カードゲームやアニメ再放送、ビデオなどを通じて、今の子どもたちにも大人気の『ドラゴンボール』。
ちょっと気になっているのは、あの2人――ともに戦闘民族としては超優秀だが、「父親」としてはどうかと思う、悟空とベジータだ。
頭の中は戦いのことばっかりで、そんな父親に対する苛立ちは、ジャンプコミックス版28巻の悟空の嫁・チチのこんなセリフからも伺える。
「だいたい悟空さ 働きもしねえで 悟飯ちゃんのめんどうなんてみれっこねえべ! 結婚してから一銭だってかせいだことあったか!?」
とはいえ、悟飯が天下一武道会に参加したいと話したときなどは、日ごろ戦いに反対しているにもかかわらず、優勝賞金を聞いて、手のひらを返したように「出場しろ」とけしかけている。
このとき、「いや〜天の恵みだべ お父の財産も残り少なくなってどうしようとおもってたところだよ〜」と喜んでいるが、この「お父」とは、もちろん悟空ではなく、チチの父親・牛魔王のこと。つまり、ずっと自分の父親の財産で暮しているわけだ。ああ……。
ベジータはベジータで、平和な世の中になっても「鍛錬、訓練」ばかりを口にしているし……。ブルマのもとをたずねた悟飯に、「あんたのおとうさんといっしょ! サイヤ人って働かないのかしら」とも言われてるし。
そこで、身のまわりの幼児たちに「どっちの父親がいいか」と聞いてみると、みんな即答で「悟空!!」と言う。
理由は単純に「カッコいいから」「強いから」。逆に、ベジータのどこが悪いのか聞くと「ズルいから」はともかく、「怒るから」「怖いから」「おでこがハゲてるから」って、そんな理由で決めていいのか、幼児!?
余談だが、幼児に不人気なのはクリリン。この理由も「ハゲだから」って……ほっといてやれよ。第一、クリリンは体格・素養にはさほど恵まれていないにもかかわらず、努力と頭脳で頑張ってきた、凡人の「星」なのに。
加えて、ママたちは「悟空もベジータも、どっちもイヤ」と、これまた身もフタもない。
「ただ、悟空が奥さんに頭上がらないのは、笑えるよね」と、若干、こっちも悟空寄りのようだ。
で、個人的見解から言うと、父親として、より悪いほうはやっぱり悟空だと思う。
ベジータは奥さんが大金持ちで、「労働」をしなくても食っていけるから、働いていなくても困らないということが、ひとつ(そういう問題じゃないかもしれないが)。
でも、何より大事なポイントは、ベジータはとりあえず家族と一緒に暮しているのに比べ、悟空は小さな子どもを残して死んでしまったり、生き返っても修行ばかりしていて家に寄り付かなかったり。挙句、よその子(ブウの生まれ変わり・ウーブ)に夢中になって、その子と飛び出して行ってしまうという勝手っぷりである。
さらに、ベジータはセルにトランクスがやられたとき、力の差が圧倒的なのにもかかわらず、なりふり構わずキレて立ち向かう親心もちゃんと持ちあわせている場面もあった。
父親としていちばん良いのは、どう考えても、他人の子(悟飯)を言葉とは裏腹に命がけで鍛えたり愛したりしたピッコロだ。悟飯がセルに殺されそうになるときに、悟空に対して「悟飯がなにを思っているかわかるか!?(中略)なぜおとうさんはボクがこんなに苦しんで死にそうなのに助けてくれないんだろう」と言い、「やられてもいい! オレはいくぞ」と、これまたベジータと同じく、力は及ばないのにセルに立ち向かおうとしている。完全に「父親目線」で、悟空よりよっぽど悟飯のお父さんぽい。
そんなピッコロさんですら、これも子どもに言わせると「緑色の顔がイヤ」なんだそうな。
子どもたちよ、本当にそんな選択でいいのかい?
