日本で一番短いお祭り
礼。ただそれだけに集約されるお祭り。ギネスに「世界一短時間の祭り」として申請したものの、残念ながら掲載されなかったそうです。(写真はイメージです)
日本で一番長いお祭りは、7月に行われる京都の祇園祭だが、逆に「日本で一番短いお祭り」というものも勿論存在する。

それは長野県の塩尻市と岡谷市の境目にある塩尻峠で行われる「塩嶺御野立記念祭」。

祇園祭は1ヶ月ほど続くお祭りだが、それに反して塩嶺御野立記念祭の時間はたったの数秒。そんな短時間で何ができるんだと思われるが、その前にお祭りの内容を紹介しよう。

「塩嶺御野立記念祭」とは、そもそも天皇が塩尻峠へ訪れたことを記念するお祭り。
明治天皇が6月に訪れ、昭和天皇が10月に訪れた……ということで、年に2回その日にお祭りは行われる。

さて、お祭りの内容だがそれはただ一つ。「礼」だ。
時間になると、参加者が記念碑に向かって礼をする。その間10秒足らず。シン、と静まりかえったと思うと同時にお祭りは終了する。
祇園祭は山鉾巡行の順番を決めるくじ取り式を行ったり神輿洗いを行ったり、とにかく過密スケジュールだ。さらにメインの山鉾巡行に至るまで宵々山→宵山……と忙しい。
それに反して塩嶺御野立記念祭は、1「集合」、2「礼」、3「解散」と非常に分かりやすいスケジュールである。


ちなみに、6月の塩嶺御野立記念祭は23日に行われる。スタート時間は天皇の訪問時刻である午前10時。
当然お祭り自体は10時ちょっとで終わってしまうわけだが、ここから先は岡谷市、塩尻市の懇談会が始まる。
お祭りのメインは実はこっちなんですよ、と市役所の方がこっそり教えてくれた。
なかなか市と市との交流ができない昨今、お祭りの懇談会はいい交流の場となるらしい。

縁日も出ていないし神輿も出ない。お祭りか? といわれれば疑問が残るが、お祭りというのは心が大事なのだ。
頭を下げる。ただそれだけだが、心がこもっていればそれはお祭りといえるのかもしれない。
礼が終わったあと、お祭り参加者たちは「今日も良いお祭りでしたね〜」と話し合うのだろうか。

なお、残念なことに、このお祭りの参加資格を持つのは市の行政・財界関連・議会関連の人間のみ。一般の人は参加できない。

ただし遠巻きに見る分には大丈夫とのことなので、日本一の短さを体感したい方はぜひどうぞ。
(のなかなおみ)
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