フランダースの犬は地元では不人気?
ノートルダム大聖堂。ファンの方はぜひ!
日本では絶大な人気を誇る世界名作劇場のテレビアニメ、フランダースの犬。ご存知のとおり、ベルギーのフランダース地方の小さな村で画家になることを夢見る少年ネロと愛犬パトラッシュの物語である。

その最終回のラストシーンで、ノートルダム大聖堂の中に飾られた画家ルーベンスの絵の前でネロとパトラッシュが天に召されるシーンはあまりにも有名であり、「アニメ名場面特集」などのテレビの特番では必ずと言っていいほど取り上げられ、それを見るたびに涙する人も少なくないのでは。

さてこのフランダースの犬という物語、意外にも地元ベルギーではあまり有名ではないとのこと。
先日ベルギーを訪れる機会があったので、その際にベルギー在住の観光ガイドさんに話を聞いてみた。実はこの物語を書いたのはベルギー人ではなくイギリス人であり、地元ベルギーでも原作は出版されてはいたようであるが、知名度が低くあまり評判にはならなかったとのこと。
またこの物語のラストでは、住むところも食べるものもなくなってしまった少年ネロとパトラッシュが最後は空腹のため天に召されるというストーリーとなっており、そのストーリーに対して地元ベルギーの方たちは ”子供一人を空腹で亡くすような残酷なことを私たちは決してしない” といった批判的な意見さえあるようだ。

原作者の母国イギリスにおいてもほとんど知られていない物語のようであるが、日本では作家の菊池寛が原作の翻訳を行い、それが世界名作劇場にてテレビアニメ化したことで一気に知名度が高くなった。
こんなにこの物語が有名になっているのは実は日本だけのようである。

日本でテレビアニメが放映された後、物語の舞台となったベルギーのアントワープを観光で訪れる人が急激に増えたらしく、アントワープの郊外にあるホーボーケンにはネロとパトラッシュの銅像が建てられている。
またラストのシーンでネロが訪れた同じくアントワープにあるノートルダム大聖堂前の広場には、ネロとパトラッシュの顔が彫られ、日本語で書かれた記念碑もおかれているが、広場にいる地元の方たちがその記念碑に普通に座っていたりして、日本人観光客は記念碑がどこにあるのかなかなか見つけられないこともあるとのこと。確かに一見しただけではどれが記念碑なのかわからない。この前で記念撮影をするのはおそらく日本人だけだろう。

さて、ノートルダム大聖堂の中には、ネロが夢見た画家ルーベンスの傑作「キリストの降架」、「キリストの昇架」が今でも飾られており、大聖堂への入場料さえ支払えば誰でもこの絵を見ることができる。
大聖堂の前方の左右に飾られているこの絵は、実際に見てみると3つのパネルからなる連画で想像以上に大きく(4.6×5.8m)、非常に躍動感溢れる迫力のある美しい絵であった。フランダースの犬の最終回で涙した方には、この大聖堂を訪れてみることをおすすめする。 ただし、大はしゃぎしているとすぐに日本人とばれてしまうことは、知っておいたほうがいいかもですね。
(リップカレント)