懐かしの通学用帆布製肩かけかばんが売れているワケ
「白い肩掛けかばん」は健在だった!
私がン十年前に中学生だった頃は、通学かばんといえば、女子は皮の手提げかばんで、男子は帆布製のいわゆるズックと言われる白い肩かけかばんだった。けれども、最近はあまりこの手のかばんは見かけない。
特に白い肩かけかばんは絶滅したのかと思ってしまう程である。そこで、毎年入学シーズンになると気になっていた白い肩かけかばんについて調べてみた。

ありました、ありました。
千葉県館山市にある「かばんのサンペイ」のHP上で「中・高生用通学かばん」コーナーとしてちゃんと商品が掲載されていた。

「8年ほど前にネットで通販を始めた時にまだ在庫があったので載せてみたんです。これが懐かしいと評判がよくて買われる方が結構いらっしゃったんです。
このかばんを学校単位で使っているところはまだ全国でいくつかはあると思いますけど、うちで買われる方はほとんど個人ですね。レトロ感覚で買われる方が多いですが、20代とか若い方で普通にメンズバッグとして買われる方もいますね」
と社長の三幣和義さんは言う。

若い人の中には、中学生の通学かばんとして使われていたことを知らずに買っている人もいるかもしれませんね。実際ジーンズにも合いますし。60年代にはヒッピーへのお土産に良いとアメリカ向けの日本土産として人気だったこともあるんですよ」

これは初耳。あの中学生の白い肩かけかばんがヒッピーに人気だったとは知らなかった。


「お土産と言えば、1年半ほど前、香港のバイヤーの方が香港でお土産として売りたいからあるだけ売って欲しいと館山まで訪ねて来て2、30本買って行かれました。東京のかばん屋さんで売っているところを聞いて来たということでした。映画か漫画かで知ったんでしょうか。何でこのかばんなのかよくわかりませんでしたけど」
と三幣さんは笑って言う。

現在「かばんのサンペイ」では、従来タイプの他にタウン用に持ちやすく外寸を3センチほど小さくしたものなど3種類の帆布製肩かけかばんを販売。値段も5,670円〜6,510円とお手ごろ価格だ。
東京の問屋さんを通して特注と言う形でお願いしているそうで、年間30〜50個ほど売れているという。

それにしても、この帆布製のかばんはいつの頃から使われ、そして主流から外れてしまったのか。社団法人日本かばん協会にも話を聞いてみた。
「ランドセルに関しては資料が残っていますが、あの帆布製のかばんについては資料がないんです。おそらく昭和30年代後半、いや40年代くらいからあまり使われていないのではないでしょうか」
と協会の内田さん。

ちなみに、東京23区出身で46歳の内田さんにご自身のお話をうかがったところ、当時すでにクラスでは2、3人くらいしか肩かけかばんは使っていなかったという。
私は多摩地区出身で内田さんより年齢は下だが、ほぼ100%男子は白い肩かけかばんだった。館山の三幣さんのところでも15年ほど前まではぼつぼつと売れていたとおっしゃっていた。こういったものにはやはり地域差があるということだろうか。

さらにしつこく、どこかで白い肩かけかばんを使っていないか調べてみると、なんと足立区の中学校で使っているところがあった。
「男子生徒は、昔ながらの帽子の着用とズックの肩かけカバンを貫き通しているなど、古くても良いものは守り続けています」と学校のHPに書かれている。いずれにしてもあの白い肩かけかばんは健在だった。
実際に使っている中学校があり、今でも買うことができるというのは何とも嬉しい次第です。(こや)