まれているようで、壁に貼られたその内容物のメモが生々しい。
7月29日午後から8月21日午後9時までこの箱に入っているというのだが、中がどんなことになっているのか気になり、箱を軽くノックしてみると、
「……コンコン」
小さなノックの音で、返答があった。生きてはいるらしいが、何もない真っ暗闇の中で、時間の感覚もなく、誰との交流もなく過ごすことは、まさに「臨死体験」である。彼は「暗箱」の中で何を考え、いったい何をしているのだろうか。
(田幸和歌子)
※港区元麻布3−1−35C−MA3レジデンスB2F/tel03−3403−6678にて8月21日まで開催。
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2005年8月6日のコネタ記事

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