「男子トイレ」という不思議な社交空間
この中で、日々どんな会話が繰り広げられているのだろうか。
「○○さんって△△ちゃんと付き合ってるらしいよ」とか「○○さん、最近、尿のキレが悪いんだって」とか。居酒屋などで、トイレ帰りの男性から「新(珍?)情報」を聞くケースが多い。

女性の場合、知人にトイレで遭遇しても、「そのスカート可愛い〜♪」などの白々しい会話か、ごく親しい友人だと、「おう」「お先っ!」ぐらいの挨拶なのに……。

なぜ男性は、トイレでそんな込み入ったコミュニケーションを繰り広げるのか。
自分たちが知りえない「何か」が男子トイレという空間にはあるんじゃないのか。その「何か」を残念ながら潜入レポートするわけにもいかないので、周りの男性たちに聞いてみた。

回答をくれたのは、28名。基本的には並んでおしっこをしている状態での会話ということで聞いた。
多数が「自分から積極的に話しかけることはない」という意見だったが、「話しかけられる」ことはけっこうあるという。
その内容は、「おつかれさま」などの挨拶程度が7名。「仕事などの話」が4名、天気やニュースなどが5名、パチスロや馬、ゲーセン、ラーメン屋、グラドルなどの「趣味(?)の話」が3名。

多かったのはやっぱり「下ネタ」で、たとえば、「たまたまトイレで隣になった上司の『最近調子どう?』に、『さっぱりですわぁ〜』と下ネタで返す」「最近、(尿の)勢いが弱くなったんだよね」「最近、前立腺肥大で。そろそろ俺も打ち止めかなあ(笑)」「○○さんはすごいんだよ、勢いが。便器が割れそうだったよ」なんて会話があるそうだ。

それに付随して出てくるのが「健康話」で、「青汁飲むと、便がよく出る」「宴会の前にウコンを飲むと、二日酔いしない」「泡だらけだったけど糖尿病かな?」など。
また、「女性の話」も多く、「経理の女の子、ぜってーおれに気があるよ!!!」「あの子、スカートみじかくねー!?」「いやー最近どうですか〜 こっち(小指)関係は!?」みたいな会話が聞かれるそうだ。

理由としては、次のような意見があった。
「男は、あの無防備な状態を自虐ネタで取り繕おうとしているんじゃないかな」
「女性に聞かれない"聖域"だからこそ会話が弾むのかと」
「トイレでは、間抜けな格好でみんな突っ立っていて、なにも喋らないのもなんだか……」
「パーソナルスペースの問題で、隣に立つことでそれぞれの距離に立ち入ってるので、相手の壁をやぶっちゃうんだと思う。話すことはないけど沈黙もつらいので、必死で話題を探した結果、あえて下ネタ」

また、「お互いに"トイレ"という共通点がある安心感からか、普通の場所より、初対面でも話しやすくなる」という意見もあった。

男子トイレの会話の「三種の神器」は、「下ネタ」「健康」「女ばなし」。
どれもこれも未知の世界の会話でした。
(田幸和歌子)
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