
“メロン”はブッシュマンの主食植物だった!? 『週刊朝日百科 世界の食べもの』より
先月、滋賀県守山市の下之郷(しものごう)遺跡で、「現存する世界最古のメロンとみられる」弥生時代(約2100年前)のメロンの一種が出土したというニュースがあった。「現存する」という表現があるように、種だけでなく水分を含んだ果肉までついたものが湿気の多い日本でずっとそのままの形で残っていたとは驚き。
新聞などの報道によると、「水分を多く含んだ土が空気を遮断して、真空パックのようになり、果肉が残ったとみられる」とのことで、これまた自然の力にびっくりである。
メロンというと、マスクメロンなどの網目のあるネットメロンを思い浮かべるので、明治以降に輸入されたものと思いがちだけれども、実は『日本書紀』にもその名が登場するほど古くから日本では食べられていた。もちろん、当時のメロンは現在のように甘みのあるネットメロンではなくキュウリに近いマクワウリと呼ばれるもの。でもメロンの仲間であることには変わりない。
ところで、このメロン、起源はどこにあるのだろう。
静岡県農業試験場に問い合わせると、「メロン、スイカはアフリカ地域に古くからみられるとありますが、原産地については諸説あるようで、どこ、という特定はされていないようです。日本でのメロンの歴史は、アールスメロンなどいわゆるハウスメロンについては、1920年から1930年にイギリスから導入されたということでかなり詳しくはわかるのですが、それ以前のものについては明確にはわかっていないのです」とのお答え。
ふーむ。では諸説、一般論はどうなっているのだろう。
『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』という食品科学の専門書には、「メロンは西アフリカに起源し、中国あるいはドイツが第二次拡散中心である」と書かれている。さらに「アフリカ、アラビア、南西アジア、オーストラリアの砂漠およびサバンナにおいて、野生メロンの自生が報告されている」とある。
水気のない砂漠やサバンナでメロンが自生とは!
そこで1981年発行とちょっと古い資料になるが、朝日新聞社の『週刊朝日百科 世界の食べもの』も見てみることに。
メロンは水供給減として生のまま食べ、果肉の部分は鍋で煮てどろどろになった汁を粥のようにすするとあり、ブッシュマンの最も重要な主食植物とある。
もちろん、ここでいうメロンは現代の日本人が食べているような甘く香りの強いものとは違うようであるが、その見た目はメロンというよりスイカに近いが、確かになじみのある姿。
そして「スイカの原種であるツァマ・メロン」という一文が目に入った。
えっ! メロンとスイカは親子のような関係?
似てはいるが、メロンとスイカの関係を今まで考えたことがなかっただけに妙に気になる。
静岡県農業試験場にメロンとスイカについて問い合わせてみると、「今詳しいものがいないので、こちらにある資料で見てみましたがそういった記述は見受けられませんでした」とのこと。
スイカはスイカ、メロンはメロンと別の植物として扱っているのでそれ以前にまでさかのぼってのことはわからないということだった。確かにメロンもスイカも同じウリ科の植物なのでルーツは同じ。親子でなくとも親戚であることには変わりないのかも。
メロンとスイカの関係については前述した『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』にも書かれていなかったので、定説のようなものはまだないのかもしれない。
メロンとスイカの栽培にしてもこの本によると、メロンの栽培は中国では5000年以上、イランでは5000年、ギリシャやエジプトでも4000年前に行われていたと書かれている。またスイカは作物として6000年前に北アフリカ、南西アフリカで現れたとある。いずれにしてもメロンもスイカも古くから人類にとって重要な食物だったことには変わりない。
高級なくだものというイメージの強いメロンだけれど、弥生時代の日本でアフリカの大地で多くの人たちに食べられてきたことを考えるととても不思議。今までよりメロンが身近に感じられるような気がします。
(こや)
*ヨーロッパ人により命名されたブッシュマン(藪の民)という呼び方は、侮蔑を含む呼称であるため現在はサン人と呼んでいる。ただし、研究者の中には「カラハリの叢林に住む自由人」という意味を込めてブッシュマンと呼ぶ人もいる。ここでは参考資料の表記で記載
*ケンブリッジ世界の食物史大百科事典 全5巻」は発売中。今回参考にしたのは第2巻「主要食物:栽培植物と飼養動物」
