季節、老若男女問わずの裸足愛好家の国
(上) 裸足のニュージーランダー。バーのカウンターにて(下) 「店内では靴を履いてください」。レストランにて
外を歩いていると、靴の音にまぎれ、ヒタヒタ……、ペタペタ……という音が聞こえる。「なんの音だ?」と道行く人を見ると、それは、裸足で闊歩するニュージーランダーの足音。
ニュージーランドには、老若男女問わず、裸足で歩く人が多い。カフェでも、スーパーでも、デパートでも、公衆トイレでも、どこでも。ビーチや公園ならまだしも、おしゃれなショップが立ち並ぶ市の中心部でも裸足。銀座や青山で裸足なのと同じですから、最初のうちは「は、は、はだし!?」とギョッとしたものだ。旅先で大型バスを運転する運ちゃんが裸足だったときも、「大丈夫か?」とバスに乗っている間中、気が気でなかった。

裸足愛好家のニュージーランダーに、なぜ裸足で歩くのかと訊いてみた。
「健康にいい」「暑いのに、靴なんか履いてらんない。ビーチサンダルでさえ暑い」「靴を履いたり、脱いだりするのが面倒くさい」「自然が一番」「店内の冷たい床が気持ちいい」など。言われてみれば、その気持ち、わからないでもないが……。「足の裏をケガしたりしないの?」という問いには、裸足愛好家が無言で足の裏を見せてくれた、洗っても落ちないのではないかと思うほど黒く汚れ、そして、なんともぶ厚い足の皮! 「この皮だからね。ノー・プロブレム」と、愛好家はちょっぴり自慢げに笑った。

「郷に入れば、郷に従え」と、わたしも一度、裸足で町に出たことがある。
たしかに、店内を歩く時は、足の裏がひんやりとして気持ちいいが、外を歩く時は、割れたビンなどが落ちてないか、ケガをするようなものがないか、気になってしょうがない。地面ばかり見て歩いているので、人にぶつかりそうになるし、2時間ほど裸足で歩いて、持参していた靴を履いた。わたしには、裸足は危なっかしい。

今ではもうすっかり見慣れた、ニュージーランダーの裸足。夏だけではなく、真冬でも、コートにマフラーそしてなぜか裸足、ニット帽になぜか裸足と、暑いんだか、寒いんだかわからないニュージーランダーもいる。子供は靴を履いているのに、父親は裸足というパターンなどもあり。
「裸足が好きだから裸足なのさ」。そのマイペースなニュージーランダーの生き様が、最近すごくカッコイイと思うのである。
(畑中美紀)