姫路駅の「黄色の名物麺」
ホーム中央。立ち食いスタンドの風景と、やわらか麺のえきそば。天ぷらが大きいのも魅力的。
“早くて安くて旨い”のは、牛丼だけの専売特許ではない。駅構内でパッと食べられる「駅そば」だって、立派なファーストフードの一つだ。

全国には様々な駅そばがあるけれど、姫路駅の駅そばがちょっと変わっていると聞いて味わいに行ってみた。

姫路の駅そばは、「えきそば」と表記する。
中華麺のような黄色いそばに、やや濃いめの和風出汁を合わせているのが一番の特徴だ。
そんな「えきそば」、最初は普通のうどん麺であった。ところが、うどん麺は傷みやすい。そこでかん水を加えてみたところ傷みが少なくなり、その代わり麺が黄色くなったのだとか。

様々な試行錯誤の結果、昭和24年10月19日から販売開始されたのがこの商品。
終戦後すぐから販売を開始したという、どっしり老舗感漂う一品なのだ。

味はと言えば、良い意味でゆるい。びっくりするほど美味しいという味ではないが、しみじみと美味しい。
麺はふにゃっとしていてコシが無く、少しはしっかりしろと言いたくなるほどヤワヤワだ。しかしその分、特製和風出汁を吸って食べやすい。

上に乗った天ぷらもオキアミだけを使ったもので、粉っぽい。そしてカリっではなく限りなくベタベタ。天ぷらサクサク派の人が見たら、卒倒しそうなほどに緩みきった天ぷらなのだ。
しかしその柔らかい粉と油っこさが出汁に溶け込んで、ポカポカ温まる気がする。

メニューには「天ぷら」だけでなく「きつね」もあるが、人気は断トツ「天ぷら」なのだとか。
そしてえきそばの容器は陶器ではなく、ぶにゃっとしたプラスチック製。

これが重くなくて持ちやすく片手で掴んでたべられる。「駅構内で味わう」のにピッタリな器なのだ。
かつては瀬戸物の容器で販売していたそうだが、昭和40年頃に今の形となったらしいが、混み合うホームでの瀬戸物は危険だったのかもしれない。

えきそば販売元である「まねき食品株式会社」さんに伺ったところ、かつては6千杯の売り上げがあった事もあるという。
さらに一度、関東方面に売り出したが人気が出なかった……との事だが、今では関東から味わいに訪れる人もいるくらい、ひそかな人気の味である。
えきそばを味わえるのはJR姫路駅の構内各所&新幹線改札口。

ちなみに姫路市内ではスーパーでも販売されているそうなので、興味のある人はどうぞ。
(のなかなおみ)