新聞などの報道によると、「水分を多く含んだ土が空気を遮断して、真空パックのようになり、果肉が残ったとみられる」とのことで、これまた自然の力にびっくりである。
メロンというと、マスクメロンなどの網目のあるネットメロンを思い浮かべるので、明治以降に輸入されたものと思いがちだけれども、実は『日本書紀』にもその名が登場するほど古くから日本では食べられていた。もちろん、当時のメロンは現在のように甘みのあるネットメロンではなくキュウリに近いマクワウリと呼ばれるもの。でもメロンの仲間であることには変わりない。
ところで、このメロン、起源はどこにあるのだろう。
静岡県農業試験場に問い合わせると、「メロン、スイカはアフリカ地域に古くからみられるとありますが、原産地については諸説あるようで、どこ、という特定はされていないようです。日本でのメロンの歴史は、アールスメロンなどいわゆるハウスメロンについては、1920年から1930年にイギリスから導入されたということでかなり詳しくはわかるのですが、それ以前のものについては明確にはわかっていないのです」とのお答え。
ふーむ。では諸説、一般論はどうなっているのだろう。
『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』という食品科学の専門書には、「メロンは西アフリカに起源し、中国あるいはドイツが第二次拡散中心である」と書かれている。さらに「アフリカ、アラビア、南西アジア、オーストラリアの砂漠およびサバンナにおいて、野生メロンの自生が報告されている」とある。
水気のない砂漠やサバンナでメロンが自生とは!
そこで1981年発行とちょっと古い資料になるが、朝日新聞社の『週刊朝日百科 世界の食べもの』も見てみることに。
この本は出版年も古く絶版になっているけれど、写真も多く、学者の方々が現地に行かれて書いているのでいろいろと勉強になることが多い。この本は国別、地域別、テーマ別になっていてアフリカは45号から47号となっている。その47号「アフリカ3」というのを見てみると、そこにはメロンを貴重な食材として利用しているブッシュマンが紹介されていた。
メロンは水供給減として生のまま食べ、果肉の部分は鍋で煮てどろどろになった汁を粥のようにすするとあり、ブッシュマンの最も重要な主食植物とある。
もちろん、ここでいうメロンは現代の日本人が食べているような甘く香りの強いものとは違うようであるが、その見た目はメロンというよりスイカに近いが、確かになじみのある姿。
そして「スイカの原種であるツァマ・メロン」という一文が目に入った。
えっ! メロンとスイカは親子のような関係?
似てはいるが、メロンとスイカの関係を今まで考えたことがなかっただけに妙に気になる。
静岡県農業試験場にメロンとスイカについて問い合わせてみると、「今詳しいものがいないので、こちらにある資料で見てみましたがそういった記述は見受けられませんでした」とのこと。
スイカはスイカ、メロンはメロンと別の植物として扱っているのでそれ以前にまでさかのぼってのことはわからないということだった。確かにメロンもスイカも同じウリ科の植物なのでルーツは同じ。親子でなくとも親戚であることには変わりないのかも。
メロンとスイカの関係については前述した『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』にも書かれていなかったので、定説のようなものはまだないのかもしれない。
メロンとスイカの栽培にしてもこの本によると、メロンの栽培は中国では5000年以上、イランでは5000年、ギリシャやエジプトでも4000年前に行われていたと書かれている。またスイカは作物として6000年前に北アフリカ、南西アフリカで現れたとある。いずれにしてもメロンもスイカも古くから人類にとって重要な食物だったことには変わりない。
高級なくだものというイメージの強いメロンだけれど、弥生時代の日本でアフリカの大地で多くの人たちに食べられてきたことを考えるととても不思議。今までよりメロンが身近に感じられるような気がします。
(こや)
*ヨーロッパ人により命名されたブッシュマン(藪の民)という呼び方は、侮蔑を含む呼称であるため現在はサン人と呼んでいる。ただし、研究者の中には「カラハリの叢林に住む自由人」という意味を込めてブッシュマンと呼ぶ人もいる。ここでは参考資料の表記で記載
*ケンブリッジ世界の食物史大百科事典 全5巻」は発売中。今回参考にしたのは第2巻「主要食物:栽培植物と飼養動物」
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