東京のセミが真夜中に鳴くのはなぜ?
あぢーあぢー
今年の夏も暑い。セミの鳴き声も心なしか「あぢーあぢー」と聞こえてしまう今日この頃である。


ところで、ここ数年気になっていることがある。真夜中に鳴いているセミである。図鑑などによると、セミが鳴くのには、それぞれに適した温度や日の照り具合や湿度などが影響するため、鳴く時間は種類によって異なるそうだ。ヒグラシの朝夕型、ミンミンゼミの午前型、一日中鳴いているニイニイゼミの終日型、アブラゼミの午後型などに大きく分けられるようだ。そして夜は休息しているとある。
夜鳴いているのはセミではなく別の虫なのだろうか。

そもそも、セミは真夜中に鳴くのだろうか。素朴な疑問を抱きつつさっそく専門家に聞いてみた。

関西のとある博物館に問い合わせをすると、「えっ、夜中にセミが鳴くんですか? こちらではそううった問い合わせはありません」という意外な返事。
どうやらセミは、全国どこでも夜中に鳴いているのではないようだ。
そこで、手堅く昆虫の専門家も多いと聞いた多摩動物公園に改めて問い合わせてみた。

「街灯などがあると、夜でもセミが鳴くことがあります。
また、気温が25℃以上になっていると、やはり夜でも鳴くことがあります」と普及指導係の高橋さん。
「それは昼間とカン違いしているということですか?」と聞いてみると「そうだと思います」との答え。

東京に生息しているセミは、コエゾゼミ、エゾゼミ、アカエゾゼミ、クマゼミ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、オガサワラツクツクボウシ、ハルゼミ、エゾハルゼミ、ヒメハルゼミ、ヒグラシの13種。オガサワラツクツクボウシは小笠原諸島の固有種なので、本土では12種となる。
この中で、主に夜中にカン違いをおこして鳴くのは、都心に生息数が多いアブラゼミ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミなのだそうだ。

こんなに夜中まで鳴いていたので、寿命も短くなってしまうのでは? と心配になるが、セミの夜鳴きと寿命との関連はないそうでちょっと安心。


さらに温暖化がセミに与える影響についても聞いてみた。
「クマゼミの北上が話題になっていますが、これが本当に温暖化の影響であると断言はできません。他にもいろいろな昆虫で温暖化と分布の拡大が話題になっていますが、統計的に有意な結論を出すことはなかなか難しいようです」

気温一つだけを見て、環境変化の影響が分かるほど簡単なことでないようだ。地球上の生物は微妙なバランスの上にそれぞれが生き残りをかけた闘いをしているのである。そもそもセミの種類が、地球上に登場した頃、セミは鳴かなかったともいわれている。昼間にしか鳴かなかったセミが真夜中に鳴くようになっても、ちっとも不思議ではないということだ。


多摩動物公園では夏休みの期間、夏休みの特別展として「虫づくし」を開催。「コオロギ相撲」や「ダンゴムシレース」など虫と友達になれるイベントも。人気者のカブトムシやクワガタだけでなく身近な虫たちをじっくり観察してみるのはおもしろいかも。興味のある方は是非!(こや)