(田幸和歌子)
ちょっと気になっているのは、あの2人――ともに戦闘民族としては超優秀だが、「父親」としてはどうかと思う、悟空とベジータだ。
頭の中は戦いのことばっかりで、そんな父親に対する苛立ちは、ジャンプコミックス版28巻の悟空の嫁・チチのこんなセリフからも伺える。
「だいたい悟空さ 働きもしねえで 悟飯ちゃんのめんどうなんてみれっこねえべ! 結婚してから一銭だってかせいだことあったか!?」
とはいえ、悟飯が天下一武道会に参加したいと話したときなどは、日ごろ戦いに反対しているにもかかわらず、優勝賞金を聞いて、手のひらを返したように「出場しろ」とけしかけている。
このとき、「いや〜天の恵みだべ お父の財産も残り少なくなってどうしようとおもってたところだよ〜」と喜んでいるが、この「お父」とは、もちろん悟空ではなく、チチの父親・牛魔王のこと。つまり、ずっと自分の父親の財産で暮しているわけだ。ああ……。
ベジータはベジータで、平和な世の中になっても「鍛錬、訓練」ばかりを口にしているし……。ブルマのもとをたずねた悟飯に、「あんたのおとうさんといっしょ! サイヤ人って働かないのかしら」とも言われてるし。
そこで、身のまわりの幼児たちに「どっちの父親がいいか」と聞いてみると、みんな即答で「悟空!!」と言う。
理由は単純に「カッコいいから」「強いから」。逆に、ベジータのどこが悪いのか聞くと「ズルいから」はともかく、「怒るから」「怖いから」「おでこがハゲてるから」って、そんな理由で決めていいのか、幼児!?
余談だが、幼児に不人気なのはクリリン。この理由も「ハゲだから」って……ほっといてやれよ。第一、クリリンは体格・素養にはさほど恵まれていないにもかかわらず、努力と頭脳で頑張ってきた、凡人の「星」なのに。
天津飯や亀仙人もハゲてるぞ。
加えて、ママたちは「悟空もベジータも、どっちもイヤ」と、これまた身もフタもない。
「ただ、悟空が奥さんに頭上がらないのは、笑えるよね」と、若干、こっちも悟空寄りのようだ。
で、個人的見解から言うと、父親として、より悪いほうはやっぱり悟空だと思う。
ベジータは奥さんが大金持ちで、「労働」をしなくても食っていけるから、働いていなくても困らないということが、ひとつ(そういう問題じゃないかもしれないが)。
でも、何より大事なポイントは、ベジータはとりあえず家族と一緒に暮しているのに比べ、悟空は小さな子どもを残して死んでしまったり、生き返っても修行ばかりしていて家に寄り付かなかったり。挙句、よその子(ブウの生まれ変わり・ウーブ)に夢中になって、その子と飛び出して行ってしまうという勝手っぷりである。
さらに、ベジータはセルにトランクスがやられたとき、力の差が圧倒的なのにもかかわらず、なりふり構わずキレて立ち向かう親心もちゃんと持ちあわせている場面もあった。
父親としていちばん良いのは、どう考えても、他人の子(悟飯)を言葉とは裏腹に命がけで鍛えたり愛したりしたピッコロだ。悟飯がセルに殺されそうになるときに、悟空に対して「悟飯がなにを思っているかわかるか!?(中略)なぜおとうさんはボクがこんなに苦しんで死にそうなのに助けてくれないんだろう」と言い、「やられてもいい! オレはいくぞ」と、これまたベジータと同じく、力は及ばないのにセルに立ち向かおうとしている。完全に「父親目線」で、悟空よりよっぽど悟飯のお父さんぽい。
そんなピッコロさんですら、これも子どもに言わせると「緑色の顔がイヤ」なんだそうな。
子どもたちよ、本当にそんな選択でいいのかい?
(田幸和歌子)
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