「漢字“変漢ミス”コンテスト」主催側の真意とは?
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昨年末、気になったニュースに「漢字“変漢ミス”コンテスト」なるものがある。ウェブ上やメールなどでのおかしな変換ミスを競うというコンテスト。
ご存知の方も多いかもしれない。知らない方のために、昨年の受賞作品の一部をご紹介。

【正】「ラフにハマってしまって」
【誤】「裸婦にハマってしまって」
(ゴルフに行った時のスコアを友人に報告しようとしたときのこと。大爆笑された)

【正】「もうそうするしか方法がなかった」
【誤】「妄想するしか方法がなかった」
(手立てがなかったのだが、妄想することはなかった)

などなど、正しい表記と間違い表記にプラス、エピソードも記されており、誤変換に一層の味わいが添えられている。日常で誰しも使ったことがあるような文章が、コンピュータが気を利かせたはずの変換により、奇妙極まりない様相を呈す。それこそ妄想が膨らみそうな……。
そして稀に誤変換が入力者の真意を伝えている場合も。

【正】「それは会社の方針とのこと、正しいようです」
【誤】「それは会社の方針とのこと、但し異様です」
(先方との会議記録。内容に一部納得がいかない部分があったが、役員に確認し、問題ないことをメールしたところ、私の気分にあった誤変換になってしまいました)

こんなユニークなコンテスト、一体どこが主催しているのかと調べてみると、なんと日本漢字能力検定協会! 正しい漢字を伝えることを旨とする協会が、なぜ間違いを楽しむ催しを? 同協会広報センターの馬場大輔さんにその真意を伺った。
「当然ミスのおもしろさが評価の基準にはなります。でも決して、変換の間違いを笑うことがコンテストの最終目的ではないんです。ネットやメールで文章を書くことが多くなると、どうしても漢字を忘れてしまいがちですよね。
そうすると、パソコンで漢字が変換されても、どの字にしていいのかわからなくなってしまうこともある。そこで、正しい漢字を使うことの重要性を訴えたいという思いから始まったコンテストなんです。幸い、前回(2004年末から05年にかけて実施)が予想以上に好評だったことから、今年またやろうということになりました」
今期は、月ごとに第1回から第11回まで実施し、応募総数は、2079点。その中から、協会の一次選考を通過したエントリー作品をホームページ上で公開し、それを一般のオンライン投票で、月間賞(「月間変漢賞」と次点の「月間e-漢字賞」)22作品を決める。さらにその中から年間を通じた最優秀作品「年間変漢賞」1作品が、一般のオンライン投票で決定する。
ちなみに今回の「年間変漢賞」は以下。


【正】「遅れてすいません。回答案です」
【誤】「遅れてすいません。怪盗アンデス」
(焦って会社の会議資料をメールした際のミス。「怪盗が遅刻しちゃだめだろう」「腰の低い怪盗だ」などとみんなに大笑いされた)

それにしても、そんな教育的意図があったとは。ただ、コンピュータの変換でどの字にしていいか迷う時は確かにあるが、“ラフ”と“裸婦”はまず迷わないだろう……。とはいえ昔から、音が同じことばや似ていることばを入れ替えて、トンでもない意味に転化させる「ことばあそび」が大好きだった日本人。
ネット文化隆盛の現代でも、脈々とその粋なダジャレ精神は息づいているのだ! 来期の開催は未定とのことだが、こんなユニークなコンテスト、是非とも開催継続を希望!
(駒井麻衣子)