カタクリ粉の現状に迫る
咲き始めのカタクリ。この後、花びらがイナバウアーのように後方に丸まっていく
カタクリ粉。指で押すとキュッとした感覚のする白くサラサラとした粉、トロトロあんかけ大好き人間には欠かせない食材。
家庭用だけで年間2万トンも消費されているという。ご存知の方も多いと思うが、現在売られているカタクリ粉の原料は、野に咲く「カタクリ」ではなく栽培した「ジャガイモ」である。

カタクリは高さ20cmほどの小さな植物。きれいな花が咲くけれど、小さいだけに鱗茎(りんけい:球根みたいなもの)からカタクリ粉を作っても、ほんの少ししかできない。カタクリ群生地のある栃木県佐野市でカタクリ粉等を生産する、(株)波里の黒田さんから頂いた資料によると、明治の頃まではその名のとおり、カタクリ粉は本物のカタクリから作られていた。その後北海道開拓でジャガイモ栽培が盛んになるにつれ、大量に採れ値段が安く、性質もよく似たジャガイモ製カタクリ粉が主流となって、大正中期にはほぼ100%がジャガイモ製に。しかし名前の方は「カタクリ粉」のままで、現在に至っている。波里さんのカタクリ粉もジャガイモ製だ。

ジャガイモ製なのにカタクリ粉と呼んでもいいのか。「全国片栗粉組合連合会」会員、三幸食品(株)の斉藤さんに聞いてみた。
「はい。農水省にも認められた商標です。
似たようなものに、くずもちがあります。本来のくずもちは本くずから作るものですが、関東のくずもちは小麦のデンプンを寝かせたものが原料ですよね。ワラビ餅もそうです。本来は山菜のワラビの根から作るのですが、甘藷(サツマイモ)のデンプン製が多く、最近ではタピオカベースのものまであります」
とのことで、カタクリから作っていなくても、カタクリ粉と言ってよいのだそうだ。

では現在、「元祖」であるカタクリ製カタクリ粉は手に入るのか。再び斉藤さんに聞いた。
「商業ベースでは全く生産されていません。微量しか採れない上に、カタクリは貴重な植物で、群生地は保護の対象になっていますから」
入手は不可能と言えそう。こうなったら自分で育てて……なんて考えてもみたけれど、カタクリは種から花が咲くまでに4〜8年かかる。花もかわいい。手塩にかけて育てたものを引っこ抜いて粉にするなんて、とてもできそうにないです。

斉藤さんによると、最近、輸入物の薬品処理したデンプンの入ったカタクリ粉が一部に出回り、粘性が少ないこれらが消費者に混乱を与えているという。
組合ではちゃんとした製品にシンボルマークを付けることを検討中。カタクリ粉は北海道産の自然デンプンが一番のようです。
(R&S)
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